OCDというのは、Obsessive-Compulsive Disorder の略で、日本だと「強迫性障害」と言われているようです。
OCD症状を少なからず持っている人って結構多いのではと思います。
、、、というのは、私もそうだからです
そういえば私は今まで、かなり極端なOCD症状を持った人に会ったことがあります
例えば患者さんの一人で、何かに触ることで病気に感染してしまうのではと言う恐怖感(Germaphobia)を持っている人がいました。
この患者さんは確かに免疫が既に低く、常に感染の心配もあったので、彼女の気持ちはよく理解できました。
何かモノに触るたびに、とにかく手を徹底的に洗わないと気が済まないようでした。
しかも彼女の場合、手を洗う時間と回数が半端ありませんでした
とにかく病室にいても、ずっと手洗いと除菌に時間を費やしている感じだったのです。
そのため彼女の手は、あかぎれと乾燥で常に真っ赤になっていました
そしてもう一人は、スーパーに買い物に行ったときに見かけた人だったのですが、、、
ある老人が、ショッピングカートをものすごく念入りに除菌ワイプで何度も、何度もこれでもかというほど拭いていました。
そしてその後、彼はなぜかカートの中に持参した新聞紙を敷いていました
そんな彼の変わった行為を見て驚いた人が、彼に話しかけると、
「ショッピング・カートはいろんな人が使っているから、どんなバイ菌がついているか分からないだろう」
と話していたのですが、実はこれはコロナ感染が流行る前のことだったのです。
(パンデミック中はきっと彼のOCDも更にパワーアップされて生活しているのでは、と勝手に想像しています)
私は、さすがにここまで重度のOCD症状は持っていません
でも私も職業柄、手はしっかりと洗うように心がけていますし、何かを使った後などしっかりと除菌はしていますが、、、
それでも何ごとも「ほどほどに」抑えることができています。
特に家だとLaid backに何ごとも受け止めているつもりです
しかし病棟で働いていると、自分の中のOCD症状がかなり強くなっているのが分かります
というのは、例えばシフト交代で患者さんの病室に初めて入ったとき、病室の中がオルガナイズされていないとものすごく気になってしょうがないのです。
私たちの病棟はすべて個室なんですが、例えば受け持ちの患者さんの病室のカウンターの上にガーゼなどのドレッシング類が乱雑に置かれていたり、または部屋の隅っこにブランケットがそのまま投げたように置かれていたりすることが耐えられません
それでまずは患者さんとの挨拶もそこそこに、患者さんの病室をきちんと整理することから始めます
何でもきちんと整理されていないと心が落ち着かないのです。
例えば、手術後に気管切開チューブをつけている患者さんは、取り換え用のカニュラやサクション器具、ガーゼ、食塩水、胃ろうに使うシリンジなどなどとにかく多くの医療器具が必要になります。
そのようなものも、ちゃんとオルガナイズされて置かれていないと気が済まないので、まずは自分なりに整理整頓するのがルーティンになっています。
やっぱり人様の命を扱う仕事なので、何でもちゃんとオルガナイズされていないと、本来起こるはずでないエラーが起きる確率も高いのではと勝手に思ってしまいます。
病室内を一通り整頓すると、患者さんもだいたい喜んでくれます
(もちろん患者さんの私物などは、許可なしでは動かしませんが)
そして巡回に来るドクターなども(我が病院はティーチング・ホスピタルなので、ドクターもグループ単位で来ることが多いのです)、患者さんの手術後の患部の手当てをした後、使用したハサミやドレッシングなどをそのままプラスチックの入れ物に乱雑に入れておくことがあります。
ハイ、それも私には耐えられません
それである日、その入れ物を使い易いようにオルガナイズしておいたら、その日来たドクターに「おお、ありがとう」と褒めの言葉をいただきました。
整理整頓はそんなに特別なことではなく、きっと多くの人にとっては当たり前のことでしょう、、、
でも簡単なことだけど、私たちのような仕事の場合、他のもっと大切なことに気を取られてなかなかそこまで気が回らないことが多いのも事実なのです。
それだからこそ、基本的なことも大切にしないと、といつも思ってしまいます。
実は今週受け持った患者さんの一人にナーシングホームからアドミットしてきた人がいました。
彼はこの度、白血病の疑いがあって我が病棟に入院してきたですが、その人はここ何か月か胃ろうから栄養を取っていたそうです。
入院時、彼の胃ろうチューブの挿入口がなぜかしっかりとガーゼで覆われていて、そのガーゼに書かれていた日付がなんと3日前となっていました
それでガーゼを取ってみたら、ボロボロと茶色い物体が下に落ちてきました
そして中の胃ろうのディスクの下がとんでもないことになっていました。
これが胃ろうのチューブで、皮膚の上に乗っているものはディスクと呼ばれている部分です。
ナーシングホームでの栄養補給時、おそらく胃ろうの挿入口から漏れがあったのでしょう。
漏れた液体がそのまま固まったものが、胃ろうのディスク下にこびりついたようになっていました。
それが皮膚にくっついてしまって、まるで皮膚と一体化している感じになっていました。
そして当然その漏れがこびりついた皮膚は、そこだけ真っ赤になって炎症を起こしていました
実は、ディスクの下って意外と見落としてしまうことが多いのですが、、、
でもここまで固くなった漏れが皮膚にこびりついて炎症まで起こしているとは、ケアしていた人がその部分をずっとネグレクトしていたからでしょう。
それを見た途端、また私の中のOCDがムクムクと顔を出してきました(笑)
何とかしてこのこびりつきを取り除かないとと思いました。
それでまずは食塩水を使って、こびりついた部分を少しずつ柔らかくしながら、ディスクの下だったので長い麺棒をお箸のように使って少しずつ皮膚から取り除くようにしました。
皮膚が真っ赤になっていて、患者さんの方もかなり痛かったと思います
そこは最近観た「鬼滅の刃」の映画で学んだ呼吸法にて乗り切ってもらいました、笑笑。
というか、単に患者さんに呼吸をゆっくりと深くしてもらって、その間に取り除くようにしました。
すべて綺麗に取り除くまで45分もかかってしまいましたが、でもこびりつきはすべて取ることができました
そしてその後、皮膚の炎症を抑える薬を塗ってから、ガーゼでカバーしました。
患者さんには少し痛い思いをさせてしまいましたが、でも彼は
「今までそこまで(胃ろうのディスクの下まで)ケアしてくれる人が誰もいなかった。ありがとう。」
と感謝してくれました
本当に小さなことなんですが、でも免疫の低い患者さんは少しの炎症でも命取りになってしまうこともあるので、やっぱり大切なことだと思います。
そしてやっぱり「ありがとう」と言われて、嬉しくないことはありません。
それに仕事での大きな励みにもなります
こんなことでもやっぱり自分の中にOCD症状があるのは良いことなのかなとポジティブに考えています。
ちなみにこれは有名なOCDの歌なんですが、今だに聴くたびに笑ってしまいます。
みなさんも歌を聴きながら、自分に当てはまるかも、と思ってしまうことがあるかも