nterralemsi1973のブログ

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新ヴィーン楽派に属するアントン・ヴェーベルン(Anton Webern, 1883 - 1945)とアルバン・ベルク(Alban Berg, 1885 - 1935)は、どちらも多作家ではなかった。

特に、ヴェーベルンの場合は、作品番号が付けれられた作品が32と極めて少ない。

私が持っているブーレーズによる「ウェーベルン全集(CBSソニー盤)」では、その32曲の他に「弦楽四重奏のための5つの楽章 Op. 5」を弦楽合奏用に編曲したものと、「J.S.バッハの『6声のリチェルカーレ』のオーケストラ用編曲版」、そしてヴェーベルン自身の演奏による「シューベルトのドイツ舞曲集」しか含まれていなかった。

したがって、ヴェーベルンの作品に関しては、覚えているかどうかは別にして、とにかく彼の全ての作品を聴いたいう自負が私にはあったのだ。しかし、今日ご紹介するディスクには、ブーレーズの「ウェーベルン全集」には含まれていなかった作品が2曲も含まれている。

さらにこのディスクには、ベルクが「ピアノ・ソナタ Op.1 (1907 - 08)」よりも前に書いた作品も含まれているのだ。それで、これはぜひ聴いてみなければならないと思って、このディスクを聴き始めたのである。このディスクは“Montaigne”というレーベルから発売されているが、新譜ではなく2003年に発売されているので、NMLの「推薦タイトル」で紹介されていなかったならば、私は全く気付かなかったに違いない。

ヴェーベルンとベルクは2歳しか年が離れておらず、二人とも1904年頃にアルノルト・シェーンベルク (Arnold Schönberg, 1874 - 1951)の門弟となっている。そういう共通点はあったものの、この二人の作風はかなり異なっており、彼らが初期にどのような作品を書いていたのか、私は大いに興味を惹かれた。

ヴェーベルンの初期の作風は後期ロマン派の影響を留めていたが、その後の彼は非常に寡黙で濃縮された作風へと転じ、その密度の濃さに合わせるように演奏時間は短いものが多かった。それに対して、ベルクは十二音技法を採用しながらも、作品の中に調性的な要素を取り込もうとした。

したがって、ブーレーズの「ウェーベルン全集」がCD4枚組に収まっているのに対し、ベルクの場合は「ヴォツェック」と「ルル」というオペラまで手掛けているので、全作品の演奏時間はヴェーベルンのそれよりも遥かに長いのだ。オペラ「ルル」は未完に終わっているが、DVDなどの媒体で映像とともに鑑賞できるようになった現在では、フリードリヒ・チェルハ(Friedrich Cerha, 1926 - )による全三幕補筆完成版で上演されることが多い。

いずれにしても、両者はともにシェーンベルクの薫陶を受けながらも、かなり異なった作風を示すようになった。そんな彼らがシェーンベルクの教えを受け始めた頃の作品を集めたのが今日のディスクである。収録曲は以下の通りである。

1.ヴェーベルン: ピアノ五重奏曲 (1907)
2.ヴェーベルン: ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 Op. 7 (1910)
3.ヴェーベルン: チェロ・ソナタ (1914)
4.ヴェーベルン: チェロとピアノのための3つの小品 Op. 11 (1914)
5.ベルク: 9つの短い小品 (1905 - 08)

演奏は、アルディッティ四重奏団(Arditti Quartet)を中心に、シュテファン・リトヴィン(Stefan Litwin, 1960 - )のピアノ、トーマス・カクシュカ(Thomas Kakuska, 1940 - )のヴィオラが加わっている。カクシュカはアルバン・ベルク四重奏団でヴィオラ奏者を務めていた人物である。

上述したように、ブーレーズの「ウェーベルン全集」には作品番号が付けられている作品は全て収録されている。

したがって、私はヴェーベルンの「Op. 7」と「Op. 11」は聴いたことがあるのだ。だから初めて聴く、1曲目の「ピアノ五重奏曲」と3曲目の「チェロ・ソナタ」に興味があった。

「ピアノ五重奏曲」は単一楽章で12分ほどの曲であるが、この曲は無調的ではあるが、後期ロマン派の影響を色濃く残している。

しかし、師匠のシェーンベルクもまだこの時点では十二音技法を確立していなかったことを考えると、ヴェーベルンの「ピアノ五重奏曲」はシェーンベルクの教えを素早く吸収し、それを超えようとしていることが窺える。

同時期に作曲された「チェロ・ソナタ」は演奏時間が1分41秒の作品であるが、ヴェーベルン特有の凝縮された緻密な曲作りは、この曲でも如何なく発揮されている。そして、その作風は自然に次の「チェロとピアノのための3つの小品」に繋がっていくのである。

それに比べると、ベルクの「9つの短い小品」はそれぞれの曲に調性が付けられており、作曲者の名前を知らずに聴いていると、とても新ヴィーン楽派の作曲家の作品とは思えない。これらは曲によって楽器編成が異なるので、一度に纏めて書かれたものではなく、1905年から1908年までの間に書かれた小品を集めたものであろう。

ベルクがシェーンベルクの手法を習得するまでには、ヴェーベルンよりも長い時間を要したであろうことがこの小品集から窺えるが、シェーンベルクは早くからベルクの非凡な才能を認めていたという。このディスクの演奏を聴きながら、「人を見る目」を養うことが如何に大切であるかを再認識した次第である。

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