茹だるような暑さの中

あれ、夏ってこんなだったっけ?

と立ち眩む。


アイスコーヒーを飲みながら

私が幼かった頃の夏に思いを馳せる





抜ける様な青空と入道雲

耳を劈く様な蝉の鳴き声



クーラーどころか

家庭というインフラ自体が壊滅しており

電気もガスも

挙句水道も止まったような家で

プラスチックの下敷きを団扇にして風をおこす


幸い公園の水飲み場から水は出るし

給食があるから飢えることもない

暗くなったら寝ればいい


母は着飾りどこかのおっさんと

飲み食い歩き

モーテルにしけ込む


父は仕事だと言いながら

家には寄り付かず

品の無い飲み屋のおばはんに飼われていた


最悪なのはフラリと帰ってくる父と母が

バッティングすること


お互いを罵り合い責任をなすり付けあう姿は

醜悪そのもの

全くもって美しくない

この人達のどこにも

子どもの存在なんてない


文字に起こせば悲惨だけれど

ありがたいことに

新聞配達をさせてくれた優しい店主さんや

可哀想な子供に何かしら施してくれる

近所の方もいて

命こそ落とさずに済んだのだから

私は幸せだったのだと思う。


私は生きる為

親を慕う気持ちごと一旦捨てた


残滓のような恋しさは

私の中でいつしか禁忌となり

たまに見かける

命を盾に他人を強請る人間を心底軽蔑し

強烈な嫌悪感を抱いてしまう。


シヌシヌ言って自分の思い通りにしようとする

厚かましい人間は

他人様に迷惑を掛けず

お望み通り一刻も早く逝ってくれと思う


美しくないものは

嫌い。












Maria? or Monster?

She is…



週末の夜

すこし前の映画を観る


無彩色な世界観に冒頭から飛び込んでくる

強烈な嫌悪感

この作品は実話ををもとにしており

ニュースでこの事件が報道された際

同情と憤りが込み上げた事

鮮明に覚えている


ある町で高齢の夫婦が殺害され

金品を奪われるという事件が起こった

逮捕されたのは17歳の少年


それは

被害者の実の孫による犯行だった。

彼は何故凶行に及んだのか



少年が実の祖父母を手に掛け金を奪い去る

その背後にちらつく『母親』という存在


怠惰で性に奔放で

私欲の為ならば平気で人を欺き

身体を差し出す事も厭わない

彼にとって

そんな母親の歪な価値観だけが絶対であった


幼児教育も義務教育も受けさせてはもらえず

生活が困窮する度に

親族に金をたかりに行かされ

安宿を転々としていた


世間でいう

常識では到底推し量れない

幾ら思いを馳せても

決して理解する事は出来ない

圧倒的な地獄


その地獄だけが彼の守るべき居場所だった


長澤まさみが演じた秋子のような母親は

残念ながらゴロゴロいる

ちょっと見渡せばそこかしこに、ね。

















Toi et Moi




私の前夫殿、今年に入り病を患ったのだけど


幸いな事に直接命に関わるような病ではなく、生活習慣の見直しと服薬で症状を改善していく、要は生活習慣病。


それでも当人は大変気を落とし、口から出るのは弱気な発言ばかりで、見ているこちらも居た堪れなくなるほど。


飲酒、喫煙、偏食、運動量の低下など様々なストレスにさらされた身体。

加齢と共に次第に細胞は分裂する事も増殖する事もやめていってしまう。

死は生きている者に等しく訪れるけれど、幾らかでも緩慢にする事は出来ると思う。


当たり前のように享受していたものが実はとてつもなく有難かったという事が、若さに翳りが差した今なら身に沁みて感じるんじゃないかしら


私も未だ病を抱えているけれど、日々の暮らしの中、自らを律し行いを糺す事が如何に安定した精神をもたらすかしみじみ感じているよ


私達の結婚生活はとても歪だったけれど、その全てが取り払われた今、あなたには感謝しているし身も心も健やかであって欲しいと心から願っている。