第二章。


LANDコーヒー


店内は薄暗く、いかにも大人なJAZZのピアノのBGMが、まばらな客の癒しの一服を演出していた。


「コウスケのヤツ遅いな」


ユウジは吸いかけのタバコを灰皿に置くと飲みかけのコーヒーを口にした。


店内の中央にある数字の付いていないモノクロのシャレた掛け時計が、BGMのピアノに合わせてゆっくりと時を


刻んでいた。


針は夕方6時を指していた、、、



目の前には、僕と同世代と思われる男が立っていた。


背は僕より高い!


175はあるだろうか?


足もとはレッドウィングのワークブーツを履いていた。


そこから緩やかにリーバイスのGパンが、カーブを描いて痩せた体を隠している。


(リーバイスは後でユウジに教えてもらって、ヤツよりマニアになった)


腰にはシルバーのチェーンが邪魔くさそうにくっ付いている。


TシャツにNIKEのマークが風車のように描かれている。


痩せた顔は、深く被ったニット帽が眉毛を隠していた。


「こんなに雨降ってんのになんで傘ささねえの?」


男は笑いながら言っていた、、。



これがユウジとの最初の出会いだった。


ユウジには同じ年にもかかわらず、僕にない多くのモノをもっていた。


ユウジの着る服、聴く音楽、すべてが新鮮でカッコよかった。


クラブに初めて行ったのもユウジだった。


そこで聴く音楽は、それまで僕が聴いていたビートルズのようなメロディに歌がのっかる聞くためのモノではなく、



踊るために作られた音楽だった。


ユウジはそこでテクノDJをしていた!


機械的な電子音に絡まるように、重く打ち込まれるバスドラムの音で最低限の音数で構成され、繰り返されるい



たってシンプルなこの音楽は普通に聴くとなんでもないが、


クラブで大音量で聴くと、なんともいえない開放感と一緒に僕のからだを揺らし続ける、、、


それに合わせてユウジはクスリもやっていた、、。



クラブミュージックとクスリは恋人のようなものだ。


クスリをキメて聴く大音量の音は、解放感を増幅させる。


その頃、アシッドハウスというジャンルの音楽が流行っていてビキビキと鳴り響く電子音にクスリをキメて、踊りま



くるというなんの生産性もない事を毎日のようにやっていた、、、


ある夏の暑い日に、ユウジと友達数人で海に行ったことがあった。


その時も、夜に外で大音量を流しながらクスリをキメて楽しんでいたのだが、急にユウジが


「サマーラブ」


とかなんとか叫んで、浜辺から海に向かって走っていった、、、


だんだんユウジが小さく見えなくなっていく、、。



はっ、と我にかえった僕は笑ってみている友人を押し退けて海に飛び込んだ。


ザバッ!


前方に見える溺れるユウジを見て友人たちは、また笑っていた。


クスリで幻覚を見て死にそうになった友人を、ラリった友人が笑っている、、、


切なかった、、。


すべてを忘れられたが、同時にすべてを失いそうで怖かった。


それでも僕たちは踊り続けた、、、


その時の楽しさと、後に押し寄せてくる虚しさを同時に受け止めながら、、。



僕はなりやまない雨の中、ユウジにクスリを届けにランドコーヒーに向かっていた。


先に楽園をイメージしたマークのデッカイ看板が見える。


みんな日頃の疲れやストレスを癒しに、この楽園にコーヒーを飲みにやってくる、、。


僕はこの楽園の扉をゆっくりと開けた。



店に入ると奥の方に、白いイヤホンをつけた若者がタバコを吸いながら足でリズムを刻んでいた、、、


ユウジだ!


僕は濡れた髪をかき上げて、奥にいるユウジに手を上げた。


、、、ユウジは気付かない。


明らかに、白いイヤホンをつたって流れる音に集中している、、。


周りの音も聞こえていない。


僕は目の前まで行き、白いコードを耳からひっこ抜いた!



ユウジはビックリして顔を上げた。


僕と確認するまもなく、、、


「おせーよ、何分待たせんだよ」


「水害にあったって言ったろう」


僕の体は確かにズブ濡れだった。


「で、持ってきた?例のやつ」


ユウジは減量に苦しむボクサーのように目をギラつかせて言った。


この前会った時よりもあきらかに痩せている、、。



クスリを売っている僕が言うのもなんだが、ユウジは結構ヤバイ状態までクスリに依存していた、、。


「もうちょっとペース抑えろよ」


「何言ってんだよ、これがないと夜が始まんないのお前も知ってんだろ」


ユウジは何もない僕に比べて才能もあった。


ユウジが主催するパーティーには、彼の作り出すトラックを求めに何百人と人が集まっていた。


ただそれにクスリという魔法の力を一緒に求める若者も多くいた、、。


最近ユウジの周りには、彼の集める人を目当てにヤクザがちょこちょこと、顔を出すようになっていた。



僕はリュックの中から白い紙ブクロを取り出すと、ユウジに手渡した。


「サンキューな!助かるよ、」


「最近さぁ、お前んとこのパーティー、ヤクザがよく出入りしてんだろ?大丈夫かよ?


 あれ、”マサヤ”んとこのヤツだろ?」




マサヤというのは学生の時からずっと一緒で、ユウジと3人で学校を出てからもよく一緒につるんでいた。


昔からケンカっぱやかったマサヤはそのケンカの強さを見込まれ、ヤクザにスカウトされた。


それぐらいの頃からマサヤとは遊ばなくなってしまった、、。


マサヤが僕の記憶から消えた頃、街の噂でマサヤが組の若頭になったと聞いた、、。



「大丈夫だよ、マサヤの事はコウスケが心配する事じゃないって、、、あっ、マサヤで思い出した、


 あのさぁ、ちょっといい儲け話しがあるんだけどさぁ、、。」


こいつの儲け話しはいつも裏がある。


「あっ、俺さぁ、クスリから足を洗おうと思うんだけど、、。」


「何言ってんだよ、じゃぁどうすんだよ残りの借金、、。」



そう、、。


僕には500万の借金がある。


どうしてそんな借金ができるのか?


どうしてだろう、今思うと偶然が重なって起こった、ただのついてない男だとも思うし、


神様が僕にちゃんと生きなさいと、罰を与えられたようにも思う、、。



僕は借金ができてしまったあの日、いつものようにする事もなく、


だらだらと家で過ごしていた、、。


家のテレビをただ、目の視点を合わせずにぼーっと眺めていると、


気が付けばブラウン管には髪をぴっちり分けた中年のおっさんがニュースを読んでいた。



おっさんがなんかしゃべっている、、。


髪の分け目が7,3なのか6,4なのか微妙なラインでイライラする、、、


しゃべってるのをよく聞いてみると、よくある車と人の交通事故のニュースだった。


被害者は重体だという、、、


助かってよかったな、僕は思った、、。


ただ次の瞬間、同時に思ってしまった、、、


この人いくら慰謝料もらうんだろう、、。


この考えがすべてを狂わせた、、、


僕はバカだ、、。



僕は死なない程度に車と事故を起こし、慰謝料をもらうという、今考えるとホントにバカな計画を思いついた。


その時はイケると思ってしまった自分にも、問題はあるのだが、


きっとあまりの金のなさと、それに比例する時間の多さに頭がどうかしてたんだろう。


気が付くと僕は家の近くの交差点を目の前に立っていた、、。



目の前を多くの車が通り過ぎていく、、。


僕は車にぶつかっていく自分を頭の中でシュミレーションしてみた、、、、


死なない程度、、。


っていうか死んでしまう、


車のスピードが速すぎるのだ。


何度シュミレーションしても失敗するはずだ、、。


こんな単純なことに気づかない時点で先が思いやられるのだが、その時の僕はそれくらいの事では諦めなかっ



た。



僕はできるだけ車のスピードがでない場所を考えた、


そして、できるだけ金持ちが乗っていそうな車が集まる場所を、、。


あれこれ悩んだ結果、僕は高級住宅街に立っていた。


ここで一番金持ちがいそうなマンションを探した。


しばらく住宅街を歩いていると、いかにもといったような龍の像が入り口の両脇に立っている高層マンションを発


見!


「ここにするか」


僕はとりあえずマンションの前でタバコに火をつけた、、。



チャンスはこのマンションの地下駐車場から、車が上にあがってきたところを狙う!


これならスピードもさほど、でてはないはずだ。


タバコの芯が半分を過ぎた頃、地下の方から黒い影が見えた!


「来たっ」


タバコを地面に捨て、駐車場の出口の横にしゃがんだ。



急に胸のあたりがドクドクいいだした、


だんだん車が見えてきた、


やけに黒光りしたベンツだ、


もうすぐ出口にさしかかる、


僕は何も考えず車の前に飛び出したっ!!


「ガゴッ」



スピードはあまり出ていなかったのだが、僕の体にはいままで経験したことのない衝撃が身体中をかけめぐっ



た、、。


目の前が真っ白になり自分の体がストップモーションのように、


地面に向かってゆっくり落ちていく、、。


地面に倒れ込んでどれくらい時間が経過しただろう、、、


数秒間ぐらいだろうか、、、


時間の感覚がわからない、、。


だんだん意識がはっきりしてくる、、、


目の前の景色がはっきりしてきた、、。


体が思うように動かない、、、


痛い、、。


意識と一緒に痛みの感覚も戻ってくる、、。


その時、黒いベンツのドアが開いた。



ドアから黒いスーツをきた男が出てきた。


男は、「大丈夫ですか?」的な事を聞いてくるだろう、、、


よし、ここまではシュミレーション通りだ!


謝ってきたところで、大声で叫んでやる!


周りにヤジ馬が集まればこっちのもんだ、、。


あれっ、なんかおかしい、車からまたスーツの男が出てきた、


しかも今度は一人じゃない、、、


マンションの周りを怒鳴り声がこだました、、、


叫んだのは僕じゃなく、気が付けばスーツの男、四人に囲まれていた、、。



気が付けば、僕は知らないビルの一室にいた、、、


スーツの男たち、それは、ヤクザだったらしく、僕はそのままベンツに押し込まれ、


このビルに連れてこられた、


たぶん事務所だろう、、。


床に座らされた僕は、ここで一時間くらい待たされていた、、、


たぶん、誰か来るのを待っているのだろう、、、



僕の横には、見張りにさっきのスーツの男が一人立っていた、、、


むき出しのコンクリートが見えるだけのこの部屋は牢屋のようで、


床に血のような赤いシミがついている、、、


というか、状況からいって本当の血だろう、、。


そういえば、横の男は手に警棒のようなものを持っている、、、


僕の頭には不安だけしか浮かばなかった、、。



その時、スーツの男から、電子音が鳴った、、、


プルルルルルっ


いままで物静かだった男が、急に慌てだした、


ズボンのポケットから携帯をとりだす、


電話に出ると男はテンパったように 「はい」 の連発!


多分、上の位の人だろう、、、


男は、 「わかりました」 と言って電話を切った。


さっきまで、腰の低かった男が、また元の威圧的な態度に戻った、、、


多分、もうすぐここに来るんだろう、、、


その時、部屋のドアが開いた、、。


「ガチャっ」




ドアから出てきたのは、40代後半位のいかにもといった、男だった、、、


同じスーツなのだが、明らかに、見張りの男とはちがう、、。


男は言った。


「慰謝料の事なんだが、、。」


もらえると思った僕がバカだった、、、


「車の修理代、運転手の治療費で500万だ」


頭が真っ白になった、、。



男は続けた、、、


「払えないなら、払えるまで働いてもらう、、、それが無理なら、、。」


男は横にいる警棒を持った見張りに目をやった、、、


見張りはいつでも合図があれば、僕に飛びかかりそうな勢いで僕を睨みつけた、、。


僕に選択する余地はなかった、、、


この日から五百万の借金を返すため、クスリの売人をやっている、、。




































第三章。


ケムリ


ザーーーッ


まだ雨がやむ気配はない。


僕はユウジにクスリを渡した後、ランド・コーヒーを出て、来た道をまた濡れながら帰っているところだった、、、


どうしてこんな事になってしまったのか、


借金がいつ返せるのかもわからず、どうしようもない毎日を送っている、、、、


親友はクスリ漬けになりそうなのに、それを止める事もできずにいる、、。


何か、一発逆転できる方法はないのか、、、


この前、テレビで偉いおっさんが、 未来は自分で切り開くものだ! と、言っていた、、、


僕の未来は真っ二つに切り裂かれ、もう元に戻らないかもしれない、、、。



もうすぐ家に着く頃だ、


体中、濡れまくって履いているアディダスのスニーカーが、グジュグジュになっている、


先に橋が見えてきた、


この橋を渡るとちょっと先にボロいアパートがある、


そこが僕の家だ。


僕はもう急いでも仕方ないのに、きもち、早歩きで橋を渡った、、、


「着いた」


ただ家に帰っただけなのに、妙に違和感がある、、、


今日はなんか疲れてしまった、、、


早くシャワーでも浴びよう、、。


僕はすっかり濡れて、色の変わってしまったジーパンのポケットからカギを取り出した、、、


「ガチャッ」



僕は部屋のドアを開けた、、、


玄関にはスニーカーがいくつも転がっていて、足の踏み場がない、、、


誰かが、靴は玄関に必要以上置くと、幸せが逃げると言っていた、、、


間違ってないかもしれない、、。


僕はズブ濡れの服を洗濯機に放り投げ、そのままシャワーを浴びた、



雨で冷えきった体を洗い流して、なんかスッキリしたが、それも長くは続かなかった、、、


新しいTシャツに着替え、いつもの座り慣れた黒いソファーに座る、、、


前にはいつも時間を潰すために見る、小さいテレビが置いてある、、、


リモコンに手は伸ばしてはみたが、今はそんな気にはなれなかった、


さっきまで、雨に濡れるのがイヤで、家に早く帰ることで頭がいっぱいだったが、


ソファーに座っていざ落ち着いてみると、また不安でいっぱいになる、、、


どうしよう、、、


これから先、、、



相談したくても、親にヤクザに借金してるなんて言えない、、、


親友は、借金返済の為にしているクスリの売人の客だし、、。


とりあえず、忘れたかった、、、


今の借金、生活、すべてを、、、


僕は濡れたリュックサックに手を伸ばした、、、



僕はリュックの中から白い粉の入った袋を取り出した、、、


その粉を紙にのせ、くるりと巻いて、タバコのようにした、、、


それを口までもっていき、大きく深呼吸した、


というか、ため息にちかかったかもしれない、、。


ライターで火をつける、、、


大きくケムリを吸い込んだ、、、



僕はなんてバカな事をしてるんだろう、、、


商品のクスリに手を付けて、、、


忘れたかったんだ、、、


なにもかも、、、


大きく吸い込んだケムリが口から吐き出され、目の前を上がっていく、、。


だんだん、気持ちよくなってきた、、、


目の前の景色が歪んで見える、、、


これで忘れられそうだ、、。


天井を見上げると、上がっていったケムリがモクモクと充満している、、、


ず~っと眺めていると、ケムリが顔のように見えてきた、、、


口のような穴が開き、パクパクしている、


まるで喋ってい、、、


「おいっ」


えっ!?



ヤバいっ!!


クスリが効きすぎてんのか?


幻聴まで聞こえてきた、、、


「おいって!聞こえてんだろっ」


まただ!


こんな事、はじめてだ!


今までは、いくら気持ちよくなっても頭だけはしっかりしてたのに、、、


気が付けば、部屋全体がケムリで覆われている、、、


火事かっ?


イヤちがう幻覚?


僕は足をとっさに、つねった、、、


痛い、、、


僕は正気だ、、、


ならこれはいったい、、、


「無視してんのか、お前!上だよ!上っ!」


僕は、恐る恐る、上を見上げた、、、



「うわぁーーー」


僕は思わず、大声をあげた!


天井には、ケムリのバケモノが僕に向かって喋っていた、、、


どう表現したらいいんだろう、、、


そのバケモノは足はなく、顔は一般的にいう鬼にちかいかもしれない、、、


アラジンの魔法のランプの精の極悪版といったところだろうか、、、



ケムリは僕に向かって言った、、、


「やっと気付いたか、おせーよ、どーせまだ幻覚だと思ってんだろ!ちがうよ、これは現実だよ!」


なんなんだ、これは、、、


僕はもう一度、今度は頬っぺたをつねった。


痛い、、、


やっぱり現実なのか、


天井を見上げた、、、


あれっいない、


やっぱり幻覚だったのか?


「ちがうよ、ここだよ」



「うわっ」


僕はまた声をあげた、、、


今度はケムリが、目の前の黒いソファーに座っている、、、


形状が変わって、人のカタチをしている、、、


ケムリは言った、


「これは現実だっ!まぁ、自分が吸ったケムリから、でてきたバケモノと喋ってんだから、


 信じるのに時間がかかるだろうが、俺にも時間がない、、、こっから先は信じる、信じないは、


 おまえ次第だ!本題に入るぞ」


ケムリは僕の目を睨みつけた、、、


体からケムリが漏れて、天井に向かって少しずつ上がっていった、、、



「おまえ、借金してるだろ?」


「えっ」


「500万の借金がある、、、そうだろう?」


「なんでそれを、、、」


「何とかなるかもしれないぜ」


「なんだと、、、」


「簡単な話だ!俺とゲームをしよう、、、勝てば借金はチャラにしてやる」


ケムリは笑っていた、



何を言ってるんだ?


こいつは、、、


俺が借金をしている事も知っている、、、


ゲームだと、、、


「時間がないと言っているだろう!この煙が部屋に充満している間しか、


 俺はこの部屋に存在できない、、、今を逃すと、一生後悔するぞ!」


そういえば、こいつの体から煙がどんどん流れ出ていっている、、、


さっきより、一回り小さくなったみたいだ、、、


「さぁ、どうする?」


「、、、、、、、」


僕は何も言わずゆっくりうなずいた、、、



「わかった、やるんだな、」


「あぁ、、、」


「さっそくだが、ゲームの説明をしよう、おまえが、そのクスリを吸い終わって、


 部屋のケムリが全部消えた時、お前は、10日後の未来になっている、、、」


「何、10日後の未来だと、、、」


「そうだ、そしてそこで、もう一度クスリに火をつけてオレをケムリと一緒に出現させれば、


 オマエの勝ちだ、、、」


「それだけで、いいのか?」



「そうだ、それだけでいい、簡単だろっ」


「本当に借金がチャラになるんだろうな」


「ケムリに、二言はない、、、」


ケムリは、手を前に差し出した、、、


手から、煙が噴き出す、、、


「シューっ!」


そのけむりから札束が5つ出てきた、、、


「本物だ、確かめてみろ」


ぼくは、ケムリから札束を受け取った、、、


確かに本物だ、、、


「これはゲームが終わるまで、お預けだ、、、」


そう言うと、手に持った札束が僕の手から、煙と共に消えた、、、



これは、いったいなんなんだ、、、


ケムリのお化けに、借金チャラ、、、


こんな話しに、のっていいのか、、、


でも、ぼくには、これにすがるしか、、。


「じゃあ、時間もない、始めるぞ、、、  ゲーム、、スタートだ、、、」



ケムリがそう言うと、部屋中に煙が立ち込めた、、、


本当にこの煙がなくなったあと、10日後の未来になっているのだろうか、、、


うっ、、、


頭がボーッとしてきた、、、


だんだん意識がとうのいていく、、、


無意識になっていく中、僕は自然に両手を組んでいた、、、


何かを祈るようにして、、、


















第四章。  



 10日後



ここはどこだ?


辺り一面が煙で前が見えない、、、


僕はいったい何を、、、


、、、そうかっ、僕はケムリのバケモノとゲームを、、、


辺りの煙が少しずつ消えていく、、、


だんだん周りが見えてきた、、、


煙のスキマから赤や青の光がこぼれ出てくる、、、


ここは僕の部屋じゃないのか、、、


ドンッドンッドンッ


煙のスキマから光が入ってくるのと同時に、


重いバスドラムの音ときらめく電子音が聞こえてくる、、、


んっ、、、


この感じどっかで、、、


クラブ・DAYSだ。


でも何で、ユウジがDJしているクラブに僕が、、、


「貴様、約束がちがうぞ」


なんか聞こえる、、、


前に煙でまだよく見えないが人影、、、


「早く出せっ」


僕に言ってるのか?


どういう事だ、、、


誰だこいつは、、、


「こっちは金はもう用意しているんだ!」


金?


何のことだ?


、、、今、僕に声を張り上げているこの男、、、


黒いスーツに黒いシャツ、、、


薄暗いこのダンスホールじゃまったくわからないはずだ、、、


顔をよく見ると、目の所に縦に一本十字架のようにキズが見える、、、


ん、、、


あれっ、、、


こいつ見た事あるぞ、、、


マサヤんとこの組の若いヤツだ、、、


なんでこいつがここに、、、


(ゴツンッ!)


なんか頭に衝撃が、、、


金属の棒みたいなものがあたったような、、、


「早くブツを出せ!出さないなら、この場で、、、」


見上げると、僕の額には銃が向けられていた、、、



誰もいない、ダンスホール、、、


きらびやかなレーザー光線と、ダンストラックが、踊る相手を探すように、こだましている、、、


ケムリとの、借金をかけたゲーム、、、


僕の、あの日から10日後の未来は、ヤクザに銃を向けられている、、、


クスリに火をつけて、もう一度ケムリを出現させるどころじゃないぞ、、、


落ち着け、、、


落ち着くんだ、、、


状況を把握しなければ、、、


周りを見渡す、、、


誰もいないフロアにテーブル、、、


花札が散らばっている、、、


ん、、、


そういえばユウジが言っていた、、、


来月、クラブDAYSで大きなギャンブルがあると、、


それは、従来のカジノでやるトランプを使ったものではなく、日本的な花札でやるゲーム、、、


今日はその日、、、


「おいっ状況がわかってるのか、、、何ボーッとしている、、、」


ガチャッ


言いながら引き金を引いた、、、




ヤバい、、、


ブツって何ですか?なんて言ったら、殺される、、、


ここは、なんとか知らない事がばれずに上手く、情報を聞きださなければ、、、




「だいたい、貴様!どんだけ、約束の時間から遅れてると思ってんだよ!


 ユウジが、いいクスリの売人がいるってんで、取引に応じたのに、、、


 どれだけ大事な取り引きかってのは、貴様が持ってきてる、


 ブツの量見りゃ分かるだろーが」


えっユウジ?


どういう事だ、、、



ユウジがマサヤの組と取り引き、、、


だから最近、クラブDAYSにマサヤんとこのヤツが出入りしてたのか、、、


そういえば、僕がケムリとゲームしたあの日、ランドコーヒーで、


ユウジがいい儲け話があるとか言ってたぞ、、、



(ランドコーヒーでコウスケとユウジが会う一時間前、、、)


薄ぐらい店内、、、


ゆるいJAZZが流れるなか、ユウジはテーブルを指でリズムを弾きながら、


一人の男を待っていた、、、



店内にいる、客の喋り声が急になくなった、、、


入り口から奥に向かって、男が歩いてくる、、、


男は全身黒いスーツを着ている、


靴は、ここまでどうやって来たんだと思わせるほどピカピカに光っている、、、


周りの視線が男に集中している、、、


男はユウジが座っている席の前で止まった、、、


「オウッ!ユウジ、待たせたな」


「いや、今来たとこだから、で、なんの話しだよマサヤ」



「あぁ、それなんだが、今、コウスケがクスリ売ってるって本当か?」


「あぁ、チャイニーズに借金して、さばいてるよ、」


「来月、お前んとこのクラブでカジノやるだろ」


「花札使った、やつだろ」


「表むきは、そうなんだが、実はその日裏でヤクの大きな取り引きをやる事になってる、、、」


「マジかよ」



「で、その取り引きなんだが、相手のクスリの売人が、


 大量のブツ持って、にげやがった、、、」


「逃げた?」


「あぁ、そのブツはもう買い手がついてるんだが、その相手が、


 ウォーターヘッドなんだよ」


「ウォーターヘッドって、あのバンドのかよ?」



「そう、あのビジュアル系のバンドだよ」


「そういえば、そのカジノの日、シークレットで、クラブDAYSに出るって聞いたけど、


 あのバンド、日本ではビジュアル系のブームが去ったけど、


 今ヨーロッパの方で人気があるんだろう」



「俺も、音楽は詳しくないが、なんでも、80年代リバイバルが


 どうのこうのって言ってたな」


「で、なんで、ウォーターヘッドがヤクを買うんだよ」


「それが、バックにヨーロッパのマフィアが絡んでんだよ、


 ウォーターヘッドは、まぁ運び屋みたいなもんだ」



「じゃあ、もし、取り引きが成立しなかったら、、、」


「、、、その時はうちの組がヨーロッパのマフィアを、


 敵にまわすことになる、、、今回の取り引きはうちの組がヨーロッパに


 パイプをもつ大きなチャンスだ、、、


 なんとしてもヤクを手に入れなきゃならない、


 そこでコウスケにチャイニーズからヤクを調達してほしい、、、


 この件でうちの組が、絡んでいるのはチャイニーズには内緒だ」



「内緒?、、、」


「うちの組とチャイニーズは、敵対してるなかだ、、、


 特にクスリに関しては街のシェアを争っている、、、


 これがばれると、全面戦争は避けられない、、、」


マサヤはそう言うと、手首に巻いてある、ブルガリの時計に目をやった、、、



「と、いう訳でオマエに頼んでいいか?」


「、、、、、、」


「ただとは言わねぇ、クスリはこれから先、うちの組経由で、


 いつでもオマエにまわしてやる、、、それとこれが上手くいけば、


 ヨーロッパのマフィアにオマエを紹介してやってもいい!


 アイツらは、ヨーロッパのパーティーにも顔がきく、、、


 ユウジも音楽で食っていきたいんだろ、チャンスじゃねぇのか、、、」



ユウジは吸いかけのタバコを大きく吸い込んだ、、、


「わかったやってみるよ」


マサヤはニヤッと笑うと席をたち、ポケットから一番、色の濃いお札を


テーブルに置いて立ち去った、、、


マサヤが去って店内はまた、小鳥がさえずるように会話を始めた、、、


ユウジは、灰皿にタバコを押し当てると、ポケットからケータイを取り出して通話ボタンを押した、、、


「モシモシ、コウスケ?あのさぁ、ちょっと今日いるんだけど持ってきてくんない?


 ぶっ飛ぶやつ、金はあるからさ!」


「今ちょっと水害にあって大変なんだけ、、、、、、」



<10日後の未来、、、クラブDAYS、、、>


男に銃口を向けられるなか、コウスケは必死に考えた、、、


マサヤがユウジと、取り引き、、、


ユウジがいい儲け話があると言っていた、、、


たぶん、あのランドコーヒーでユウジと会ってから今、クラブDAYSにいる、


10日間の間に、僕がクスリを調達してこの男に渡さなければいけなかったのか、、、


でも、その間がちょうどケムリとのゲームの10日間で飛んじまってる、、、


ヤバイ、、、


どうする、、、


くそっ、ケムリにはめられた、、、


なんとか、この場を脱出できないか、、、


もう一度、僕は周りを見渡した、、、



周りにあるのは、テーブルに置かれた花札、、、


目の前のこいつは今にも僕をうち殺しそうだ、、、


僕はユウジとランドコーヒーで会った時と同じ格好をしている、、、


背負ってるリュックには少しのヤクしか、、、


「あっ、、、」


その時、僕の頭の中に小さな光がさしこんだ、、、


「キサマッ!もう俺も限界だ、、、


 んっ、、、そのリュック、、、中身はなんだ?物じゃねーのか?おいっ」



よく考えろ!


なんとかなるかもしれない、、、


この流れ、、、


「あぁ、クスリはこの中だ!」


「なんだと、だったらさっさとだせ」


男はリュックに手をかけようとした、、、


「まてよ、今出すから、、、取り引きだろ?まずその銃を俺に向けるな、、、


 俺はちゃんと持ってきてるよ、ここにある、、、


 オマエも、金を持って来ている、、、その取り引きに銃は必要か?ちがうだろ?」



「キサマっ!なに急に喋りだしてんだコラッ!」


自分でも何言ってるかわからない、、、


ただ何とかしなきゃ、、、


「今言ったとおりだ、銃をまずしまえ!それから、クスリと金の交換だ」


「ふっ、まぁ、ブツが手に入れば、こっちはそれでいい。」


男は銃を床に置くと、両手をあげて、手をちらつかせた、、、


「これで満足か?」



「あぁ、オーケーだ」


「じゃあ、早くブツを出せ」


「わかった、今出すよ。」


僕はそう言うと、背負ってるリュックを下に下ろした、、、


手は汗でびっしょりだ、、、


僕の記憶が確かなら、、、


10日前の、、、


あの日とリュックの中身が同じなら、、、



「早く、中のブツをだせ!何ボーッとしてる!」


僕はリュックのジッパーを開け、中に手を突っ込んだ、、、


「あったっ!」


「あっただと?何言ってる?キサマっ」


「あったんだよ、よかった、、、」


「何、一人でブツブツ言ってんだよ、もういい、、、」


男は、床に置いてある銃に手をかけた、、、



それと同時に僕は、リュックの中から黒いカタマリを取り出す。


男が、銃を僕に向けた時、


「キサマ!!」


僕の手にした黒いカタマリから火花が散った、、、


「ドキュ~ン」


音と一緒に男が倒れていた、、、


床が真っ赤に染まっていく、、、



僕は、10日前の雨の降ったあの日、、、


借金漬けの未来のカケラもない自分に嫌気がさして、死のうと思った、、、


自殺する勇気なんてないくせに、チャイニーズから護身用にと、


嘘をついて、銃を街に買いに行った帰りだったんだ、、、


あの日のリュックの中には銃が入っていた、、、


死のうと思って買った銃に、命を助けられるなんて、、、、、、



どれくらいの時間がたったのだろう、、、


僕は目の前の赤く染まる、床の上に横たわる男をぼーっと見ていた、、、


僕はゆっくり立ち上がると、倒れてる男に近づいた、、、


男の横に血がついたボストンバックが置いてある、、、


僕はそれを手に取ると、入り口に向かって歩き出した、、、


これから、どうなっていくんだろう?


、、、逃げ切れるか?


、、、警察はきっと、チャイニーズとヤクザの麻薬の絡んだ抗争と思うだろう、、、


ただ僕はこれから両方に追われるはめになる、、、


不安は増える一方だ、、、


ただ、、、


僕はボストンバックのジッパーを開けた、、、


中には、札束が踊っていた、、、


「ゲームには勝ったみたいだ」


僕はニヤッと笑ってそうつぶやくと、入り口のドアを開けた、、、


僕は二度とクスリに火をつける事はなかった、、、













END,,,