それはまるで信号のようで。
私に危ない瞬間、良い瞬間を教えてくれた。

なるべく逸れないように、迷ってしまわぬように、丁寧に標識や看板をつけてくれた。


小さな頃からそう見守られて生きていて、
ダメな事もしっかりわかっていた。


誰に笑われても、貶されても、罵られても。



私は私の道を行く。
そんな幼少期。


でもある時、大きな疑問を持った。


「赤信号は渡ったらどうなるのか」


逆らってみたくなる。
そんな時期だったんだと思う。


だって、どれだけ同じ道を歩いてもみんなと一緒のはずなのにいつも1人だったから。


そうして私は踏み込んだ。
確かに危ない音がした。


何かに弾かれて、気付いて起きたら全く知らない土地で。


心地が良かった。


知らない人達が「大丈夫?」と手を差し伸べてきて。
暖かい食事、暖かい布団。
全てが用意されて、ここが私の居場所だと思った。

私を規制する信号機も、標識も看板も無かった。
どこを歩いても、何をしても良かった。






...それは、大きな勘違いだった。


夜が近付くにつれ、大きな怪物が私のベッドに入り込んできた。
唸り声を上げ、影が私を覆った。
髪を毟られ、肌を破られ、足を引っ張られた。
ずっとずっと逆らえなかった。



毎晩その繰り返しで、とうとうボロボロになった。



逃げ出した。
走って、走って。
その後何度も捕まったけれど、馬鹿なあいつは部屋の鍵を閉めないから。

何度でも逃げた。



そして見覚えのある信号機。

後ろを見ると奴はもう追ってきてはいなかった。





道大きく外れた。
「どこにいたの?」

そう信号機が私に問いかけるから、
「少し旅に出ていた。まっさらな土地は心地よかったけれど、幸せにはなれなかった。」
そう告げた。



信号機は何も言わずに青に変わった。







私の目の前には、標識、看板。
次の道を示していた。