わたしが就職をして、30歳が見えてきた頃、なかなか嫁に行かないわたしに、母親とばあちゃんが痺れを切らしていた。
2人からの圧力が強くて、親は口を開けば嫁に行けばかりで、家に居てもくつろげない日々を送っていた。
そんなとき、ばあちゃんから、お願いだから、会うだけでいいから…と、お見合いをしてくれと頼まれた。
あまりにしつこいし、一度だけでいいとか会うだけでいいとか、そんな甘い言葉に騙されてOKした。
その時、付き合っている人もいたのだが。
いざ、お見合い相手とお会いしてみると…
お見合い相手に文句などなかった。
ただ、何となく違うと思った。
そもそも自分には、後の結婚相手であるヤバ男がいるのだから。
後に訊いた話だが、何故かわたしのことを気に入ってくださり、是非嫁に欲しいと懇願してきたらしい。
その相手は、わたしの写真を机の上に飾り、始終眺めているとのこと。
相手は隣の県で教師をしているらしい。
わたしは、そこで暮らすことは想像出来なかった。
当時、仕事を辞めて、隣県に嫁ぐのはどうしても嫌だった。
知り合いもいないところなのに。
悩んだ挙句、お断りした。(これは、縁談を持ってきた、ばあちゃんに)
わたしのその判断は、ヤバい男と結婚してしまった今でも正しかったと思っている。
でも…相手は乗り気、断ることは難しそうなのだ。
そのことで、わたしと親は毎日大喧嘩をするようになっていた。自分の身を守るため、わたしが母親を突き飛ばすことも幾度となくあった。
お見合いしたら、相手が気に入ってくれさえしたら必ず結婚するものだ…そんなことを繰り返し言われた。
お見合いの常識なのかもしれないが、話が違うと思った。会うだけでいいと言ったじゃない?
もう、どうすることもできずに、わたしは逃げた。親の旅行中に。
いろんな蟠りがある家だったので、脱出できてよかったんだと、自分に言い聞かせながら。