国鉄時代、車扱貨物の中でも特に輸送量が多かったのが石油、石炭、石灰石、セメント輸送で、この4品目は4セと呼ばれていました。そんな4セの現状を考察します。
(EF65 2139・岡部〜本庄・2016年8月9日)
現在一番輸送量、列車本数が多いのは石油輸送列車です。日本石油輸送と日本オイルターミナルが荷主で、港に隣接した製油所から内陸部の中継所がある駅へ石油輸送列車を運行しています。
(EH200-20・蘇我・2010年12月25日)
現在は以下の列車が運行されています。
仙台北港〜陸前山王〜盛岡貨物ターミナル・郡山
北袖・甲子・浜五井・千葉貨物〜郡山・宇都宮貨物ターミナル・倉賀野・南松本
浮島町・根岸〜川崎貨物〜宇都宮貨物ターミナル・倉賀野
根岸〜宇都宮貨物ターミナル・倉賀野・八王子・竜王・坂城
塩浜〜四日市〜南松本
かつては米軍や航空自衛隊の基地への石油輸送列車も数多く運行されていましたが、現在は米軍横田基地向けの「米タン」が安善〜拝島間で運行されるのみとなっています。
(EF65 2127・拝島・2017年4月5日)
セメント輸送列車はセメント工場で生産したセメントをバラ積みで出荷するための列車ですが、現在残っているのは1系統のみです。
(DD51 1801・富田浜〜四日市・2016年7月10日)
三岐鉄道の東藤原駅から関西本線四日市駅までの列車が運行されています。関西本線富田〜四日市間では今や貴重になったDD51形が牽引しています。
石灰石輸送列車は鉱山から製鉄所やセメント工場まで運行する列車です。石灰石輸送列車も減少して現在は2系統のみとなりました。
(EF210-173・清洲・2017年4月3日)
西濃鉄道乙女坂駅にある矢橋工業赤坂事業部の石灰石をホッパ車に積載し、東海道本線美濃赤坂〜笠寺間を経由して名古屋臨海鉄道の東港駅まで運行しています。
そして新日鐵住金名古屋製鐵所内にある矢橋工業名古屋事業所で石灰石を降ろし、生石灰を製造して新日鐵住金に納入しています。
秩父鉄道にも石灰石輸送列車が走っています。
(デキ506・武川・2016年6月27日)
影森駅と武州原谷駅で積み込んだ石灰石を、秩父鉄道三ヶ尻線(貨物線)の三ヶ尻駅に隣接した太平洋セメント熊谷工場まで輸送しています。
石炭輸送列車といえば、かつて北海道や九州の炭鉱から港まで多数運行されていましたが、炭鉱の閉山によって廃止されました。現在炭鉱から港まで石炭を輸送しているのは太平洋石炭販売輸送臨港線だけです。
(DE601・春採・2009年8月8日)
釧路コールマイン(旧・太平洋炭礦)の海底炭鉱から採掘した石炭を春採駅から知人駅まで輸送していますが、運行本数は太平洋炭礦時代からはかなり少なくなっているようです。
実は関東にも石炭輸送列車が走っています。もっとも炭鉱から採掘された石炭ではなく、輸入した石炭(コークス)を鶴見線扇町駅から熊谷貨物ターミナルを経て秩父鉄道三ヶ尻駅に運ぶ列車です。JR線内は20両編成ですが、秩父鉄道線内では10両編成2本に分解して、2往復の列車に仕立てています。
(デキ302・三ヶ尻〜武川・2008年3月23日)
秩父鉄道内の運行形態もちょっと変わっていて、熊谷貨物ターミナルを出発した後、一旦三ヶ尻駅を通りすぎて武川駅まで向かいます。そして武川駅から折り返して三ヶ尻駅に到着。その後荷役をします。どうやら三ヶ尻駅の構内配線が関係している様です。
返空列車は三ヶ尻駅から直接熊谷貨物ターミナルに向かいます。そして20両編成に仕立ててJR線を扇町駅に向かいます。
かつて車扱輸送の代表格だった4セですが、大幅に縮小されてしまいました。それでもコンテナ列車ばかりの中で異彩を放つ専用貨物列車は見ていて楽しいものです。