TURURURURURUR…


TURURURURU…



週末、友人Tから電話がかかってきた。


そのTは申し訳なさそうに、「○○という場所まできてくれ」と頼んできた。


事情はこうだ。




昨晩、新年会だったらしく、酒を飲んでいた。


ほどよく飲んだはずのTだが、その晩は場が散会になっても膿のようにたまった日常の鬱屈をはききれず、ひとり夜の街を徘徊した。



Tは夜のネオン街をさまよっているうちに、いきつけの店で見ず知らずのオッサンと出会い、意気投合していっしょに飲み歩く事になった。


そのオッサンと2,3軒ハシゴして、そこから記憶喪失。


そして、何者かにボコボコにされ、身ぐるみはがされ、ゴミ捨て場に捨てられてる。


夜明けにゴミを回収した業者の人に、遺体が捨てられていると思われ、ポリに通報される。


意識が戻ったのは、ポリステーションに連行中の車中。


そして、身分証明するものがなく、顔の掘りが深かったので(後日判明するが、鼻骨骨折の為、より顔の掘りが深くみえた)、不法滞在の外国人とまちがわれ留置所にブチ込まれる。


留置所でだされたカツドンを食べている姿、箸の使い方から、やっと日本人と理解してもらえる。


そして、身元引受人としてわたしが選ばれ、Tから電話がかかってきた。




ストレス発散の仕方は十人十色。

そうやって、人はみな生きつなげている。

たまたまTは失態を演じてしまったが、誰がカレを責める事ができるだろうか?

明日は我が身と、身を引き締めるのみ…
























 わたしの住んでいる街も雪が舞い始め、景色も単調なモノトーンになり、一味の紅さを際立たせる。



紅…


彼はここ数カ月店にはあらわれない。


だぶん、一味中毒で身体を壊し入院でもしたのだろう。


わたしの研究は何も積み重ねる事もなく、風化していくのだろう。



わたしはミイラとりがミイラになったようだ。


先日、カレーに一味を多量にかけた事が始まりだった。

否、紅と出会ってしまった事が始まりだったのかもしれない…


わたしの家庭で出るカレーの甘さにたえきれず、紅の一味狂いを思い出し、カレーに一味をかければ辛くなるんじゃないか?と一味をふりかけた。


多量に一味をかけたカレーはわたしの味覚にフィットした。


次はラーメン、次はキムチ、次はキャベツ。


どんどんエスカレートしていった。


末期になればアイスクリームにも一味をかけたい衝動がでてくる。


そして、わたしは立派なジャンキーになったようだ。





某日。いつもの定食屋。


わたしはカツドンを注文した。


いつものようにカツドンに一味をかける。


ふとまわりを見渡した。


隣の席の人はサバに一味。


窓際の席の人はおでんに一味。


さらに違う席でもうどんに一味(これは常識か)。


気がつけば、常連は皆、一味中毒になっている。


紅の影響はまわりの人を感染させたようだ。


貞子の呪いばりの威力があるみたいだ。





















 紅…


性別男性。身長177㎝。体重76㎏。中肉中背。年齢は30代半ば。


お腹のたるみ以外に脂肪がついてる場所は見当たらない。

顔は青白い。といっても色白とは判断できず、ここ数年日焼けしてないような白さである。

職種は軽作業を伴う部品工場のラインと推測する。


くせ毛で大鶴ギタン風な髪質は神経質な感じを醸し出しているが、容姿は掘りが浅く、たれ目なので優しいイメージも見受けられる。


一味をぶちかける時だけ、狂気じみた神経質さがあらわれる。

一味をぶちかける姿は、嫉妬にかられた女がワラ人形に五寸釘を打ちつける姿そっくりだ。

それ以外の行動には狂気は感じられず、いたって温厚そうでもある。




本日、紅はオデンに一味をかけている。


喫茶店でモーニングについてる卵を塩を振りかけて食べる。

そんな風に卵にも一味をかけている。