技術のデパートだった小田急3000形SE車 | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

1957年に登場した小田急3000形(初代)。
Super Expressの頭文字を採ってSE車と呼ばれ、小田急ロマンスカーの代名詞として人気を博しました。そしてエンドレステープによるミュージックホーンを搭載したSE車は「ピポー電車」とも呼ばれ、ザ・ピーナッツが謳う流行歌も誕生しています。さらに鉄道友の会による「ブルーリボン賞」創設のきっかけとなり、初代ブルーリボン賞受賞車となりました。
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このSE車ですが、小田急が新宿~小田原間を60分で結ぶという目標の下、高速電車の開発に着手していた国鉄との共同で開発。さらに日本車輌製造、川崎車輛、近畿車輛、東洋電機製造、東京芝浦電機、三菱電機による新技術がふんだんに盛り込まれました。それらの新技術は国鉄の特急形電車や新幹線に活かされたものも数多くあります。

車体の製造は日本車輌製造と川崎車輛が担当。軽量化のため日本鋼管が開発した1.2mm圧の耐蝕鋼板を使用した張殻構造を採用。また航空技術を応用して台枠から中梁を廃止し、波板で縦方向の圧縮強度を確保。床構造もハニカム構造としています。
低重心化のために床面高さは875mmとされました。ただし台車部分は1,000mmなので、車端部には段差とスロープが設置されています。
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回転式クロスシートも徹底的に軽量化され、当時としては画期的な33kgという軽量シートとなっています。

先頭部形状は当時の技術の限界だった円筒曲面ガラスを使用することを条件として、風洞実験を行ない、形状抵抗係数0.24(国鉄80系が0.64)を実現。また鉄道車両として初めてシールドビームを採用しました。
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当時は自動車用24Vのライトを採用。なお復元車のシールドビームは原形と異なります。

主電動機は東京電機製造のTDK806/1-A形。駆動装置も東洋電機製造が開発した中空軸平行カルダン駆動が採用されました。
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主電動機の出力は100kWで、箱根登山鉄道乗り入れ時の低速急勾配登坂対策で、冷却方式は強制通風式となっています。
中空軸平行カルダン駆動は国鉄新性能電車でお馴染みとなった駆動方式です。

主制御器は発電ブレーキ付電動カム軸抵抗制御方式で東京芝浦電機MM-50A形を採用。枕木方向に配置しているのが特徴です。
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超多段制御の主制御器としては当時最軽量を誇っていたようです。1基の主制御器で4基の主電動機を制御する1C4M方式で、この4基の主電動機は永久直列接続となっていました。

ブレーキは発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキ、HSC-Dを採用。また日本の鉄道車両で初めてディスクブレーキを採用。ブレーキの開発は三菱電機が担当しました。
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ディスクブレーキは国鉄の優等列車用電車や新幹線にも採用され、高速化に寄与しました。

SE車は8車体9台車という連接構造を採用。台車の開発は近畿車輛が担当。電動台車は軸距2,200mmのKD17形を装着しました。
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付随台車は軸距2,000mmのKD-18形で、車輪径はΦ840mmとされ低重心化が図られています。

台車も徹底的な軽量化を目指し、軸箱支持方式は円筒案内方式の一種であるシュリーレン式を採用することとしました。
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近畿車輛が選ばれたのは当時シュリーレン式の実績があったからです。

このようにして開発されたSE車は、国鉄東海道本線での高速度試験で145km/hを記録。国鉄151系や新幹線0系開発へのデータを提供しました。

当時SE車は寿命10年程度と想定して開発され、後継車となる前面展望室付の3100形NSE車の登場でエースの座は譲りました。しかし引退とはならずに御殿場線電化に伴って5車体に短縮大改造されたSSE車となり、想定を遙かに上回り長期間活躍。
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1991年に「あさぎり」の後継車20000形RSE車に置き換えられてSE車は引退しましたが、3021×5両編成が保存されることになり、デハ3021の先頭部を原形復帰、デハ3022とともに塗色も原色に戻された状態で海老名検車区で保存されています。
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新幹線0系は機械遺産に認定されていますが、そのルーツとも言えるSE車もぜひ機械遺産に認定してもらいたいものです。