こんばんは!
またまた更新があきました・・
 
 
実は今週遅めの夏休みをいただいておりまして。
お出かけはせずに家でひたすら読書ざんまいだったのですが、これまたすごい本を手に取ってしまって、物語世界に没頭しすぎて戻るのにけっこうな時間がかかってしまいました。
 
 
(↑なんかカッコつけた言い方しちゃいましたが、つまり読むのに時間がかかっちゃったってことです笑)


今週じっくり読んでいたのは
 

 

 

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『アメリカーナ(上)(下)』(河出文庫)です。
 
 
おうちトリップ用に手に入れていたのですが、
この作品は「旅読書」というひとつのカテゴリーにはおさまらない、複雑な問題を絡ませながら紡がれた恋愛小説でした。
 
 
この物語の中心人物は、イフェメルとオビンゼというナイジェリア出身のふたりの男女です。
(※イフェメルが女性でオビンゼが男性)
 
 
ふたりは高校時代に知り合い、イフェメルはオビンゼの冷静で知的なふるまいに、オビンゼはイフェメルの勝気で芯の強いところに惹かれ、お互いの人生がより良くなるよう高め合い、愛を深め合っていました。
 
 
ふたりの人生がより良くなるために彼らはアメリカ留学を目指すのですが、ナイジェリアではそう簡単にヴィザが取れるような情勢ではなく、イフェメルが親戚のつてを頼りに渡米したことでふたりは離れ離れになります。
 
 
離れ離れの間、彼らの身にふりかかったことは、想像以上の孤独と、人種の偏見の壁でした。
ナイジェリアにいたころは頭脳明晰で容姿端麗な人物として慕われてきたふたりは、国を離れたとたんに「黒人」としてしか見られず、いわれのない差別や偏見に振り回されるのです・・。
 
 
イフェメルが飛び込んだアメリカは、人種、階級、イデオロギーによるマウンティングの世界でした。
仕事が見つからない、日常的に偏見の目を持たれるという生活の問題に加えて、アメリカの黒人グループの中においても「アフリカン・アメリカン(アフリカ系アメリカ人)」が上位であるような意識を感じ、イフェメルはなんとも言えない居心地の悪さと違和感を抱え込みます。
 
 
イフェメルはアメリカで数々の出会いと別れ、絶望と孤独を経験しながらも、親戚や友人のつながりに救われながら少しずつ立ち直り、アメリカでの生活に慣れていきます。
 
 
一方のオビンゼは、渡米のヴィザが降りなかったため、イギリスへ留学していました。
そこでオビンゼの身に降りかかったこともイフェメルと同じ問題で、これまでに経験したことのない屈辱を味わいながら、そしてイフェメルのことを絶えず思いながら、厳しい現実に立ち向かっていくのです・・。
 
 
そして月日は流れること13年。
イフェメルは人種問題をテーマにしたブログを立ち上げたところ、そのブログが好評を博し、数々の研究機関から講演を頼まれるほどに成功していました。
 
 
ブロガーとして成功したことでアメリカのグリーンカードを取得できたものの、アメリカ生活での違和感や居心地の悪さが解消されたわけではなく、原点に戻るべく、イフェメルはナイジェリアに帰ろうと思い至るのです。
 
 
そのころにはオビンゼとは連絡を取らなくなっていましたが、イフェメルにとって忘れられない相手であり、故郷を思いながらもオビンゼへの思いが募ります。
 
 
オビンゼはイギリスで辛苦を味わったのちに、ナイジェリアで実業家として成功していました。
美しい妻と子に恵まれ、何不自由ない豊かな暮らしを謳歌していたのですが、13年ぶりのイフェメルからの連絡に、彼はイフェメルへの思いが溢れそうになる自分に気がつくのです・・。
 
 
この物語は、イフェメルがナイジェリアへ帰ろうと決意し、アフリカ系の美容室で髪を編んでもらう場面からはじまります。
美容室で髪を編まれながらイフェメルが昔を回想するかたちで13年前のふたりの物語が紡がれていくのですが、イフェメルとオビンゼが惹かれ合い、期待に胸膨らませた矢先に、彼らが想像を絶する辛苦を味わう・・という気持ちの落差が見事に描かれていて、胸がぎゅう、と痛み、そして、ふたりはどうなっていくのか・・と気になり、のめり込んで読みました。
 
 
この物語で特に惹かれたのはイフェメルのアメリカ生活の場面でした。
イフェメルは「イフェメル」個人として人生を歩みたいのに、「黒人」としてしか見られないことに悔しさと悲しさをあらわにします。
アメリカ生活で新たなコミュニティができて、彼らとそれなりに仲良くやっていくものの、イフェメルを心から理解してくれる存在にはなかなか出会えず、違和感がつのるばかり・・
そのストレスを発散すべくイフェメルはブログを立ち上げるのですが、その姿にいちブロガーとして親近感を抱き、共感を覚えたのです。
 
 
イフェメルが抱える問題と比べてはいけないほどに自分は恵まれた環境にいますが、田舎から野心を抱いて上京してきたわたしは、気づけばアメリカ留学を「上京」に置き換えてイフェメルに共感していました・・。
 
 
イフェメルがナイジェリアへ帰ったときに友達から「アメリカーナ(アメリカかぶれめ!というようなニュアンス)」とからかわれる場面があるのですが、それも心当たりがありますし、自分は都会に染まってませんけど!?と思いながらも都会の便利さはしっかり染み付いていて・・という、矛盾したような複雑な感情をきちんと描いているところにも魅力を感じました。


あと、ナイジェリアの「仕事のぬるさ」を描いて故郷の人々の問題意識の低さを投げかけているところも良かったです。
偏見や差別の多いアメリカだけれど、洗練された素晴らしい部分もあり・・だから故郷の「ぬるい」ところにイフェメルは我慢ならなかったのですよね。
この場面がイフェメルが「イフェメルらしさ」を取り戻していく重要なシーンだったのではないか、と個人的に感じて胸にジーンときました。
恋愛物語でありながら、「個人を取り戻す」物語としても読むことができると思いました。
 
 
そしてこの物語のいちばんの読みどころは下巻の後半です。
大人になったイフェメルとオビンゼのそれぞれの思いが痛いほどわかり、最後の最後でページをめくる手が加速しました。


それなりに社会人経験を積み、結婚もした今だからこそ読んで刺さるところの多い物語です。
30代におすすめ!!


知らない世界にトリップできる作品でもありますので、ぜひ機会があれば手にとってみてほしいです。
 
 
ここで著者の説明を少し。
著者はアフリカのナイジェリア出身で、
19歳にして奨学金を得て渡米し、大学で医学を学ぶかたわら創作活動をしていたパワフルな女性です。


彼女は2008年にアメリカの世界的な講演会「TED」にて「シングルストーリーの危険性」というスピーチを行い、
この世界には「アフリカ=貧しい」というようなシングルストーリー(固定観念)が根強く、幅広くあることについて問題提起をしました。


たしかにアフリカのいくつかの国では紛争状態の地域もありますが、ナイジェリアは公用語が英語で、アディーチェ自身も中流階級の家庭で育っています。


このスピーチを聴いてから本書を読むと、そうしたシングルストーリーに“巻き込まれた”(という言い方が適切なように感じました)人々の苦悩をさらに感じ取ることができます。
ぜひ見てみてください。
YouTubeのリンクを貼っておきます↓

 

 

8月は読みごたえ大満足の重量級小説ばかり読んでいて、めちゃくちゃ充実した読書ライフを送っています◎
(って毎回言ってる気がする)
 
 
まだもう少し夏休みがあるので、
引き続きいろんな作品に手を出していきま〜す!!
それではまた更新します!!
 
 
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