先生 その328
4年前にPTA副会長の役を受けたとき、当時の会長さんはノートPC片手に全国、あるいは海外を飛び回るシゴトをしていたので、基本的な連絡や相談はすべてメールで対応されていました。
実際にフルタイムで働くお母さん役員も多いため、みんながそろって会議をするのは至難の業。
「文明の利器をうまく活用してるなぁ」と、新人のボクは感心していました。
連絡係は会長もしくは女性副会長の役目。
一年目にお世話になったのが、女性副会長のカオルちゃんでした。
愛嬌のあるお酒とカラオケが大好きなお姉さんで、みんなからの人気者です。
メールで届くのは「○月×日の本部役員会、資料を添付するので読んでおいてください」といった内容が多かったので、言われるがままに準備をしていました。
しかし、メールを読んで、一週間くらいほったらかしにしていると、カオルちゃんから催促のメールが来ます。
「読んでるのか読んでないのかだけでも、返事くらいしなさい」
以来、早めにメールの返信をするようにクセをつけていきました。
運動会の前などは、メールのやりとりが何度も続いた結果、「Re:」が続きすぎて、最初のタイトルが読めなくなることもありましたが・・・。
メールを送る目的は、実際の会議をスムーズに進めるための事前準備。読んでいないメンバーがいたのでは、時間を有効に使うことができません。
普段は明るくアホなことばかり言っている彼女ですが、責任感は人一倍強かったのです。
また彼女は、難しい要求をするお母さんたちのあしらい方が上手でした。
運営委員会で、ある保護者からの無茶と思える欲求が議題に上がり、会議が白熱したことがありました。
当時のPTA会長は頭脳明晰な理論派タイプだったので、理論武装で対応します。
しかし感情が先行しているお母さんは、理屈では納得できていない様子で、話があっちこっちに行ったり来たり・・・
そんな会議の最中、普段だったらアホなふりをしているカオルちゃんが放った言葉で、会議がピシャッと静まり方向性が定まるのです。
「それは、本当に子どもたちの願いなんですか? 子どもたちが幸せになれることですか?」
この言葉は会議の時だけでなく、それ以降ボクが父親として、PTAの一員としての判断基準になりました。
親はよかれと思っても、それが子どもたちの本質的な成長や幸せに繋がらないこともあります。
せんちゃんの教えじゃないけれど、思いで突っ走る前に、判断を保留することが大事ですね。
カオルちゃんとのご縁もまた、ボクが学校や先生、子どもたちと関わる上で大きなきっかけになったのです。