先週受け持った患者さんの一人に、ガン腫瘍切除の手術後、痛みでひどく苦しんでいる患者さんがいました。
彼女(Lさん)は、術後にEpidural (硬膜外麻酔)をつけてもらって、そこからオピオイドの痛み止めを投与していた状態でしたが、痛みは一向に改善しなかったんです。
それどころか、その夜に意識が朦朧とした状態になってしまい、急いでNarcan(オピオイドの過剰摂取をリバースする静脈注射)を打たないといけなくなりました。
しかしこの注射の後、無事にLさんの意識は戻ったのですが、今度はまたひどい痛みにうなされることになってしまいました
Lさんには主治医の他にPain Serviceという痛みを扱う専門のドクターもついて、とにかく彼女の術後の痛み改善に尽くしていたんですが、、、彼女の痛みはなかなか良くなりませんでした。
Lさんは、実は若い頃にお母さんとお兄さんの両方が(別々の時期に)自殺する、というものすごく辛い経験をしていました。
それが元で、重度のDepressionにも苦しんでいたのです。
Lさんの病室からは夜中でもずっと痛みによる叫び声や鳴き声が聞こえている状態でした。
もちろん、ドクター側もとにかくLさんの痛みを軽減するために、いろんなオーダーを出していましたが。
そんな中、私もLさんを受け持つことになりました。
その日の夕方、痛み専門のドクターが、LさんにKetamineという痛み止めをあらたにオーダーしました。
Ketamineもオピオイドと一緒で麻薬性の薬ですが、他のオピオイドと異なり、呼吸抑制や血圧低下などの副作用を起こしずらい利点があります。
でもこの薬、Lさんのように他のオピオイド服用にかかわらず、まだ痛みに苦しんでいる患者さんでないかぎり、滅多にオーダーされることはない薬です。
LさんはKetamine投与を始めてから、しばらくしてようやく痛みが少しだけ和らいできたようでした
ちなみにLさんは、まだEpiduralも投与されていました。(でもオピオイドは取り除かれて、局所麻酔だけになっていましたが)
そのほかに経口の麻薬系の薬や他の痛み止めも同時に服用している状態だったんです。
でも痛みが軽減されたLさんは、少し余裕が出てきたようで、そのうちスモールトークで彼女の家族のことなどを話してくれるまでになりました
いつも思うことですが、術後の患者さんの痛みをちゃんと治療することって本当に大切です。
「痛み」は身体的、精神的にも深く影響します。
とにかく「痛み」で何もできなくなり、ときには心まで支配されてしまうからです
しかし何種類かの強い痛み止めを投与されているLさんへの副作用はやはり心配で、頻繁にチェックはしていました
夜中、Lさんが「トイレに行きたい」と言いました(Lさんは尿のカテーテルがついてありました)
もしかしたら便ですかと思って聞いたら、Lさんはうなずきました。
手術後にちゃんと胃腸が動いて便が出ることは、とっても大切なことです。
それでLさんを、まずゆっくりとベッドの上に座らせました。
すると座っていたLさんがいきなり前のめりになって、眠りそうになっていました。
「Lさん、ちゃんと目を開けて起きてください大丈夫ですか」
彼女の顔は蒼白で、私の質問にろくに答えることができませんでした。
(座る前はしっかり話すことができていたのです)
いそいでLさんをベッドに寝させてバイタルを計ってみると、血圧が58/27
EpiduralとKetamineを止めて、RRT(Rapid Response Team)を呼び、もちろんドクターにもSTATでベッドサイドに来てほしいと連絡しました。
ベッドに横たわったLさんは、それでも次第に意識を取り戻して、血圧もゆるやかに上昇していきました。
もしかしたら、またNarcanを投与しなければいけないのかと思ったのですが、その前にLさんは意識をちゃんと取り戻してくれたので、その必要はありませんでした。
Lさんの症状は誰がみても、Orthostasis (Orthostatic Hypotension: 起立性低血圧)と彼女の薬(オピオイドの痛み止め)のコンビネーションが引き起こしたということは一目瞭然でした。
ただKetamineは血圧低下を引き起こすことはないので(むしろ高血圧を引き起こすことがあると言われています。でもSedationはあります。)そのまま続行され、そのかわりEpiduralは外されることになりました
LさんはEpiduralが外されることにひどくがっかりして、「痛みに苦しむなら、いっそ死んだほうがいい」と泣いていましたが、でも患者さんの意識がなくなるほどの薬をそのまま投与するわけにはいきません。
痛みは本当に複雑です
その状態によっても痛みの種類は全然違うし、また個人によって痛みの受け方は大きく異なります。
治療も、やっぱり個人の状態によってカスタマイズされていかないといけないんです。
そして痛みの治療は、時には「トライアル&エラー」を繰り返さなければならない必要もあります。
みんながPain freeになる万能薬ってないんですよね、残念ながら、、、と経験からつくづく思います。
今回のこともLさんの痛みを少しでも軽減したいけれど、同時にLさんの身体がちゃんと他の副作用(Sedation や低血圧など)に耐えることができるかどうか、ちゃんと気をつけてチェックしていないといけません。
あれから、Lさんはあの出来事で疲れたのでしょう。
痛みより疲れが勝ったのか、Lさんはようやく眠ることができました。(その後も血圧は、ちゃんと安定していました)
他の同僚が、「Lさんがあんな風に静かに眠っているのを見たのは、初めてかも」とビックリしていたほどです。
シフトが終了するとき、すやすやと眠っているLさんをわざわざ起こすのもと思い、そのままベッドサイドを後にしました。
また今週仕事に戻ったときに、Lさんの病室を訪ねようと思っています。
さて話は変わりますが、ダンナが
「昔、お母さんがCast ironで焼いてくれたステーキやポテトがクリスピーで本当に美味しかった」
と言っていたのですが、両親が亡くなった後、実はその思い出のCast ironは妹の家に保管されていたのです。
でもダンナの要望を聞いた妹が、Cast ironを私たちに譲ってくれました。
Cast ironって結構安くお店でも買えるのですが、でもこれはダンナの両親やその両親も使いこんできた長い歴史のある特別なものです。
私もちゃんと使いこなせるようになりたいと思い、いろいろとYoutubeで検索してみました
まずは洗剤でよく洗い、すぐによく乾かします。
そのCast iron後をストーブで温めて水分をよく飛ばしてから、オイルを垂らしてペーパータオルでよく表面を擦り込みます。
その後、350Fのオーブンで一時間ほど焼いて、シーズニングという作業をすることが大切なようです。
ちなみにオーブンの工程は年に3、4回ほどで良いとのこと。
大切なことは毎回使ったら、すぐ洗うこと。
そして洗ったらタオルドライをしてからストーブの弱火で乾かして、錆が出るのを防ぐこと。
その後、微量のオイルを全体に塗っておきます。
手入れさえ良ければ、Cast ironは一生使えるそうです。
さて、加工し終わったCast ironを使って早速目玉焼きを試しに作ってみましたが、良い感じに調理ができました
ただ結構、重いんですけどね
そのうち腕に筋肉つきそうです
私は以前に鉄欠乏性貧血の診断がされたので、このCast ironの使用はちょうど良かったのかも、と思います