映画にもなった有名作。
「感動大作」だとか、「泣ける」とかいう評判でしたが、
個人的には泣きもせず、「感動」とも違った印象でした。
もちろん良い意味で。

殺人犯の家族に対する差別。
普通に書けば、メッセージ性が前面に出たり、
「差別はいけない!」といった感じの作品になるのではないかと思います。
しかしながら本作は、比較的淡々と話が進んでいきます。
そのせいか、様々な登場人物に感情移入できました。
差別される側である主人公や、彼を支える恋人だけではなく、
差別を行う側の人間に対しても。
人間社会は単純な善悪で割り切れる物ではないですし、
そもそも善悪そのものの定義も人によって違います。
だからこそこの手の話はメッセージ性(独りよがり的な)が強くなり勝ちだと思いますし、
だからこそ敢えて(と勝手に解釈しますが)淡々と描いたこの作品は、
色んな人が共感できたんじゃないかと思います。

ちょっとラストが綺麗にまとまりすぎてる気がしますが、
いろいろ考えさせられて、非常に面白い、読み応えのある作品でした。
「差別は当然なんだよ」と書けば、普通はいわゆる悪役の言葉です。
それが単なる悪役の言葉に終わっていないところが、人の深さであり、
この作品の深さであると思います。