茹だるような暑さの中
あれ、夏ってこんなだったっけ?
と立ち眩む。
アイスコーヒーを飲みながら
私が幼かった頃の夏に思いを馳せる
抜ける様な青空と入道雲
耳を劈く様な蝉の鳴き声
クーラーどころか
家庭というインフラ自体が壊滅しており
電気もガスも
挙句水道も止まったような家で
プラスチックの下敷きを団扇にして風をおこす
幸い公園の水飲み場から水は出るし
給食があるから飢えることもない
暗くなったら寝ればいい
母は着飾りどこかのおっさんと
飲み食い歩き
モーテルにしけ込む
父は仕事だと言いながら
家には寄り付かず
品の無い飲み屋のおばはんに飼われていた
最悪なのはフラリと帰ってくる父と母が
バッティングすること
お互いを罵り合い責任をなすり付けあう姿は
醜悪そのもの
全くもって美しくない
この人達のどこにも
子どもの存在なんてない
文字に起こせば悲惨だけれど
ありがたいことに
新聞配達をさせてくれた優しい店主さんや
可哀想な子供に何かしら施してくれる
近所の方もいて
命こそ落とさずに済んだのだから
私は幸せだったのだと思う。
私は生きる為
親を慕う気持ちごと一旦捨てた
残滓のような恋しさは
私の中でいつしか禁忌となり
たまに見かける
命を盾に他人を強請る人間を心底軽蔑し
強烈な嫌悪感を抱いてしまう。
シヌシヌ言って自分の思い通りにしようとする
厚かましい人間は
他人様に迷惑を掛けず
お望み通り一刻も早く逝ってくれと思う
美しくないものは
嫌い。