(講演レポート)乳がん医療に欠かせない心のケア | hiro-chanのsmile日記

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2014年9月に乳がん発覚。
手術、化学療法を経て現在、経過観察中。
乳がんと向き合いながら日々のできごとや想いを綴っていきます♪

ピンクリボンシンポジウム2017講演レポート、3回目は大西秀樹先生(埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授)の乳がん医療に欠かせない心のケアです。

 

 

クローバー

 

 

精神腫瘍科はがん患者の心のケアを担う。

精神腫瘍医はがん専門の精神科医である。

 

「がん」のイメージ:=死
がんは死亡原因が1位。
がんに罹患することで仕事は?家庭は?とストレスが多い。
がんは、ストレス性の精神疾患につながる。
 
例えば100人のがん患者を診察すると→50人に精神疾患の診断がつく。(精神疾患あり:47%、なし53%)
 
治療中のがん患者での精神医学的有病率
適応障害:32%  うつ病:6% →治療が必要!
実際に治療を受けているのは3%
 
早期における不安・抑うつの割合
診断後1年以内  50%
診断後2年以内  25%
診断後5年以内  15%
危険因子…親密なサポートの欠如・孤立感
長期の精神的フォローが必要
 
悪い知らせと心の動き
悪い知らせの定義…患者の将来への見通しを根底から否定的に変えてしまうもの。
~悪い知らせの後に辿る経過~
衝撃の時期:直後から1週間くらい
「死神が真後ろに立っていた」「シャットダウン」
担当医の説明が全然、頭に入らなかった。(告知後の感想)
告知は衝撃的な出来事で告知のストレスは非常に辛い。そして心身に影響を及ぼす。
告知・ストレスが心身に及ぼす影響
自殺率→12.6倍(1ヶ月以内)
心疾患での死亡→5.6倍
患者は高いストレスを経験するため日常生活への適応度が著しく落ちる。
 
不安・抑うつの時期:1週間〜2週間
日常生活への適応度が少し戻るがまだ低迷。
冷静になって思考が働くようになると不安や恐怖が強くなる。
不安・抑うつの時期が2週間以上続くようになると適応障害やうつ病に移行。→治療を開始。
 

適応の時期:2週間以降

日常生活への適応度が通常レベルに戻る。
 
以上が正常な反応。
☆人間には適応力(レジリエンス)が備わっている!

 

なぜ、精神症状へ対応するのか?
精神症状は非常に苦痛であること。
うつ病:苦しい。抗がん剤治療の副作用やがん性疼痛より辛い。
意思決定障害が起こること。
☆乳がん患者が術後抗がん剤治療を受ける割合
抑うつなし→90%  抑うつあり→52%
意思決定が精神状態に左右される可能性がある。
家族の精神的苦痛
入院期間の延長
自殺率の上昇→がん患者の自殺率は一般人口の2倍。
精神症状改善は治療を円滑に行うために必要である。
 
~治療~
薬物療法(主にうつ病)
抗うつ薬。転倒やせん妄、常用量依存などの副作用があるので、必要最小限の投与にする。
精神療法…患者の話を聴き、問題点を理解・共有し、解決法をともに考える。
 
☆心を守るために私達が出来ること☆
柔軟な考えを身に付ける。
認知行動療法…色々な考え方をする。一つの考え方に固執しない。様々なものの見方をすると心の防衛にもなる。
自分に出来たことを毎日3こくらいメモ。これを1週間ほど続けると出来ることが分かってくる。
例:じゃがいも、人参、玉ねぎ、牛肉で何を作る?
カレー、肉じゃが、シチュー、オニオンスライス、野菜ハンコなど。
☆全部を使ってひとつのものを作る必要はない。単独でも良いし食べ物じゃなくてもよい。→様々な考え方
 
がんに負けない〜再発患者に学ぶ〜
背景:36歳女性  ふたりの子どもの母親。乳がん罹患。
術後に抗がん剤治療→8ヶ月後に骨転移
☆患者さんの言葉から☆
再発直後の外来:
頭の中の情報処理がついていかない。受け止めきれない。
2ヶ月後:
再発までは完治する!闘う気持ち満々だった。
転移した時は負けたと思った。でも考えた。
「がんに負ける」ということは治った・治らないということは関係ない。
自分の人生に対して無気力・無関心。自分の人生に希望が持てなくなってしまう時だ。
その部分は負けていない。心まではがんに侵されていない
病気はあるけれど病人ではない。
なぜなら…お祭りの時、小2の息子がくじ引きで当たりを引いた。目の前にポケモンのステッカー。本人は欲しかったはず。でも彼が選んだのは私のための化粧ポーチ。その時、自分の心の奥底で魂が揺さぶられた。とても嬉しかった。
病気になったぐらいで不幸ではない。大切な人と大切な時間を過ごせる私は不幸ではない。そのことに気が付いた。
 
「折れた心は再生するのね!」
 
これは心的外傷後成長(ポストトラウマティック グロースPTG)である。
PTGの定義
①危機的な出来事や困難な経験の中で
②精神的なもがき、闘いの結果生じる
③ポジティブな心理的変容
 
PTGの概念
前提となる世界観…普通の生活(家庭・子育て・仕事など)
       ↓
がんに罹患…世界観の崩壊
苦痛・もがき
       ↓   ←   家族・友人・医療者のかかわり
人生への感謝…人間的成長
 
☆病気になっても心は成長する!
終末期にある患者でも最後まで心は成長する。
なので患者に関わっていく医療従事者は死生観をしっかり持たなければならない。
(埼玉医科大学国際医療センターでは死生観を育てるため勉強会が行われている。)
 
家族への心のケア…家族は第二の患者でもある。
なぜ、家族のケアが必要なのか?
精神面…家族の10〜50%(3人に2人)の抑うつがある。
男性家族(夫)はメンタルケアを受けに来ない。
家族の方が抑うつの程度がひどい。
患者の抑うつはケアされるが家族も辛いのにケアされていない。
身体面…不眠・心疾患など
社会面…医療費の増加・失業・貯蓄減少など
実存面…患者と同様。
様々な面で患者と同様に家族もケアしていかなければならない。
 
 
苦痛の軽減(疼痛コントロールやメンタルケアなど)
家族の支え
医療スタッフが患者と家族を支援
そのためには医療者も患者・家族も学ぶことが必要。
※そうすることによって患者がどんな状況になっても(終末期であっても)、より良く生きられる。
 
クローバー
 
チューリップ感想チューリップ
「心のケア」についてはとても関心があるので今回の講演を楽しみにしていました。
大西先生のお話は以前にも聴講しましたが、今回も面白くて良いお話が聞けました。
 
人間には身体と同じように心にも回復能力がきちんと備わっていること。うまくいかない時には適切なサポートを受ければ良いこと。
 
精神症状が乳がんの治療に悪影響を及ぼすことは、患者自身の命や人生にも大きく関わることでもある。また家族も患者と同じように精神的な負担が大きい。
「おかしいなぁ。」と感じたら思いつめてしまう前に本人も家族も受診することが必要であること。
 
そのためにも、精神腫瘍科の役割や存在が社会に広く認知されて、がん患者さんやその家族の方々が小さなことでも気軽に相談できる環境が整うと良いなぁと思います。
 
ピンクリボン
 
3回にわたっての講演レポートをお読みいただき、ありがとうございました!
読んでくださった方々のお役に少しでも立てたなら嬉しいですキャーハート