今週も忙しいシフトが無事終わりました
受け持った患者さんの一人Jさんは、我が病棟に一か月近く入院されている患者さんでした。
Jさんは舌がんと診断されていたのですが、腫瘍近くの血管から出血が起こってしまい、急遽その出血を止める処置が行われ(Cauterization)、そして気道確保のために気管切開 (Tracheostomy) が行われました。
本当は腫瘍を取り出す手術が必要だったのですが、Jさんは元々心臓疾患があって身体が弱っていたこと、また栄養不足もあって手術に持ちこたえられる体力がないと判断されました。
まずはJさんに胃ろうによる栄養補給が行われることになり、そして抗がん剤投与で腫瘍のサイズを小さくすることになりました。
しかし残念ながら、期待していたほどJさんに抗がん剤の効き目は表れませんでした
もっと悪いことには、高齢で心臓疾患のあるJさんは抗がん剤治療の後に更に副作用が出てしまい、一度ICUに運ばれるというエピソードもあったほどでした。
ドクターたちはこれ以上の治療は難しい、とホスピス・ケアの話もしたのですが、Jさんの娘さんが「絶対にあきらめたくない」と今もフルコードで、すべての治療が行われていました。
今回とりあえずJさんの体力が回復するまで、ナーシングホームへの退院が提案されました。
しかしJさんの娘さんが「ナーシングホームには行かせない。お母さんは私が家で面倒を見る」と断固反対したのです。
でもJさんを自宅に退院させるには、娘さんがお母さんのケアの仕方をちゃんと学ぶ必要がありました。
気管切開チューブの吸引の仕方(Jさんの場合、大きな腫瘍から常に分泌物が出ている状態で、吸引は一時間ごとに必要な状態でした)そして胃ろうからの栄養補給の仕方などなど。
医療で働いた経験がない人にとっては、結構大変なケアです。
娘さんは「そのうち病院へ訪ねて来て、ケアの仕方を習いに来ます。」と約束したそうですが、なかなか姿を見せませんでした
時には「今日来ます」と言って、結局来なかったことも
しびれを切らしたドクターたちは「(ケアの仕方を)習う気がないのであれば、このままナーシングホームへ送るしかないですよ」と彼女に何度も留守電を入れていました
余談なのですが、これまでのドクターやナースたちなどのノートを読むと、Jさんの娘さんに対して結構否定的な描写がありました。
例えばJさんのケア・カンファレンスの際、ドクターやナースたちを怒鳴りまくったとか、電話をした際にかなりアグレッシブなことを言ったとかということが書いてありました。
これ以上の治療が難しいという判断や、ナーシングホームへの退院を進める医療チーム側に、娘さんが逆上したからだったようです
そんな中、Jさんの娘さんがようやく姿を見せてくれたのです。
しかもその時、既に夜中の12時でした。
ちょうどその日私がJさんの担当になっていて、病室に入ったら見知らぬ女性がいきなりベッドサイドに座っていました。
すぐにJさんの娘さんであることは察しがつきましたが、彼女の逆上について知っていたので、内心ちょっとビクッとしてしまいました
彼女は、私を見ると「すみません。ようやく仕事の休みがついて、急遽やってきました。お母さんのケアのこととか教えてください」
と言ってきたので、気管切開チューブの吸引の仕方や、カニュラの変え方、そして胃ろうの使い方など一通り彼女に教えることになりました。
そしてJさんのケアを一緒にしながら、彼女は少しずつ自分のことについて話してくれたのです。
彼女はシングルマザーでビルディングの清掃員として日中も、そして時には夜も働いているそうです
私の住んでいる州では、清掃員だと時給は最低賃金です。
それで食べ盛りの子供たちを養っているのだから、オーバータイムで働かないと家計は火の車になります。
「ずっと病院へ来たかったけど、仕事の休みが思うように取れずになかなか来れなかったの」と言っていました。
今回、自分のお母さんのケアをつきっきりでするために、2か月間の長い休みを取ったそうです。
相当長い休みですが、その間収入が無くなることは大丈夫なのかなと余計な心配もしてしまいましたが、、、とりあえず今はJさんのケアを覚えてもらうことが優先なので、そのことに集中することにしました。
彼女は覚えも早くて、一時間も経たないうちにJさんの吸引をうまくできるようになりました
そして胃ろうを使って、薬をあげることも覚えました。
「短時間でよくこれだけ覚えましたね。このまま練習していけば、おうちでのお母さんのケアもきっと大丈夫でしょう。」と言うと、彼女は初めて嬉しそうな顔を見せました
その後、ケースマネジャーがJさんが家で使うためのポータブルの吸引機や加湿器、そしてホスピタルベッドがデリバリーされるように手配してくれました
それ以来、Jさんの娘さんは毎日のように病室へ姿を見せるようになりました
しかし長期間の仕事の休みを取ったとはいえ、家では相変わらず「お母さん」として子供たちの世話のある彼女、やっぱり病室につきっきりという訳にはいきません
そのため病室でJさんのケアの練習をしながら、時間を見てまた家へ帰る、ということを繰り返していました。
時には、子供たちの具合が悪くなった、と言って訪ねてくることができないこともありました。
ある日、Jさんの娘さんが夜中に病室へステイして早朝家に帰ることがあったのですが、彼女の座っていたリクライナーの上に黒い物体(?)がちょこんと置いてあったので「一体、なに」と思ったら、それは彼女のウィグでした、笑
毎日、違う髪型でおしゃれしている彼女だったので、家に帰る前に違うウィグをつけていったのかもしれません
それでもJさんの娘さんは気管切開チューブや胃ろうのケアをちゃんと覚えてくれて、自宅への退院も100%決定しました
実は私の金曜日のシフトの日(その週で最後のシフトということです)、Jさんもちょうどおうちへ退院する日となりました。
Jさんはおうちへ帰って、ひさしぶりに孫たちと会えるのがとても嬉しそうでした。
シフト変更のときに、Jさんに
「今日、Jさんが退院することになって本当に良かったです。ご家族との時間を楽しんでくださいね。」
と言うと、(気管切開のため)話せないJさんでしたがハグをしてくれました
実はそのシフトでは、他の患者さんのコード・ブルーもあり(幸い、この患者さんの命に別状はありませんでした)かなり大変だったので、Jさんの笑顔とハグはとても心に沁みました
さて来週はいよいよ私の宣誓式があります。
その後、ようやくアメリカの市民権🇺🇸を得ることになります。
実は先日、やはり市民権を得ようと思っている友達から
「市民権を得る利点は何か」ということを聞かれました。
私はアメリカに既に人生の半分以上住んでいるし、生活の基盤はすべてアメリカです。
そのため昨年の大統領選挙のとき、例え「たかが一票」であっても同じアメリカで生活する者として、同じ選挙に参加できなかったのは非常に残念に思いました。
また市民権を持っていると、例えば将来Federal(連邦局)などで働くことも可能です。
(おそらく私が働くことはないと思いますが、、一応です。)
しかし今回、私が新たに一つ学んだことがあるのです(遅すぎ?)
実は最近、ダンナと家のAsset(財産)について、弁護士を通して遺言を作ることにしたのです。
というのは、私もダンナも将来どうなるか分からないし、いざという時の手続きが少しでもラクになるように、今のうちにできる遺言書をすべて作成しておこう、ということになったのでした。
それで弁護士に相談した際、最初に聞かれたことが、アメリカ市民権を持っているか?でした。
私はちょうど市民権のインタビューを終えたところだったのですが、相続するときはアメリカ市民になっていた方が良い、と言われました。
私たちはジョイント・アカウントなので夫婦間の財産の持ち分については、半分ずつということになります。
しかしもし仮にどちらかに何か起こった場合、例えば私が亡くなった場合、アメリカ人のダンナはそのまま私の持ち分1/2が相続されます。
しかし、もしダンナが亡くなった場合、市民権を持たない私はダンナから受け継がれる1/2の財産に対してかなりの税金を支払わなければならないそうです。
(追記です。もし相手が生命保険に加入している場合、その受け取り金にも市民権を持たない場合は同じく税金がかかるそうです。我が家も、お互いに同額の生命保険に加入しています。)
これはフェアではない、というのが弁護士の言い分です。
確かに同じくアメリカで生活している立場である側からすれば、もっともなことです。
このようなことも考えると、今回やはり私も市民権を取得して良かったのかな、と思いました。
市民権取得の利点、または不利な点もいろいろあるかもしれませんが、一応一つの情報としてシェアさせてもらいました。
最期に先日Hマートで買ってきたコーンドッグ👽
魚のすり身がベースになっていて、中に2種類のチーズとソーセージが入っているのです。
なかなか美味しかったです。これはまた買うかもしれません。