昨日のからくり道場。

テーマは「これからの繋がり方」。


大切なものとつながっていくためには、まず自分の中をシンプルに、キレイにするといい。


まずは、「捨てる」。


断捨離。デトックス。


そうしてできたスペースに新しいものが入ってきて、新しい繋がりが生まれる。


そんな話が印象に残った。




ちょうど今の自分が、そういうところを通過している真っ最中だと思ったから。


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2年ほど前、僕は、(不動産をのぞけば)人生最高価格の買い物をした。



ギターである。



米国Gibson社が1930年代に、最高品質の材木を使って制作したモデル。わずか数年で生産終了したため、総製造本数は300本にも満たない。


現在、弾ける状態で残っているのは、世界中で100本あるかどうか、と言われている。


その後、、復刻モデルはぼちぼち作られているが、、30年代に作られたオリジナルのクオリティには、到底及ばない。




そんな、人類の歴史的文化遺産の一部ともいえるような貴重なギターを、、




ふとした経緯で、入手した。




もちろん高かった。



そこそこ高級なクルマが買えるぐらい、高かった。


まあ、、いわゆる「バンジー!!」ってやつだ。





いや、値段が高額だっただけじゃない。


こういう類の、もはや今後、製造されることがない希少な品物は、、


「欲しい」と思ってお金を積んだからといって、手に入るとは限らない。



売りに出るタイミングと、欲しい気持ちがぴったりあわないと、いけない。




なにしろ、世界に100本もない(たぶん)のだから。



所有者になれるのも、マックス100人。



選ばれし100人。



そんなギターが、ウチにやってきた。



運命的な巡り合わせ。



何か目に見えない力学がはたらいた。そうとしか思えなかった。





だから、これはもう、一生の宝物を預けてもらったんだ。そんなふうに思っていた。





ところが、、である。





僕はいま、その希少な1本を、手離すことにしたのである。




あらまあ、なんと。





きっかけは、コロナ。



いわゆる自粛期間の間、家にこもってやることもなく手持ち無沙汰でいたある日、、



ふと、暇に任せて、



もし、自分がオリジナルの音楽アルバムを作るとしたら、どんな選曲になるのかなぁ、なんてことを、僕は夢想し始めた。



僕が、いままでに作ったギターインストのオリジナル曲やオリジナルアレンジ曲、、いま記憶に残っていて弾けそうな曲をかきあつめたら、、たぶんアルバム1枚分くらいはある。



その選曲とか、曲順などを、思いつくままに並べてみて、、



て、、ついでに、それぞれの曲をどのギターの音がマッチするか(ウチにはいまギターが8本ぐらいあってそれぞれ音色が違う)、なんてことを考え始めたところ、、、




驚きの事実に、気づいてしまった。




10数曲の選曲の中で、、、




先に紹介した、かの希少なギターで弾きたい、と思えた曲は、、




なんと、、1曲も、なかったのである。




え?




まじか、、




ほんまか?




なんで?




なんでや?




(なんで関西弁?)




、、、、、




これ、、どういうこと?




まじで、驚いた。




このギターとは、運命の出会いだと思ってたから。



あのとき「バンジー!!」ってココロで叫んで、身震いして買った経験から、本当にたくさんのことを教えてもらったと思ってたから。




だから、当然、、


このギターは、自分の一部、自分の音楽の一部だと思っていた。




でも、、いざオリジナルアルバム、という体で、具体的に使用楽器を挙げていってみると、、


このギターは、、ことごとく、選から漏れてしまったのである。




つまり、いま、自分の音楽を表現する上で、、


このギターは、必ずしも、なくても構わない存在だったのである。




もちろん、客観的に見て、このギターのビンテージ楽器としての価値がとても高い(だから市場価格も高い)のは、今なお揺るがない事実である。


でも、、


自分的には、なくても構わない。。





どういうことか、というと、、、




僕にとってこのギターは、事実上初めての、自分で所有した「戦前のギター」だった。


作られてから100年近く経過したような古い楽器は、木材の乾燥が進んで木の振動が良いため、、


近年製の楽器とは、音響的な特性がかなり違う。


だから、弾き方にも、ちょっとしたコツがある。


慣れないと、性能をうまく活かしきれない。





そういう楽器の操り方を、僕はいわば、このギターを通して学んできたわけだ。2年がかりで。




2年間弾きこんで、、


古い楽器の弾き方にも、指がかなり馴染んできた。



と同時に、、僕はこの2年で、これ以外にも何本か、戦前のギターを入手することになった。


古い楽器の弾き方に馴染み始めた指で、自分好みの音を、探してきた。





そうした経緯を経て、、、




いま、改めて、自分の音楽世界を作る楽器はどれ? と考えたとき、、




2年前の自分にはバンジーだったこのギターは、、



もう、必ずしも、なくてもいい。



そういうことに、なったのである。




うーーむ、、、そうなのか、、



なんとなく、放心状態でぼーーっとしてた、そのとき、ふと、、、



こころの中に、こんなふうにささやくコトバが、ぽっと、わいてきた。




このギター、、もう、手放していいよ。



手放していいときが、きたよ。



、、、、




あーー、、、


そういう、ことか、、、、




、、ということで、、僕は、このギターを、売りに出すことにした。のである。




で、、、だ。




こいつを馴染みのショップに持ち込んだ数日後、くらいだったと思うんだけど、、




毎日、日課のように眺めている楽器販売サイトを見ていた僕は、、あっ!と驚いた。




そこに、僕がここ1年以上探していた、とあるギターが、あったからだ。




やはり1930年代のGibson製。売りにだしたやつよりずっと小振りなボディ。


ネック周りに特殊な素材を使ったことに起因する、唯一無二の個性的な音色。


僕にとってはまさに、これぞ理想、という音色だ。


先ほどの、夢想の中のオリジナルアルバム企画でも、何曲か、できることならこのギターで弾きたい、と思ったほどなのだ。


持っているわけでも、ないのに。





このギター、製造本数がとても少ないため、ショップ等で目にすることは、まず、ほとんど、ない。


ちょっと特殊な仕様のため、市場価格はそれほど高くないけれど、とにかく、世界中探しても、モノがないのだ。



数年前に某ショップで見つけて試奏した1本は、素晴らしい音色ではあったものの、コンディションが最悪で、見送った。




それ以来の、夢だった。




そんな奴が、ポロっと、でてきた。




見計らったようなタイミングで、だ。



ホホォーー




それで、、、




まあ、その後もいろいろあったんだけど、、




とにかく、そのギターは、我が家にやってくることになった。



早ければ明日ぐらいには、くるはずだ。




と、いうわけで、、



さあ、ここから、新しい何かの、始まり〜