カイムはあくびをして伸びをした。
 いつの間にか眠っていたようだ。書斎は真っ暗でPCのモニタだけが煌々と点いている。
 カイムはUSBメモリを外してから、PCの電源を落とそうと、机の下に手を伸ばした。青いLEDが点っている場所を鷲掴みにすると、サラサラとした柔らかなものが手に絡みついた。蜘蛛の糸かと巻き取ると案外強くて手にまつわり付いて来る。持ち上げてみると黒い髪の毛が大量に巻き付いている。
 悲鳴を上げそうになって、髪束をよくよくみれば中心辺りに青いLEDの明かりが二つ。ヘルレアがギロリとカイムを睨んでいた。
「カイム、お前私に怨みでもあるのか。まあ、数え切れない怨嗟はあるだろうが……」
「いや、今の状況とそれは関係ないと思うよ。ところでなんでこんなところにいたの?」
「……しらない」
 ヘルレアがそっぽを向いた。
――照れてる。
 カイムは得心がいって、ニヤつきながらヘルレアの髪を梳いて整えてやった。