ねえシンデレラ、たったひと晩の夢は楽しかった?
一度だけ、ほんの一瞬だけ触れ合った掌の熱が少女を恋に落とした。
『Cendrillon』
あなたのところに舞い込んだ招待状。
それは12時を過ぎてもとけない魔法がかかった舞踏会への誘いだった。
「もう一度彼に逢いたいの」
そう願ったのは、15歳の少女だった。
あの夜、初めて会った彼に、ただ一目、逢いたいのだと。
真摯な彼女の願いに胸を打たれたあなたは、彼女の手を取った。
東京都郊外にある“時和市”では、とある噂がまことしやかに囁かれていた。
それは、午前零時になるとどこからともなく鐘の音が聞こえ、少女がいなくなるという噂。
現場と思しき場所には決まって硝子の欠片が落ちており、まるでシンデレラの物語のようだという。
〈大法典〉から事態の収束を命じられた魔法使いたちは、歪んでしまった御伽噺に終止符を打つため時和市に足を踏み入れるのだった――。