41人の優しい女性たちよ、ほんとにほんとにありがとう | 温井ちまき ブログ

温井ちまき ブログ

ワシントンDC在住。米国のコンシューマー、ビジネス、ソーシャルトレンドをメインに日本のメディアに記事を書いてきました。現在は卵子提供によって産まれた3人の子供の子育て中。

昨日、皆さんも多分ご存知のように、
「卵子提供ボランティア募集へ=不妊女性にあっせんー民間団体」
という報道があった。

私は、ある事情でこの報道には特に驚かなかったのだけど、無事発表までこぎつけてよかった。そっりゃあ色々モメたでしょうから(笑)。

ただし、早発閉経、ターナー症候群の女性対象ということで、高齢が原因とされる私のような不妊症には適用されない。対象となる女性が日本に一体何人いるのか知らないけれど、不妊女性のうち最も人数が多いのは高齢女性で、なのにそういう人たちには一切関係ない話だ。だから、私としては、彼女達がどう思うだろうかと考えると素直には喜べず、「どうなんだろなー」と複雑な気持ちになった。

でも、「する」のと「しない」のには大きな違いがある。なにしろ正反対なんだから!

これまでずーーーーーーーっと日本では「禁止」「やらない」という方向だった。日本はとにかくあらゆることにおいて「変化」というものを好まないし苦手で、違うことをしようとする人は徹底的に叩く。この方向が変わることは私の人生においてはないだろうと、そのくらいは考えていた。なので、非常に狭い範囲の中ではあっても「する」となったのは、日本社会にとってはものすごく大きな一歩になったと思えた。

ただ、さらによく記事を読んでみるとドナーは無償ボランティアということなので、再び「どうなんだろなー」と・・・。ていうか、「こりゃうまくいかんじゃろ」と・・・。それは、ドナーをすることがどれだけ大変か、わかっているから。

卵子提供を受けたことのある女性ならわかってもらえると思うが、卵子提供は、高い。ドナーへの謝礼も、高い。とってもとっても高い。カップルによっては年収数年分にもなる。さらに、日本に住んでいたら海外まで行かないとその機会すらない。渡航、滞在費はもちろん自己負担だ。「どうしてこんなに高いんだろう」「もっと安くできたらいいのいのに」と思う。当たり前だ。私だってずっとそう思っていた。

でもその一方で、私たちは自分が不妊治療を行っていく過程で、どれだけ治療が精神的・肉体的・時間的に辛く大変なことか深く理解している。だからこれほどまでに大変なことをして卵子を提供してくれるドナーへ、謝礼という意味でも、治療中の生活を支えるという意味でも、お金を払うのは「当たり前」のことなのだ。

が、今回のボランティアは「こんなに大変なことを長期にわたってやらなければならないのに、無償」なんで、フツーに考えたら、そんなことしたい人いないじゃろ。記事には、「1年の間に無償での提供者が十分現れなかった場合、有償で提供を受けることも検討」と書いてあるが、どうせそうなるだろうと考えた。で、そのまま昨日は寝た(笑)。

さて、今日になってニュースを読んでみたところ、驚くべきことが起こっていた。

なんとまあ、『ファクスで5件、メールで36件、「自分の卵子を提供したい」との申し込みがあった。』というじゃありませんか!読売新聞の記事の、『メールでは「不妊に長く悩んだので気持ちはよく分かる。力になりたい」などの声が寄せられている。』というところを読んで私は泣きました。

これからドナーとして適性があるかどうか、その41人の女性にはスクリーニングが行われるんだろう。すべて経産婦ということなので、その段階でかなりドナーとしては条件がよいとは思うが、年齢が若いというだけで実際に使える卵子が提供できるとは限らないし、無事提供できたとしても、妊娠、出産に至るとは限らない。

また、申し込んだ人は、ドナーをすることがどれだけ(色んな意味で)リスクがあるか解っているかは定かではない。「そんなことまでしないといけないと思わなかった」「だったらできない」「夫の反対を押し切ってすることはできない」「面倒なんでやーめた」という人が出てきても全然おかしくない。だから、41人のうち実際にはどれだけ登録にこぎつけるのかは、もうまったくわからない。

でも。

それでも。

初日だけで41人もの女性が協力を申し出てくれたなんて、私はほんとに嬉しい。41人の優しい女性のおかげで、わざわざ海外に行って卵子提供をしなければならないカップルが減るのだ。色んな意味で負担が軽減される。それがどれだけありがたいことか!それに、この41人のおかげで赤ちゃんを抱っこできるカップルが増えるかもしれないのだ。

どこかで会ったりする機会があったら直接感謝の気持ちを伝えたいくらいなのだが、誰だか知らないんで(笑)、ここで私なりの感謝の気持ちを伝えたい。

41人の優しい女性たちよ、ほんとに、ほんとに、ありがとう。