という、タイトルではありませんw
アル×プリ です。
プリンセスレッスン?
の直後の話です。
プリンセスは、公式にみられるような汎用設定ではなく、ヌー子の中の人が作った設定があります。
名前は便宜上、マリオンとしています。
では、どうぞ
↓↓↓
Arancia Cioccolato
それは。
甘くて苦い、苦くて甘い。
「マリオン様? もうそろそろおやめになったらいかがですか?」
ルルはソファに寝そべったままチョコレートをつまむプリンセスを見て、ため息をついた。
「そりゃあ、私が山盛り持って来たのがいけないんですけど」
「ルルも食べてよ。私一人じゃ無理よ」
指についたチョコをぺろりと舐めるとのそのそと起き上がり、小さくおくびを出した。ちらり、とルルが見咎めたような視線を向けて来たが気にしない。
「息がオレンジの匂いになっちゃったわ」
「お口はチョコ色ですね」
「うっそ!」
ルルはクスッと笑って、自分の口端をつついて見せた。マリオンは慌てて口を拭う。
オ レンジピールのチョコレートは、プリンセスの最近のお気に入りだ。なので、修練場から連れ戻す為の口実に用意したのだけれど。やけ食いのように頬張る己の 主人に、食べ物で釣ったのは失敗だったかも…と後悔していた。そして、このデザートを力一杯用意してくれた厨房の料理人達を少々恨めしく思った。
「では、いただきます」
ルルは傍のオットマンに腰掛けて、テーブルの上の銀の皿に乗ったチョコレートをつまんだ。
「うわ、おいしいですね、これ!!」
「でしょ? 遠慮はいらないわ…というか、後は任せたわ、ルル」
ルルがにこにこしながらオレンジピールチョコを食べ始めたのを見て、ソファに座り直したマリオンは、右袖をたくし上げて眺めた。
右手はもうなんともない。言われた通りにすぐ冷やしたから。
久しぶりに振るった剣の感触は悪くなかった。むしろ気持ちいいくらいだった。本来の自分の役目からは遠く離れたことだけど、決していけないことではないはずだと思っていたのに。
公務の為に修練場を去った国王を見送って、騎士団長に向き直ったそのとき。
「まったく無茶をされる方だ」
いきなり右腕を掴まれた。
「えっ?」
驚くと同時に、痺れるような痛みが手首を走る。マリオンは眉を顰めてアルバートを見上げた。
「痛いでしょう。このまま続ければ筋を痛める」
アルバートは多分、力を込めてない。でも、マリオンはその手を振りほどくことが出来なかった。
「後半の剣のさばき方は明らかに…疲れていたな。毎日剣を握っていないのに、力任せに振り回すからだ」
あきれたような声で言われて、ついむっとして睨みつけようとした途端、手を放された。
「…大丈夫だもん」
マリオンはアルバートからそっぽを向いて手を2~3度振った。痛いというよりも、自分の手ではないような重さが残った。
「貴女が大丈夫でも、周りはそうではない」
アルバートはマリオンの後ろを見やった。心配そうにこちらを見つめるルルの姿がそこにあった。 そして心配する以上に好奇心満々な騎士達の姿も。
「マリオン様?」
心細げな声が自分を呼ぶ。
「わかったわよ。今日はこれで終わりにする」
アルバートの言う通りだ。正直なところ、もうこれ以上剣を握って振ることは出来そうにない。ましてや相手は騎士団長だ。なんだか負けたような気がする。敵いっこないっていうのはわかっているけれど、なんだか悔しい。
瞬きはせずに、アルバートを見つめる。
「そんな目で見るな」
マリオンにだけ聞こえる声でアルバートは囁いた。その瞬間の少し困ったような表情も、彼女の瞳だけに映った。
「ブルクハルト様がすぐお気づきになられてよかったですよ」
右手を眺めるマリオンに気づいて、ルルはうんうんと頷いた。
「大事に至らなくて、安心しましたわ」
マリオン自身の公務に差し支えるし、ウィスタリアで待っている面々を思い浮かべると、背筋がぞくっとするのはルルの気のせいではない。きちんとプリンセスのお側付を全うしなくては。けれど、ルルもまた「堅苦しい」のは好きではないのだ。
「次回お相手してくださるって、おっしゃってたじゃないですか」
視線を右手からルルに移して、マリオンは小さく息をついた。
「お忙しい騎士団長サマが、私ごときにつきあってくれるのかしら?」
若干…かなり拗ねた物言いに、ルルは肩を竦めた。
「もちろんですよ、マリオン様」
マリオン様を放っておくわけないじゃないですか、あの方が!と言いたいところだったけれど、それを言ったら言ったでなぜか機嫌が悪くなるのだ。いや、悪くなるのではなく、悪く見せるのだ。なんて素直じゃないプリンセス。しかし、ルルにはそこがなんとなく微笑ましく思えた。
「お茶が冷めてきましたから、新しいものをお持ちします」
ルルが席を立とうとしたとき、扉を叩く音が聞こえた。控えの間の女官の声がルルを呼んでいる。
「では失礼致します、マリオン様」
ルルが扉の向こうに姿を消したのを見ると、マリオンは再びソファに寝そべった。この後は夕刻の城下の視察がある。支度の時間はまだまだ先だ。資料の書類は、既に昨夜目を通してあるからすることもない。
「つまんないなぁ…」
ゼノ様は許可してくれたけれど、アルバートは本当に自分の相手をしてくれるのだろうか。あのときの、泣きそうな気分をアルバートに見破られたような気がして 、マリオンはぎゅっと目を固く閉じた。
再び扉を叩く音が聞こえる。ルルが戻って来たのだろう。
「どうぞー」
体を横にしたまま返事をする。扉が開いたが、いつもの「ただ今戻りましたあッ!」が聞こえて来ない。 では別の女官だろうか?
「随分と優雅な格好だな」
まさかの声に目を見開き、がばっと半身を起こした。椅子から足を降ろしドレスの裾を引き下げ、驚きの顔を極力隠してにっこりと微笑む。
「ごきげんよう騎士団長さま」
扉を背にアルバートが立っていた。いつものように黒い騎士服をかっちりと纏い、いつものように堅苦しい礼儀正しさでこちらを見つめているのはわかった。窓から差す午後の光がアルバートの眼鏡に反射して、彼自身の表情はわからない。
「ご用件は何かしら?」
肩にかかる髪を人差し指で払い、そのついでにドレスの襟元のずれをさっと直した。
「貴女の様子を見に来た」
to be continued.
途中でぶった斬りしてます。
この話の続きに関しては、このエントリの前の記事をどうぞ→萌えとはなんなのか。


