最近は明らかに「仕事に追われる」悪循環の只中にあって、ゆっくりブログを更新しつつ、何かものを考える時間がなかなかないなぁ、というのが実情で。まぁ、そんな中、ちょっと注目するトピックをいくつかチョイス。

1. PlayStation Network他個人情報がダダ漏れな件

INTERNET Watch/ソニー、7700万件の個人情報漏えいに対して謝罪

原因はSQLインジェクションの脆弱性をついた侵入という、ネット周りのシステム構築に携わったことのある人間なら初歩の初歩、基本中の基本(だが対応が異常なぐらい面倒くさい)でありながら、FBIとかAnonymousの陰謀説とかが出回って、下手なエンタメより目が離せない展開になっています。

ただ、事実として、iPhoneのJBが一応デジタルミレニアム著作権法(DMCA)上許される段においても、PSPやPS3のファームウェア改造はれっきとした違法行為なわけで、でもLinuxベースのファームウェアがそこまで堅牢性を保つのは至難の業なわけです。その背景から推察するに、ファームウェアを改造したハッカーと正面きって対峙し、標的にされたというのは何となく蓋然性が高そうな話ではあります。

ただそれより何より、本事案を契機に、折角据置機ゲーム界隈に徐々に生まれつつあったDLCに対する好評価が180度変わってしまい、ソニー製品では優秀なタイトルにお目にかかれなくなるという事象の発生をより危惧するわけです。信頼回復までには長い道のりになるでしょうが、頑張っていただきたいものです。

2. ソーシャルゲームもマルチユースが不可欠?

最近、「つみネコ」のB3 UNITEDのMD展開を非常によく目にします。僕は完全なイヌ好きのため、全く反応できないのですが、女のコの黄色い声が絶えないという事案もまた事実であったりします。
先日発売された徳岡氏の「ソーシャルゲーム業界最新事情」や切込隊長のブログエントリにもありますが、当該業界自体完全なレッドオーシャンであり、予算割れ案件は数知れずという話はよく耳にします。

ソーシャルゲーム業界最新事情/徳岡 正肇

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結局、プラットフォームから導線を引くにせよ、バイラルマーケティングを仕掛けるにせよ、その広告宣伝費がオンされた総経費をどう回収するんだよという問題が発生し、ゲームに色々有料化のフックをかけるのは当然として、キャラ立ちしたタイトルでMD展開という、据置機ゲームタイトルが辿ってきた道をなぞるデジャヴな感じがしています。

これはあくまでゲーム単体の短命を是として、当たったらMDで限界利益の獲得期間を極力長くする戦略なので一定の理解は可能ですが、そもそもソーシャルゲーム自体が持つ「人と人との(若干ユルめの)つながり」で長期的にマネタイズする設計が必要なのではないかなぁ、と思う次第です。
まぁ、それが出来たら苦労しないよ、って話ですね、はい。

3. Android Marketは今年8月にAppleのApp Storeを規模で追い越す

意外と早いなぁ、という印象。ただ近時、雨後の筍のようにガラケーをタッチパネル化して「スマートフォン」というネーミングでリパッケージした国産スマホを見るとさもありなんという印象。

Techcrunch/Android Marketは今年8月にAppleのApp Storeを規模で追い越す

ただ、重要なのはTechcrunchの記事でも書かれているとおり、アプリ数が増えれば増えるほど、キラーアプリだけがDLもフレクエンシーも伸ばして、あとはみんなダメですね、って状態は憂慮すべきでしょうか。

そんなこんなでそろそろ眠いのでこの辺で。
若干遅ればせではありますが、今年もインプレスR&Dさんの「インターネット白書2010」に、国内インターネット広告市場の動向を寄稿させていただきました。

以下、原稿を書いている中で思ったこと等雑感を。

インターネット白書2010/インプレスR&D インターネットメディア総合研究所

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■4マス全体マイナス成長下でプラス成長だったのに停滞感とは?

去年もそうだったのですが、市場自体が成長基調であっても、その成長率に対する寄与度が「事業者の増加」なのか「事業者の売上拡大」なのかによって大きく異なるのは当然です。個人的には、2009年も面白いネットメディアやネット広告関連事業者が登場したとは思いますし、その点は厳然たる事実だと思います。
しかし、市場規模自体を形成している要素として勘案するには、どれもまだ「小規模」であると言わざるを得ません。
ネットビジネスにおけるロングテール理論のように、インターネット広告市場もまた、事業者目線ではロングテールであって、「恐竜の首」(Yahoo!やSNS関連メディア、特定のカテゴリメディア)が異常に大きい日本市場の特性故、なかなか全ての事業者が市場成長を享受していると実感できていないのではないか、と考えましたし、素直にそう話してくれた事業者の方もいらっしゃいました。

■スマートフォン界隈が成長ドライバーになる?

これは本文の通り、なるのではないか?と思っています。理由は色々ありますが、そのうち1つは広告手法がよりリッチになることで、出稿業種の裾野が拡大するという想定です。
率直申し上げて、キャリア携帯のサイトのバナーで、高額商品の購買欲が喚起されるか、ブランディングが可能になるか、といえば、それはほぼ無いんだろうと思います。比較的安価なアパレルやアクセサリー、モバイルコンテンツ、消費者金融、人材関連がモバイル出稿の大手クライアントであるのは、「消費者がアクションを起こしやすい」という商材特性と広告自体の特性がマッチしているからなのでしょう。
他方、AdMobのクライアントにはBMWやTAG HeuerやAirline等、所謂ナショナルクライアントが存在しています。画面の解像度やタッチパネルというUIの改善が、より「ブランディングに使えるメディア」という地位を築く蓋然性は高いのではないか、と思うわけです。

■正直、次は何が来る?

実は原稿で使用している数字は、電通「日本の広告費」の数字を使用しています。ここにあまり勘案されていない「超ローカル広告」(おそらく販促に近いんでしょうが)が市場の成長ドライバーではないかな、と思っています。
GPSを使った位置連動にしても、グルーポンにしても、ライフログにしても、詰まるところ「消費者の行動範囲に沿った形でどう商品・サービスを認知させていくか」の方法論になると思っています。また、仮に低単価であっても、地場の中小商店の経営者の方々が広告・販促効果を認知し利用してもらえるメディアや代理店が出来るのなら、「広く薄く確実に」売上を伸ばす、「楽天」の様な発展もあり得るのかなぁ、と思ったりもしています。

雑文ですが、そんなことを考えながら、先日LOFTで購入した扇風機をデスクでまわしつつ、仕事に励む今日この頃です。