今から3年前くらい前のことです。
後継者仲間と飲んでいる席で、兄弟の話になった時、彼はしれっとした顔で言ったんです。
その言葉が、ボクの心の中で、ずっと引っかかっていました。
「オレは兄貴を殺したんだよ」
先生 その782
もちろん、彼が人を殺すような人ではありませんが、それにしても、この言葉には何も言えませんでした。
結局ボクは「何で?」という率直な質問が出来ずに、曖昧に流してしまったのです。
当時のボクは、まだ自分の本音を出せず、今以上に「いい人」ぶっていました。
そんな彼が、国際後継者フォーラムの定例勉強会で、講演をしてくれました。
お父さんの会社の後継者として一緒に学んでいて、昨年新会社の社長となったクマちゃん。
久々に会った彼は、相変わらず精悍な顔立ちで、優しく迎え入れてくれました。
クマちゃんは、明るくて人懐っこくて、二条先生や先輩たちに対しても素直な人です。
最初に逢ったころから、先輩たちに可愛がられていて、「ヒトの懐に飛び込むのが上手な人だなぁ(笑)」というのが、第一印象でした。
しかしながら、彼はボクの想像以上に苦労をしていたのです。
冒頭の話にあったお兄さんとの関係もそうでした。
お父さんと考えが合わずに孤立し、うつ病になってしまっていたお兄さん。
クマちゃんもオヤジさんも、うつ病を軽く見ていて、単なる「甘え」だと勘違いしてしまったそうです。
約10年前、クマちゃんがお兄さんに、ちょっときつめのお話をした後、お兄さんは自殺をしました。
それが引き金かどうかはわかりませんが、クマちゃんの中で、「自分が兄貴を殺してしまったのかも・・・」という、一種のトラウマになっていて、お兄さんに対する懺悔の気持ちが強く残ってたんです。
また、ここ2,3年の間に、メインバンクとのトラブルがあって、経営する上でも相当な苦労を抱えていました。
それでも彼は腐ることなく、昨年社長になり、自分らしい会社に変えていこうと躍進しています。
一連の話を聴いて、ボクは自分の役割を果たせていなかったことを、悔やみました。
3年前といえば、クマちゃんが一番悩み苦しんでいたころなのです。
「あの時クマちゃんは、オレを信頼してくれて、本音の相談をしたかったんじゃないか?」
話を聴いたときには、気づかなかったけど、しばらく時間が経ってからそんなことをふと思い出だしたのです。
仲間のお役に立てたかもしれないチャンスを、ボクは逃していました。
でも、今回またチャンスをいただき、こんどはちゃんと掴めています。
クマちゃんとの再会から、つくづく森信三先生の言葉をかみしめています。
人生、出会うべき人には必ず出会う。しかも、一瞬遅からず、早からず。
これから、深い繋がりがどう発展していくのか、楽しみです!!