Android9&64bit対応版NoxPlayerの試用レポ。5年前の型落ちデスクトップで最新のAndroidエミュレーターを試す。

コロナ禍で高まる巣ごもり需要。スマホゲーム市場にもその風は吹いており、スマホゲームを自宅のパソコンの大画面でプレイできる『Androidエミュレーター』が昨今人気を博している。今日はそのAndroidエミュレーターの代表的ソフトであるNoxPlayerの最新バージョン、『NoxPlayer』の最新版を試用する機会があったのでそのレポート。

NoxPlayer公式サイト: jp.bignox.com





NoxPlayerバージョン7→9のアップデートでAndroid9と64bit版アプリに対応

今回ご紹介するAndroidエミュレーターは『NoxPlayer』と言う。数あるエミュレーターの中でも比較的更新頻度が高く、また長い歴史のあるエミュレーターだ。
5月にバージョン7からバージョン9へ一つ数字を飛ばしてバージョンアップしたのだが、その内容がかなり興味深かったのだ。
アップデートの目玉はAndroid9&64bitアプリなのだが、これらは地味に凄かったりする。
Android11がもう間もなく発表になるので今さらAndroid9かと思う方もいるかもしれないが、Androidエミュレーターは開発が難しく、伝統的に本家扱いであるスマホやタブレットのバージョンアップから数年単位で遅れることになる。今回のNoxPlayerのAndroid9対応はAndroidエミュレーターとして世界初。他所の技術やノウハウを一切なしで開発された、という事なのだ。
また、64bit対応も素晴らしい。WindowsなどのPCの64bit普及はもう15年以上前、スマホの64bit対応も7年以上前の話だが、Androidエミュレーターは永らく32bitのみで、一部のエミュレーターメーカーがベータ版として64bit版エミュレーターを出していたのみ。そのエミュレーターも動作がとんでもなく重く、又不安定で実用に耐えられるものでは無かった。
ここにきて、NoxPlayerの正式64bit対応である。実用性は如何ほどか、気にならないわけが無かろう。
今回は、最新のAndroid9&64bitに対応したNoxPlayerバージョン9と、旧バージョンであるバージョン7を比較レポートしていく。


実際の試用環境たち。約5年前に組んだ自作PCで試す。
ハードウェア環境は、約5年前に組んだ初代Ryzen&GTX1070Ti&8GBメモリ。



当時としてはミドルレンジのCPUとGPUで、この程度のスペックのPCなら持っているという読者も多いのではないだろうか。
Ryzen5 1600xは当時のRyzenの6コア12スレッドCPU最高峰。GTX1070Tiは当時のNvidiaGPUのコストパフォーマンスモデル。GTX1070Tiは昨今の仮想通貨マイニングブームのせいで中古でも4万円台まで高騰しているが、昨年末までは良品の中古が1万円台で購入できたほどの型落ちである。
NoxPlayerのインストール先はNVMeSSDとした。当時はハイエンドのPCIe3.0接続のSSDだが、今は割とBTOなどでは標準になっている。

何故今回型落ちの環境なのかというと、試用に当たってこれ以上の環境を用意できなかったというのが一番ではあるのだが、Ryzen9やRTX3080などの現在では20万円以上掛かるようなある意味『現実的でない』環境で試用するのは、普段使いするAndroidエミュレーターには適していないと考えるから。というか、Ryzen9だのCorei9だのRTX3090だのRX6900XTだのメモリ32GBだのを搭載したパソコンよりもずっと『現実的な』試用が行えるはずだと思っている。特にメモリ8GBに関しては最新のデスクトップパソコンにしてみれば少ない方であり、比較的低負荷なスマホのエミュレーションとはいえエミュレーターを動かすには明らかに少ない。だが、メモリ16GBなんてプログラマーやゲーマー以外は必要としないし、比較的古いパソコンを使っている人は大抵8GBだろう。
勿論、マシンスペックの限界で検証できない項目などあるかもしれないが、『ああ、普通のパソコンならこんな感じかー』という目で見ていただけるとありがたい。


NoxPlayerの最新バージョンと旧バージョンの比較。
それでは、ここからは実際に試用してみる。
なお、Android9&64bitに対応した最新バージョンは9.0.0.0、Android5と7が選べる32bit版の旧バージョンは7.0.1.1で、どちらも5月末に公式サイトからダウンロードした。また、ベンチマークに使用するアプリとバージョンはそれぞれ3DMark(v2.2.4746)、Geekbench5(v5.4.1)、AnTuTu Benchmark(v8.3.4)である。ベンチマーク系はバージョンが変わるとスコア算出方法が変わることがあるので参考までに。特にAnTuTuは伝統的にスコア算出方法がコロコロ変わるので有名。


まず、インストール後に3DMark、Geekbench5、AnTuTu Benchmark、それに加えて実は今回記事の長さの都合上お届けできなかったが、当初する予定だった実ゲームの試用プレイ用にインストールしておいていたタワーディフェンスゲーム『アークナイツ』(v2.0.01)をそれぞれインストールした状態(これらのアプリで約2GBほど占有する)でのファイルサイズを見てみよう。『OLDNox』がバージョン7、『NEWNox』がバージョン9のインストールフォルダである。本当はエミュレーターファイルのみの方が良かったのかもしれないが写真を撮り忘れてしまった。おおよそ2.5GB程度のサイズ差があるのが見て取れる。最新環境にも関わらずサイズ増加が数GBで収まっているのは良くできた方であろう。



どちらがどちらか説明する必要があるのか謎だが、左の画像がバージョン9。エミュレーターの性能設定は初期設定のままにしておいた。その他の項目もバージョン7と9の間で同一であり、唯一違うのはエミュレーションするスマホの機種名のみ。これは性能とは関係しないので問題ないだろう。





両バージョンのホーム画面。壁紙が違うだけで特に違いはない。強いて言うならバージョン9の方が右端に表示される各種ボタンの数が一つ多いので操作性が高いだろうか。


各エミュレーターを起動し、ホーム画面での負荷測ってみた。左側がバージョン9なのだが、なんと旧バージョンよりも負荷が少ない。Android5よりもAndroid9の方が負荷が小さいという事は決して無いので、間違いなくNoxの最適化の賜物である。
因みにこの時点で、メモリ容量が足りずかなりのスワップが発生してしまっている。スワップ先もNVMeに設定してあるので現時点で目に見えるNoxPlayerへの影響は皆無だが、HDD&メモリ8GBの環境の場合恐らくこの時点でバージョン問わずリタイアだと思われる。NMVeやSATAのSSDを使っている方はまだ行けるだろう。

各バージョンの起動時間、終了時間も計ってみた。終了時間とは『ホーム画面から終了を選択し、タスクマネージャーからNoxPlayerのプロセスが消えるまでの時間』とした。


まず起動時間。左側がバージョン9だが、誤差の範囲ではあるが多少バージョン7の方が短い。




次に終了時間、左側がバージョン9。バージョン7はなんと一瞬でタスクマネージャーから消えていった。強制終了ではない、普通に終了させただけである。これには思わず笑ってしまったが、恐らくアプリを起動した状態からならもう少し時間が掛かるのだろう。


両バージョンを3DMarkで比較。
まず最初に試したのは3DMark。グラフィックテストに特化した歴史あるベンチマークソフトのAndroid版で、利用したベンチマークは『Sling Shot』。スマホ用の少し古いベンチなのだが、これをGTX1070Tiでするとどうなるだろうか。




結果から言ってしまえば、スコアが飽和した。両バージョンともフレームレートが60fps出ており、トータルスコアからは分かることは無い。
しかし、画像最終行の『Physics test part3』で違いが出た。これはSling Shotの中で最も高負荷なシーンなのだが、バージョン7の26fpsに対してバージョン9は27.20fps。明らかな差が出た。





また、平均fpsにも差が。ベンチマークのスタート時や区切り時にフレームレートが上下するのは仕方ないとして、ベンチマーク中のフレームレートはバージョン9の方が明らかに安定している。これはつまり実際のゲームプレイでもバージョン9の方がフレームレートが安定する、という事であり、Android9版のファーストリリースであるバージョン9が何年も安定化を進められてきたバージョン7に安定性で勝るという事でもある。NoxPlayerのバージョン9が良くできていると分かる画像だ。




3DMarkのベンチマーク中のタスクマネージャーの様子。左側がバージョン9なのだが、メモリ使用率に関してはアイドル状態のときと一転、バージョン9の方が少しだけメモリ使用量が多くなっている。また、GPUやCPUの使用率に大きな違いは見られなかった。

両バージョンをGeekbench5で比較。
お次はCPUの性能測定に特化したベンチマークであるGeekbenchを試した。




結果は驚きの一言。バージョン9が大幅に高いスコアを獲得した。当然ながら同じCPUを使っている訳なのだが、スマホであれば1世代分位の性能向上がある。64bit版AndroidエミュレーターでここまでまともにCPU性能を引き出せるのはファーストリリースにも関わらず『上出来』である。先の3DMarkの結果と併せてみれば、アップデートしない理由が無いように見える。




Geekbench5のベンチマーク実行中のタスクマネージャーの様子。例によって左側がバージョン9だが、エミュレーターの4コア指定に対してバージョン9は6スレッドほど使っているように思われる。つまり、バージョン9は同じ割り当て設定でもPC側に余力があれば多めにリソースを使ってくれる訳だ。これを良いと取るか悪いと取るかは人それぞれだが、割と適当なリソース配分でもパフォーマンスが低下しない可能性がある。これも、3DMarkでのフレームレートの安定に繋がっているのではないだろうか。

両バージョンをAnTuTU\u Benchmarkで比較する。
次は、様々な環境を統合してスコアを算出してくれるAnTuTuベンチマークで比較してみる。



何故か、どちらのエミュレーターでもGPUスコアが算出されなかった。GPUテスト自体はいたって普通に行われるのだが、スコアが算出されない。グラフィックボードのドライバは最新バージョンだったので、私の環境依存(いわゆる『おま環』)の可能性が高い。今回は解決できなかったので、GPUスコア以外を比較していく。
まず、トータルスコアは旧バージョンの方が高かった。UXのスコアで何かあったようだ。
CPUスコアに関してはすべてのスコアでバージョン9が勝利。これはGeekbench5の結果と同じなので、『CPU性能はバージョン9の方が高い』というのはほぼ間違いないだろう。




こちらはメモリーとUXのスコア詳細。メモリーに関してはどちらも一長一短であり、同格と言えるだろう。
UXに関しては、画像処理以外はバージョン9の方が勝利。画像処理に関しては恐らくPCの(スマホと比べれば)圧倒的な処理能力のせいで出たスコアなのだろうが、バージョン7は特に高い。流石に2倍もの性能差が出る理由は全く思いつかないが、最適化の賜物だろうか。
何にせよここで忘れてはいけないのは、バージョン9はAndroid9&64bit対応版のファーストリリースであるということである。技術的な難易度の高いエミュレーターにも関わらず何年も効率化&安定化作業が続けられてきたバージョン7といたって普通に戦えているのは間違いない。

NoxPlayerバージョン9はアップデート待ったなしの高い完成度を持つ。
世界初のAndroid9&64bit対応AndroidエミュレーターであるNoxPlayerバージョン9だったが、正直当初は期待していなかった。というのも、少し前に触った他社の64bit版Androidエミュレーター(ベータ版)を触って、その出来の低さに驚いたばかりだったからだ。バージョン9がここまで安定し、かつ実用的であるというのはいい意味で期待外れだった。
今回ベンチマークのみでの試用をさせていただいたが、その後実アプリで触っても評価は変わらなかった。当初プレイレポをお届けする予定だったタワーディフェンスゲーム『アークナイツ』は快適そのもの、バージョン7では非対応だった人気ゲーム『原神』も問題なく動作していた。
また、バージョン9での動作の高速化は至る所で体感できた。
バージョン7で起動可能だったゲームも、多少例外はあるものの体感できるほどに起動時間が短縮されており、幾つものゲームを行き来するシチュエーションや、元から起動に時間の掛かるゲームの起動などでは大きな差になりそうである。
また、NoxPlayerにはFPSを表示する機能があるのだが、バージョン7よりもバージョン9の方がより安定して高いフレームレートを出しているように感じた。3Dのアクションゲームなどをする場合はより酔いづらく、快適にプレイできるようになっている。
バージョン9.0.0.0はAndroid9&64bit対応版のファーストリリースではあるものの、その完成度は予想以上のもの。今バージョン7台のNoxPlayerを使っている人も、他のエミュレーターを使っているという人も一度NoxPlayerのバージョン9を使ってみていただきたい。PCでのスマホゲームのプレイが一段と快適になること間違いなしである。

 

NoxPlayer公式サイト: jp.bignox.com