この事故は今から20年前の2001年に起こったのですが、当時地元ですごく有名になったので私もよく覚えていました。
---- 事故概要 ----
オレゴン南部のI-5(フリーウェイ)で、一台のワゴン車がエンストを起こしてしまいました
車には夫婦とその4人の幼い子供が乗っていましたが、早速通りかかった州警察がヘルプしようとしたのです。
当時、ヘルプにあたった警察官は3人いました
先にストップした車に乗っていた警察官2人と、後から応援に来た警察官1人。
ワゴン車はフリーウェイの路肩に停められていましたが、その時3人の警察官はフリーウェイ側に立っていたそうです。
ところがその時、その停めてあったワゴン車に向かって一台のピックアップ車が激突してきたのです。
2人の警察官はその場で即死
そしてもう一人の警察官(当時41歳)は、複雑骨折を含む深刻な怪我を負いました。
すぐにヘリコプターで病院へ運ばれて救急処置を受けましたが、TBI (Traumatic brain injury:外傷性の脳損傷)で全身麻痺状態になってしまいました。
この事故で彼は「植物人間」のような状態になってしまったのです。
それでも入院中、ある程度は回復したようでした。
でも深刻なTBIの影響で、もちろん本人は意思疎通もできず、周りはその表情や目の動きだけで、体調具合を推測することしかできない状態でした。
そして24時間のフル・ケアが必要だったので、そのままナーシングホームへ移されました。
そしてそのまま20年間、彼は生きました。
ダンナの従弟で2人警察官がいるのですが、話によるとその警察官は事故以来、本当に「生きているだけ」の状態だったそうです。
そして怪我が元で、その後も頻繁に病院を行ったり来たりしていたそうですが、今回その合併症が原因で亡くなってしまったのこと。
実はこの警察官には、事故当時、14歳を筆頭とする3人の子供がいました。
それまでは子供たちと一緒にスポーツをしたり、フィッシングに連れていったりと、かなりアクティブなお父さんだったそうです。
そんな中でこのような悲惨な事故が起きてしまいました
寝たきりで意思疎通すらできなくなった父を見た子供たちの気持ちを考えると、本当に言葉がありません。
でも彼の葬儀の際、一番上の長男(現在は結婚して子供がいます)が、お父さんが元気だったころの楽しかった思い出を話したそうです。
家族にとっては、大切な夫(またはお父さん)が例え「生きているだけ」であっても、きっとそのまま生き続けて欲しかったから、その後も医療処置だって続けていたのでしょう。
現実的な話、ナーシングホームのケアや様々な治療費などにかかる費用は莫大なものです。
しかし彼の場合は、勤務中に起きた事故だったので、おそらく州警察の方からの負担になっていたはずです。
でも私はもし将来、何らかの事故が起きて自分が「生きているだけ」の状態になったら延命処置はしないでもらいたい、と遺書に残しました。
---- 加害者のドライバー ----
そしてこの事件で考えさせられたことが、実はもう一つあるのです。
それはこの事故を起こしてしまった加害者のドライバーのこと。
実は私もこのことは今回初めて知ったのですが、、、
当時、ワゴン車に突っ込んでしまった車を運転していたドライバーは19歳の大学生でした。
原因は、居眠り運転でした
この大学生は前日、カリフォルニアで行われた教会主催のキャンプに行って、それから夜通しオレゴンまでドライブしてきていました。
その間、実際に眠れたのは一時間半だけだったそうです。
実は事故のあった日の朝に、自身が通うオレゴン州立大学の寮のミーティングに出席する予定だったそうで、それに間に合うように寝る間も惜しんでドライブしていたようです
彼によると運転中、2回ほどコックリと眠気が襲ってくるときがあったそうですが、そのまま我慢してドライブし続けたそうです。
その結果、結局眠気に勝てずに(運転中に)居眠りをしてしまったそうです。
そしてたまたま自身の車が突っ込んだ場所に、エンストしたワゴン車がとまっていて、そこで警察官がアシストしていたのです。
本当にこれは偶然と言うべきなのか、、、ひどく皮肉な運命です。
この大学生は普段は教会に通っていて、とても勉強熱心な青年でした。
オレゴン州立大学にも音楽のスカラーシップをもらって通っていたのです。
でもこの事件のせいで、彼の人生は360度変わってしまいました。
彼は法廷で泣きながら、「できることなら自分の命と引き換えに(亡くなった警察官たちの)命を助けたい。」と言ったそうです。
このことからも、彼がこの取り返しのつかない事故を起こしたことを心から後悔、反省していることが分かります。
この事故で命を奪われてしまった警察官たちの家族たちも、この大学生のことを許したそうです。
実はオレゴン州ではこの事故以後、路肩で泊まっているポリスカー (または救急車などの法的な車) が止まっている場合、もし片側に2レーン以上ある場合にはポリスカーがいる側のレーンは開けて離れた側のレーンに移動する、また(片側にレーンが1つしかない場合、または混雑な交通で移動できない場合)は速度を落としてゆっくりと運転しなければならない法律が施行されました。
私も実は通勤でI-5を利用しているので、この事故については他人事とは思えないところがあります。
しかも夜勤なので、もし運転中に眠気が襲ってくる場合には、無理をせずに近くのExitに出て車を止めて目を閉じて休むようにはしています
でもこれって運転に関わらずに他のことにも言えることなんですが、、、
(身体が)苦しいのを我慢して無理をしていると、とにかく仕事などもUnproductiveだし、後で必ず良くない結果になってしまうように思います。
やっぱり身体が悲鳴を上げていたら、素直にそれに耳を傾けて、少し休んでから仕事でも何でも再開することが大切かな、と思います。
以上、一つのニュースからいろいろと考えさせられたできごとでした。
亡くなった警察官の方たち(そしてそのご家族)のことを思います、、、 R.I.P.
追記:本文中「加害者の人生が360度変わってしまいました。」と書きましたが「180度」の間違いでした!
360度だと何も変わってないことになりますよね、苦笑。