糖尿病治療薬とすい臓がんの奇妙な関係 | 感慨深々

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医学教育の現場から見た本音をROPPONGIから発信!
臨床教育で重要なものは技術か?
それともその技を使う心か?
は、過去の話題。
これからは日本の医療を外から眺めた場合の問題点とその解決を述べてみます。

昔から疑われてきた糖尿病治療薬とすい臓がん発生率の関係は臨床医の注目度が高く,多くの研究成果が待たれるテーマの1つです。
糖尿病あるいは糖尿病治療薬ががんの発生にどのような関連があるか?
でしたが
やっと待たれていた、英国のデータを用いた大規模症例対照研究(スイス・バーゼル大学のMichael Bodmer氏らAm J Gastroenterol 2012年1月31日オンライン版Am J Gastroenterol 2012年1月31日オンライン版)が発表されました。

発表された注目ポイントは糖尿病治療薬メトホルミンの膵臓がん抑制効果が女性でのみリスク低減という結果です。
この研究は1995~2009年に膵臓がんと新規に診断された2,763例を,年齢,性,かかりつけ医,Index date(がん診断日),一般診療,Index date以前のGPRDのアクティブヒストリーの年数が一致した6人(合計1万6,578人中)と比較したユニークな研究です。もちろん初期解析では,膵臓がんの潜伏期間を考慮し,Index dateを2年間さかのぼって分析しています。BMI,喫煙,飲酒,糖尿病罹患歴を含む潜在的な交絡因子については,多変量ロジスティック分析を用い調整したようです。

 症例の平均年齢は69.5歳±11.0歳で,46%が男性だった。現在の喫煙で膵臓がんの調整後オッズ比は1.75に上昇したが,BMI,飲酒,心血管疾患の既往,アスピリン,非ステロイド抗炎症薬(NSAID),スタチン,エストロゲンの使用との関連はないとの報告。
膵臓がんの調整後オッズ比は,メトホルミン非使用と比べ,メトホルミン短期処方(1~9処方)で1.01(95%CI 0.67~1.54),中期処方(10~29処方)で0.92(同0.62~1.35),長期処方(30以上処方)で0.87(同0.59~1.29)と,有意差はなく糖尿病患者に限って分析した場合も結果は同様だった模様。

ところが,性別で見ると,長期処方により女性では調整後オッズ比0.43(同0.23~0.80)と有意なリスク低下を示しましたが,男性では1.59(同0.95~2.66)と有意差が求められない結果に。

すい臓がん発症が何故男女でこの開きがあるのかすい臓とホルモンの関係がより不思議に見えてきました。