原子力発電所は、「トイレのない高層マンション」と比喩されるように、原子力発電所で使われた後の使用済み放射性物質の廃棄方法が、現時点ではない。使用済み核燃料から、再度エネルギー物質を取り出し、原子力発電所の燃料として再利用する計画があったが、現時点で、その拠点となるサイトは完成していない。使用済み核燃料は、各原子力発電所で保管されているのが、現状だ。政府は、核燃料のリサイクル事業の推進を後退させる代わりに、使用済み核燃料を日本国内で処分できないか、最終処分場の候補地の立候補を、各地方自治体に声をかけた。結果、過疎化に進む北海道の2町村が手を上げ、現在、調査を受けているらしい。調査を受けて、たとえ保管地として適していない、と判断されても、10億単位の交付金が自治体に入るため、北海道の2町村は手を挙げたらしい。使用済み核燃料の放射性物質が半減期(エネルギーが半分になること)に達するまでには、数千年の時間がかかるらしい。現在の電気での便利さを求め、自分が死んだあとのことは知らない、問題が起こったら、その世代で対応してもらい、子々孫々にその尻拭いをさせる、というような、利己的な思考が透けて見える。最近の世界の流れであるSDGs(持続可能性な社会)の思考とは、真逆な思考と、私には思える。1週間程度の簡単な教育を受ければ、原子力発電所の内部に入ることができる。内部でも、放射線量の関係で、軽い順にB、C、D区域と分かれており、B区域なら、作業服に着替えるだけで、入域可能だ。原子力発電所の再稼働、設置の推進派の方は、ぜひ一度、B区域で内情を見学した後、意見を述べて欲しいと考える。多分、価値観が変わる経験になると推測している。少なくとも、温室育ちだった私の価値観は変わった。(B区域でも、被爆防止のため、放射線量を計測する、ガラスバッチの携帯が必須です。)宮城県出身で現在、好感度No.1芸人の2人組のコンビが、福島第1原発の取材で、D区域まで入域して、制御棒の下を実際に見て体験する、といったテレビ番組を観たことがある。そのコンビは、震災時、気仙沼でテレビロケをしていて、実際に被災しており、その後も、芸能活動の一部として、震災復興に力を入れている。震災直後には、そのコンビが中心となって、被災地支援の義援金を集める団体を作り、都内を中心に呼びかけを行い、10億円単位の義援金を集めた。その活動は今でも続いている。福島第1原発へのロケでは、その復興の一環として、どこまで福島第1原発が復旧しているのか、専門家以外でも分かるような構成で、番組が作られていた。地位や権力のある方ならば、多分、B、C、D区域、どこでも見学できるだろう。デモンストレーションでも構わないので、決定権のある人物は、一度、原子力発電所内部を見学した上で、原子力発電への推進、反対を決めるべきだ、と私は思う。

 また、前述のコンビが出演していた番組で、実際の廃炉を行う立場にある電力会社の広報の方、作業員の方、それぞれが、テレビで発言する前に、「この度は、ご迷惑をお掛けし、申し訳ありません。」と、判を押したように挨拶していた。私はその態度に、少し違和感を憶えた。実際に申し訳ないと思っているのであれば、仕事や勤務態度で示せばいいだろう。10年以上も経って、紋切り型に謝罪から始まる発言を聞いていると、電力会社の上層部から、とにかく謝ってから発言するよう、指導が徹底されているような気がしてならない。謝っておけば、少なくとも悪く言われることがない、そんな思考が透けて見える。同じ電力会社で、反対の日本海側にある原子力発電所では、月に1回か2回のペースで、人的トラブルのニュースが流れてくる。しかも、トラブルの内容は、入館証を違法に使用した等、学生レベルでも注意すれば防げるものが多い。経営母体は同じ会社で間違いないはずなのだが、もし、福島第1原発での注意事項が共有されていれば、こんなトラブルは起こらないはずだ。この会社は、社会的制裁は受けているとは思うが、企業体質として、信用できない部分がまだあると、私には感じる。