GSIクレオスが発売しているMr.カラーには、いくつか欠番になっているカラーがある。なぜ欠番になったのか、公式的には理由は示されていないが、理由が推察できるものがある。それについて述べていきたい。

C24 スカイ

第2次世界大戦当時、英空軍機に使用されていた色で、正式名称はSky Type S。これは簡単で、以前はダックエッググリーンとは違う色とされてきたスカイが、実際は同じ色だったというのが理由である。そこでC24スカイC26ダックエッググリーンに統合され、C26の名称は現在ダックエッググリーン(スカイ)となっている。

ところで、C26ダックエッググリーン(スカイ)に対応する水性ホビーカラーのH74は、なぜかスカイ(ダックエッググリーン)という名前で、カッコの内と外が逆になっている。

C24 スカイ(レベルカラー)

C53 ライトカーキ(バフ)

カラーチャートを見てわかる通り、C51~C54はフィギュア関連のカラーを集めている。具体的には次の通り。

  • C51 薄茶色 [旧名:肌色]:基本色・フィギュア
  • C52 フィールドグレー2 (オリーブグレー):ドイツ陸軍軍服色
  • C53 ライトカーキ(バフ):[欠番]
  • C54 カーキグリーン:米陸軍軍服色
  • C55 カーキ:日本・英陸軍軍服色

C53ライトカーキ(バフ)は米海軍パイロットの軍服の色で、欠番になっているのは、他の色と比べて需要が低かったからだと思われる。他の色は陸軍の軍服の色でミリタリーモデルを中心として使用頻度が高いが、戦闘機に乗せるパイロットにしか使わない色は需要が低すぎたのだろう。ライトカーキは、C1ホワイトC55カーキを少量混ぜればそれらしい色になる。

C82~C89, C91, C93~C96, C98~C99 鉄道車両用カラー

C81~C99は鉄道車両用のカラーがあったところで、使用頻度の高い数色を残して欠番となった。欠番となったカラーは、現在グリーンマックスから「鉄道カラー」という名称で出ている。これらのカラーに関する裏話はnippper.comの「プラモデルを塗るために、赤い彗星のシャアが遺した色/GSIクレオスの「あずき色」をめぐる物語。」という記事に詳しいので、参照されたい。欠番にならず生き残ったのは、C81あずき色(赤2号)C90シャインシルバーC92セミグロスブラックおよびC97灰色9号である。

C92セミグロスブラックとC97灰色9号

番外:水性ホビーカラーに入らなかった色

水性ホビーカラーが発売されたときに、Mr.カラーにある色は(番号は変わるにしても)すべて取り込むという方針だったと考えられるが、なぜか水性ホビーカラーには入らなかった色がある。ここでは、それらについて見ていこう。なお、Mr.カラーがC102スモークブルーまでしかなかった時代の話なので、それ以降に追加されたものが入っていないのは当然である。また、色名は基本的に水性ホビーカラー発売当時のMr.カラーのものが残っているので、その後の改名は反映されていない。

C19サンディブラウンC20ライトブルーは、ドイツ空軍機色となっているが、そもそも対応するRLM番号がない。これらの色は資料の少なかった時代に作られたもので、おそらく実物の色と違いが大きかったのだろう。水性ホビーカラーには、これらに相当するものとして、RLM79サンディブラウンがH66として、RLM65ライトブルーがH67として、それぞれ入っている。

H66 サンドイエロー、H67 ライトブルー

C56明灰緑色(中島系)は、かつてはH62明灰白色(2)に対応するものとされてきたが、現在は対応関係から外されている(カラーチャートでは2021→2022で変更)。これは、日本陸軍機用とされてきたこの色を、中島系により近い色として、色味が変えられた(?)のだと考えられる(が詳細は不明)。アクリジョンのN62とは対応関係が維持されている。

C70ダークグリーンはドイツ陸軍戦車色であるが、同じ戦車色のC39ダークイエロー(サンディイエロー)がH79に、C40ジャーマングレー(フィールドグレー1)がH32に、C41レッドブラウンがH47に、それぞれ入っているのに、これだけは入っていない。戦車には詳しくないので、理由はよくわからない。

C74エアスペリオリティブルーは、そもそも試作段階のF-15イーグルに使われていたものである。これが入らなかったのは、F-15の制式化以後はゴーストグレー2色迷彩に代わってしまったため、使いどころがなくなったからだと考えられる。

鉄道用のカラーの生き残り4色のうち、水性ホビーカラーにはC81あずき色(赤2号)がH33として入ったが、その他の色は出ていない。C90シャインシルバーについては、水性でのシルバーの表現上、H8シルバーとは違ったギラギラのシルバーを作るのが難しかったのだろう。C92セミグロスブラックが水性ホビーカラーに入らなかった理由はよくわからない。なお、nippper.comの記事「これが至高のセミグロスブラックだ!!「水性ブラックサーフェイサー1000」」では、ブラックサーフェイサーをセミグロスブラックとして使う方法が推奨されている。C97灰色9号については……そもそも、この色はどこに使うんですか?

H33 あずき色水性ブラックサーフェイサー1000

海上自衛隊が運用する航空機の塗装については、「海上自衛隊の使用する航空機の分類等及び塗粧標準等に関する達」 (昭和37年12月24日 海上自衛隊達第119号、本記事執筆時現在の最新版は第75次改正 平成29年12月13日) で規定されている。(改正が多いのは、機種の追加・削除、新塗装パターンの規定が入るたびに改定するからの模様。多いときは年に2回も改正されている。)

なお、海自では「塗装」ではなく「塗粧」という用語を用いる。古くからそうなっているらしい。150年の伝統を誇る海自ではありそうなことである。

海上自衛隊機の塗色指定方式

ここで、P-3Cを例に、塗色指定を見てみよう。

 

UP-3C写真

図1: UP-3C

 

次にP-3Cの現在の塗粧 (全面ライトガルグレー) についての規定を示す。

 

UP-3C塗装図

図2: P-3Cの塗装図

 

色番号の指定部分を取り出して表にしてみる。

 

表1: P-3C塗色規定
塗装箇所 色名 色番号
全体色 ライト・グレイ NO. 16440
日の丸 インシグニア・レッド
インシグニア・ホワイト
NO. 11136
NO. 17925
文字 ブラック NO. 37038
ウォークウェイ ダーク・ガル・グレイ
ブラック
NO. 36231
NO. 17038
アンチグレアエリア ダーク・ガル・グレイ NO. 36231

 

色番号が5桁の数字になっているのがわかる。これは (文書のどこにも、そうだとは書いていないが) Federal Standard 595 (FED-STD-595。現在はAMS-STD-595; AMS = Aerospace Material Specifications) の番号 (いわゆるFS番号) であり、軍用機の色指定としては一般的なものである。

 

次にUP-3Cの現在の塗粧 (胴体上面ホワイト、胴体下面・翼部ライトガルグレー) についての規定を示す。これはP-3Cの以前の塗粧と同様のものである。

 

P-3C塗装図

図3: UP-3Cの塗装図

 

色番号の指定部分を取り出して表にしてみる。

 

表2: UP-3C塗色規定
塗装箇所 色名 色番号
全体色 ライト・グレイ No. 620
胴体上部 インシグニア・ホワイト No. 511
日の丸 インシグニア・レッド
インシグニア・ホワイト
No. 509
No. 511
文字 ブラック No. 515
ウォークウェイ ダーク・ガル・グレイ
ブラック
No. 621
No. 515
ピトーブーム ブライト・レッド
インシグニア・ホワイト
No. 619
No. 511
センターライン インシグニア・レッド No. 509

 

色番号が、500番台・600番台の3桁数字になっている。この番号の意味は (これまた、文書のどこにも、そうだとは書いていないが)、なんと1943年に ANA Bulletin No. 157 及び No. 166 (ANAは Army-Navy Aeronautical の略で、陸海軍で航空機に関する規格を統一したもの) として規定されたANA番号で、1956年に FED-STD-595 に引き継がれたものである。80年近く前に規定され、60年以上前に新規格に置き換えられたものを、いまだに使っているのは珍しい。

P-3CとUP-3CでFS/ANAの指定が変わっているのは、どうも、旧機種は従来のANA番号で、新規の規定からはFS番号でということらしい。いつ切り替えたかは不明。

ANA規格で色指定していたということは、当然ANA規格の色見本を持っていたからだろう。この60年以上、新規では入手できないものを使っているとは、物持ちのいい人たちだ。FS規格では、ANA規格で決まっていたものと同等の色が用意されているはずだが、微妙な色調の違いはあったらしい。Mr.カラーのガルグレーやエアクラフトグレーがFS規格よりANA規格に近いと言われるのは、海自の色見本を使用したからかもしれない。

自衛隊での一般的な塗色指定方式

なお、一般的な塗色については、防衛省規格 標準色 (NDS Z 8201E)で規定された4桁番号があり、色自体はマンセル値で規定されていて、艦船ではそれに従った色指定がなされている。航空自衛隊については、塗装標準に関する文書が公開されていないらしく、今回のような考察は困難である (が、まあFS番号を使っているのだろう)。

ちなみに、防衛省規格を使用したMr.カラーの色表示例を示す。海自色の括弧内はマンセル値 (N4およびN5は、白と黒だけを混ぜた完全なグレー)。

 

表3: Mr.カラーでの防衛省規格指定
No. 色名 説明
C516 濃緑色3414 陸上自衛隊戦車色
C517 茶色3606 陸上自衛隊戦車色
C518 OD色2314 陸上自衛隊戦車色
C607 灰色2704 (N5) 海上自衛隊護衛艦色
C608 灰色2705 (N4) 海上自衛隊護衛艦色

これは、タミヤから公開されているタミヤカラー互換表のうち、 エアーモデルスプレーに対するラッカー塗料の互換表をテキスト化したものです。 PDFファイルが扱いにくいのでテキストにしただけで、新しい情報は何も加えておりません。

ただし、次の点については、ご注意ください。

  • 目についた限りの誤記を修正しました。特に「グレイ」の英語表記についてはGreyとGrayとが混在していたため、Grayに統一しました。
表1:タミヤカラー互換表 (AS)
No. AS色名 (日本語) AS色名 (英語) LP No. LP色名 (日本語) LP色名 (英語)
AS-1 暗緑色 Dark Green (IJN)    
AS-2 明灰白色 Light Gray (IJN) LP-32 明灰白色 (日本海軍) Light Gray (IJN)
AS-3 グレイグリーン Gray Green (Luftwaffe)    
AS-4 グレイバイオレット Gray Violet (Luftwaffe)    
AS-5 ライトブルー Light Blue (Luftwaffe)    
AS-6 オリーブドラブ Olive Drab (USAAF)    
AS-7 ニュートラルグレイ Neutral Gray (USAAF)    
AS-8 ネービーブルー Navy Blue (US Navy)    
AS-9 ダークグリーン Dark Green (RAF)    
AS-10 オーシャングレイ Ocean Gray (RAF)    
AS-11 ミディアムシーグレイ Medium Sea Gray (RAF)    
AS-12 シルバーメタル Bare-Meral Silver    
AS-13 グリーン Green (USAF)    
AS-14 オリーブグリーン Olive Green (USAF)    
AS-15 タン Tan (USAF)    
AS-16 ライトグレイ Light Gray (USAF) LP-34 ライトグレイ Light Gray
AS-17 濃緑色 Dark Green (IJA)    
AS-18 明灰緑色 Light Gray (IJA)    
AS-19 インターミディエイトブルー Intermediate Blue (US Navy)    
AS-20 インシグニアホワイト Insignia White (US Navy) LP-35 インシグニアホワイト Insignia White
AS-21 暗緑色2 (日本海軍) Dark Green 2 LP-31 暗緑色2 (日本海軍) Dark Green 2 (IJN)
AS-22 ダークアース Dark Earth    
AS-23 ライトグリーン (ドイツ空軍) Light Green (Luftwaffe)    
AS-24 ダークグリーン (ドイツ空軍) Dark Green (Luftwaffe)    
AS-25 ダークゴーストグレイ Dark Ghost Gray LP-36 ダークゴーストグレイ Dark Ghost Gray
AS-26 ライトゴーストグレイ Light Ghost Gray LP-37 ライトゴーストグレイ Light Ghost Gray
AS-27 ガンシップグレイ2 Gunship Gray 2    
AS-28 ミディアムグレイ Medium Gray    
AS-29 灰緑色 (日本海軍) Gray Green (IJN) LP-33 灰緑色 (日本海軍) Gray Green (IJN)
AS-30 ダークグリーン2 (イギリス空軍) Dark Green 2 (RAF)    
AS-31 オーシャングレイ2 (イギリス空軍) Ocean Gray 2 (RAF)    
AS-32 ミディアムシーグレイ2 (イギリス空軍) Medium Sea Gray 2 (RAF)