理佐ってああ見えて、実は結構子供っぽいところがあったりする。


 

恋人同士だって言っても、私たちはどちらも女の子だしなんだかんだ世間的に見れば異端者なんだって。

そんなの、関係を必死に隠さなくちゃいけない時点でもはや分かりきっていたことなのに。


 

私のちょっとした行動に腹立てたのち、怒りの矛先が私に向くなんてことも何度か経験した。


 

だって、お仕事なんだもん。

しょうがないはずなのに。


 

私たちの所属している欅坂は女性アイドルグループなんだから、他の女の子と一緒になるなんてざらもざら。

遠征先で他の子と丸一日を一緒にすることはおろか、寝るときだって一緒の部屋なんてことも。

 

その集合体の中でくっついてできた私たち二人には、ただ純粋にお互いを求め合うだけの毎日なんて無理だって、いの一番に念押しだってした。

理佐だってうん、分かってるよ。

って二つ返事で納得してくれて今の私たちがあるのに。

 

それなのに理佐ときたら「2期生とあまり仲良くしないようにして」

そんな子供みたいなわがままを平然と私に向かって言ってくるのだから。

きっと、そばにいないとすぐ不安になっちゃうバブリーさんみたいな心境なんだ。

 

私も似たようなもんだけど


 

そんなことをカタカタと揺れるバスの中でぼんやりと考えていた。


 

「由依さーん」


 

「ん…」


 

「なにか食べます?」


 

「いやいいよ、ありがとね」


 

隣りの通路側に座っているひかるがお菓子の箱を差し出してくる。

 

その誘いを軽く流して、斜め前の座席に視線を向ける。

 

理佐と保乃ちゃんの二人席。

 

あれだけ私には2期生と仲良くしちゃダメだなんて口にしておきながら、最近よく二人でいるのを見かける。

なんだなんだ。

理佐だって、私を不安にさせるようなことしてるじゃないか。


 

「由依さん由依さん」


 

ぼーっとその席の後ろ姿を眺めているとまたも隣りに視線を戻される。


 

「暇ならゲームでもしませんか?私最近アプリで面白いやつ見つけたんですよ!これ、由依さん好きそうだなって思って」


 

「あ、うん、ありがと。…でも今はいいかな」


 

ひかるの純粋な眼差しに一瞬、気圧されそうになるも不安が勝る。

 

たぶん、これは自惚れでも無く普通の見解。

ひかるは私のことが好きなんだろう。

 

その純粋な眼差しの奥に秘めたる想いは近くまで迫ってきてる。

 

可愛らしいとは思う。

目がくりっとしてて女の子らしくてお茶目なところもあって。

私なんかにはもったいないと思えるそんな彼女。

 

だけど私には理佐がいる。

誰よりも大好きでそばにいたいと思わせる存在がいる。

 

だから、悪いとは思いつつも引き剥がしてしまう。


 

「ごめん、ちょっと眠いから寝るね」


 

「あ…、ごめんなさい。邪魔しちゃって」


 

「…っ、ううん」


 

その眼差しは痛いくらいに私を攻撃してくる。

眠いと言った瞬間に瞳の奥が曇った。

もやもやしたまま瞼をぎゅっと閉めて眠りにつくことにした。


 

(…ごめんね、私には理佐が)


 

ゆらゆら揺れる心情とバスの中で薄い眠りは途切れる。

 

やっぱり気になって仕方がない。
 

 

理佐


 

理佐はどうなの?


 

眠りを諦めて斜め前の彼女の姿を捉える。


 

「…えっ」


 

そこには愛しい彼女が隣りの保乃ちゃんの肩によたれかかって寝る姿があった。


 

は、何??

私には仲良くしないように釘指してくるくせに、自分は思いっきり甘えてみせてるじゃん。

あんなのされたら保乃ちゃん理佐に惚れちゃうよ。

それがわかってないのかわかってるのか。

 

どちらにしても私という彼女がいるのに、その他の女の子にすることじゃない。


 

明らかにさっきあったもやもやが強くなったのを感じた。

 

おもむろに隣に置いてあった小さな手を優しく握る。

すると、うつらうつら狭間だった意識はこっちに向くこととなる。


 

「あっ…」


 

「ごめん、ちょっとだけ手貸して」


 

「…いいですよ、由依さんなら」


 

やっぱり、嫌な顔せず手を握り返してくれる。

握った手のひらからじんわり汗が滲み出る。

そこにこちらへの愛があると確信が持てた。


 

ひかるが目を閉じて肩によりかかる。

今度の私はそれを避けることなく全体重を受け止めた。


 

私って最低なやつだ。

これじゃひかるに期待させちゃうってわかってるのに…

でも理佐も同じ。


 

たぶん保乃ちゃんは理佐のことが好き。

私から見てもはっきりしてるのだから、理佐だってわかるはず。
 

だから今だけはひかるを利用させてもらう。

このもやもやが嫌な感じのまま走りたくない。

少しでも和らげてくれるならそれに手を重ねたっていいじゃないか。


 

そのままバスは揺れ続ける。

私とひかるの意識もまた、柔らかくほぐれていった。


 


 


 

目的地に着くと周りが明るくなってがやがやが意識の中に入り込んできた。

 

左手にはまだしっかりと小さな手が重ねられていた。


 

「ひかる、着いたよ」


 

「んー?ありがとうございます」


 

「よく寝てたね」


 

「由依さんのおかげでぐっすり熟睡できました」


 

にこっと目を細めて笑う彼女。

そこではっきりとした後悔。

 

ああ、私やっちゃいけないことしたんだって。

 

後悔が押し寄せる中、左手を引き剥がすように右手が引っ張られた。


 

 

え、なに


 

 

「…っ」


 

「こっちきて」


 

理佐。


 

なんだって理佐がこんなふうに強引に手を引っ張るのか。

意味もわからずされるがまま誰もいなくなった暗いバスの最後尾へと連れて行かれる。


 

「なんで、由依は」


 

「??」


 

「なんでっ…ひかるちゃんの手握ってんの!?」


 

いきなりの剣幕にびくっと身体が震える。

こんな彼女をみたことが無かった。

 

と、一瞬怯むももやもやした霧がまた心を覆う。

理佐が保乃ちゃんの肩借りて寝てたのが先でしょ!

 

便乗した私も悪いけど、先に怒るようなことしたの理佐のほうでしょ。

そんな言い分を目に込めて睨みつける。


 

すると理佐はそんな想いを全部受け取ったかのように悲しい顔を見せて俯いた。


 

「…わかってるよ、ごめんね」


 

「え?」


 

「私、この前保乃に告白されたんだ…」


 

「…っ!」


 

「それで」


 

理佐はゆっくりと話し始めた。


 

保乃ちゃんに私と付き合ってるだなんて言えなくて。

かと言ってその気持ちに答えるわけにもいかなくて。

返事をうやむやにしてるうちにどんどん迫ってくるのがわかって。


 

今日も私と隣りの席になろうと待っていたけど、先にひかるのいる席に座っちゃって。


 

なんだ…

そこまで聞いて怒りの矛先は目の前の彼女じゃなくて自分へと戻ってくる。

私のほうが先じゃないか。


 

どうせ今日も理佐は保乃ちゃんと座るだろうからって、どこか決めつけてかかってた。

そのせいで理佐の努力を無駄にしてしまっていたって。


 

今始めて気づくこととなった。


 

「由依がいなくて寂しかった」


 

「……」


 

「由依じゃなくて嫌だった」


 

「……」


 

理佐は泣いていた。

初めて見るその姿に申し訳なくなって同じように涙が溢れてきた。

 

バカ、なんで私が泣いてんだよ

頬に垂れる雫を強引に拭った。


 

私は嫌だなんて思えなくて、理佐が保乃ちゃんと一緒にいるのがただ嫌で。

ただ純粋に自分を求めてくれるひかるちゃんの温度が心地よくて。

その心地よさに弱い自分が折れちゃってた。


 

子供っぽいのは自分のほうじゃないか。

 

ひかるにも謝らなくちゃ。

 

 

それで根本的な問題は…


 

「理佐」


 

「…ん」


 

「もう付き合ってること言っちゃおう」


 

「え?いいの?」


 

「だって保乃ちゃんに誤解させたままじゃ悪いでしょ」


 

私のほうもそうだ。

ひかるにもはっきり言わなくちゃ。

理佐と付き合ってるって。

 

じゃないとひかるに嫌な想いさせちゃうことになるから。


 

「私は理佐と付き合ってる」

 

 

「…うん」


 

「だから、ずっとそばにいたい」


 

「私も由依と一緒にいたい」


 

「だから、…今度からは私と一緒に座ってくれる?」


 

「もちろん」


 

今度は私が理佐の手を握る。

ぎゅって


 

ひかるとは違う。

理佐の理佐だけの温度がそこにはあって、やっぱり私はここなんだって。

こんな簡単なことなのになんで行き違いができちゃうんだろう。


 

恋って不思議だ。


 

「ねぇ、座ろ?」


 

「うん」


 

もうみんな誰も乗ってないバスの最後尾の右端で私たちは肩を寄せ合う。

はたからみたら馬鹿らしいけど、幸せな気持ち。


 

「理佐そっち狭くない?」


 

「ううん、もっと寄って」


 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手の


 

 

 

 

 

 

 

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約半年ぶりの投稿となりました(笑)←

 

マーブルさんからのリクエストでりさぽんリアパロ

理佐は保乃ちゃんとゆいぽんはるんちゃんと仲良くなってしまって

お互いに嫉妬してしまうというお題でしたー(*^^*)

 

もう本当に、遅くなってしまって申し訳ない(._.)

 

 

それに久しぶりに描いたので完成度激ヤバだと思います。

 

りさぽんってこんなに難しかったっけって感じです。