
(「のぞみ」724-9・浜松・2010年2月28日)
では、その動力分散方式って何のことだろうって思う人もいるかと思います。そこで、ここではそんな鉄道の基礎知識について、できるだけわかりやすく解説したいと思います。
ということで、早速動力分散方式とはなんのことかという話なのです。
列車を走らせるためには動力車が必要不可欠です。動力車とは鉄道や自動車の起源ともいえる馬車でいうところの馬の役割です。この動力車が編成内に分散して配置するものを動力分散方式といいます。たとえばN700系16両編成ならば、16両中14両が動力車です。
動力分散方式に対して、機関車が編成を牽引する方式を動力集中方式といいます。前述したように馬車を起源としているわけですから、鉄道も最初は客車や貨車を機関車が牽引することを基本としていたわけです。

(「SLばんえつ物語」C57 180・会津若松~堂島・2007年8月26日)
牽引される客車や貨車は動力を持たない、いわゆるトレーラーです。

(オハフ33 2231・日暮里)

(コキフ10000・札幌貨物ターミナル・1980年7月)
機関車は客車や貨車を牽引する力が必要になります。それが長編成だったり、重量編成だったり、さらに高速運転をするとなると、より強力な動力性能が求められます。それから重い列車を牽引するためには、駆動力を無駄なく使う必要がありますので、車輪が空転(スリップ)して駆動力をロスしないようにする必要がありますので、ある程度車輪に重さをかける、つまり軸重を増やす必要もあります。

(EF64 1026・八色~小出)
しかし、軸重を増やすということは、線路や路盤、高架橋などへの重量的負担=軌道攻撃力が大きくなり、建設費も高くなります。列車のスピードが上がればなおさら軌道への攻撃力は高まるため、頑強な線路、高架橋が必要になります。
そこで、編成に必要な出力=編成出力を複数の動力車に分散させることで、動力車個々の軽量化を図って、軸重を軽減させたのが動力分散方式です。
動力車1両単位の重量は軽くできますので、線路への負担も減るというメリットがあります。

(クハ111・早川~根府川)
たとえばEF58が牽引する「つばめ」の編成出力は1,900kW、最大軸重は19.1t(EF58の重量は115t)となりますが、151系電車「つばめ」では12両編成6M6Tで編成出力2,400kW、最大軸重は9.45t(モハ151の重量37.8t)となるわけです。その分設備投資が安くできるというメリットがあります。
かつて電車は長距離運転に不向きで、騒音が大きいなどの意見がありましたが、それらの懸念材料を解決した国鉄が東海道新幹線に電車を導入したというのも、先見の明があったのかもしれないですね。
いずれにしても動力分散方式が日本の鉄道を支えていることは間違いありませんね。