6.1 極右過激派と陰謀論者は、どのように1月6日の「盗みを止めろ」連合の準備を計画したのか
「ワイルドになるだろう」というトランプ大統領のツイートは、過激派と陰謀論者たちを「盗みを止めろ(Stop the Steal)」運動の連合へと直ちに動員をかけた。「盗みを止めろ」という言い回しは、そもそも2016年の早い時期にトランプ大統領の長期にわたる政治アドバイザーであったロジャー・ストーンによって作られたものであった。その時、ストーンは、トランプ候補者の共和党員のライバルたちがトランプ候補者の大統領選挙候補者への指名を盗もうとしていたと主張した。トランプが共和党候補者となった後は、ストーンは、ヒラリー・クリントン前国務長官が彼の大統領職を盗むという言い回しに転用した。2016年大統領選挙にトランプ大統領が勝利したとき、「盗みを止めろ」は、実際的意味を失い、2020年選挙日の晩にトランプ大統領が敗北するまで、重要な政治運動になることはなかった。2020年11月5日の早い時期から、ストーンは、仲間に、彼が弁護士軍団を構築し、「明日がないかのように」訴訟を行うことで、「盗みを止めろ」運動を再開させるつもりだと助言した。
ストーンと密接に連携していた右翼工作員のアリ・アレキサンダーが、新しい「盗みを止めろ」キャンペーンを素早く組織した。2020年11月10日、アレキサンダーは、アラバマ州で法人格を付与された組織として「盗みを止めろ」を設立した。
アレキサンダースの「盗みを止めろ」運動の重要な仲間のひとりが、アレックス・ジョーンズであった。1月6日の前に、ジョーンズは、選挙に関する扇動的なレトリックを用いて直接にあるいはオンラインで群衆の怒りをあおりたてた。ジョーンズの「インフォワーズ」はまた、選挙否定論者連合内の他者たちにとっての舞台としてのプラットフォームでもあった。例えば、エンリケ・タリオとスチュワート・ローズの二人は、2020年の選挙日と2021年1月6日との間を含み、「インフォワーズ」に何回も出演した。
「インフォワーズ」へのもう一人の頻繁なゲストは、「盗みを止めろ」運動連合の中心的人物であったロジャー・ストーンだった。ストーンは、2015年12月のジョーンズのショーに当時の大統領候補者であったドナルド・トランプが出演することを勧めた。トランプは、招待を受け入れ、彼の出演した時間中長々とジョーンズを称賛した。トランプのジョーンズとのインタビューの重要性は、過小評価すべきではない。ドナルド・トランプはその時点で首位を走っていた大統領候補者であり、選挙での勝利に進もうとしていた。トランプがジョーンズと共に出演したことは、「インフォワーズ」を常態化し、その陰謀論を信じる視聴者たちをトランプ支持層として歓迎した。トランプは、再び「インフォワーズ」に出演しなかった。しかしながら、ストーンは、定期的にゲスト出演を行い続けた。
2020年の選挙日以降、アレキサンダー・ジョーンズとその他の「盗みを止めろ」運動の主催者は、虚偽に主張されている不正投票への抗議をするために全米で集会を開催した。これらのイベントは、急進主義者たちと過激主義者たちが連合する機会を提供した。「プラウド・ボーイズ」 、「オース・キーパーズ」そして「スリー・パーセンターズ」は、すべて参加者であった。「Qアノン」信奉者も多数参加した。また、白人ナショナリストの「グロイパーズ」と彼らの指導者であるニック・フェンテスも参加した。
2020年中の「盗みを止めろ」のイベントとその他の抗議が、1月6日に向けての弾みを強めることに貢献した。特別委員会は、2020年1月1日から2021年1月20日の間の85件の右翼のイベントに関するデータを収集したが、それらのイベントは、新型コロナウイルスのロックダウウン対策、人種平等(racial justice)を求める運動に対する抗議そしてその後はトランプ大統領の勝利に対する盗みの認識によって鼓舞されたものであった。
極右過激主義者たちは、州議事堂あるいは政府庁舎で68のケースにおいて抗議活動を行った。その中で、49件は、選挙後1月6日までの期間中に発生した。年明けから1月6日に至るまでの間、極右参加者が州議事堂に侵入したケースが少なくとも9件あった。ミシガン、アイダホ、アリゾナそしてオレゴンというこれらの少なくとも4件の州議事堂侵入には、その後の連邦議事堂襲撃に参加したことが確認された個人が関わっていた。
例えば、2020年11月18日と21日の間、アトランタで開催された抗議集会を検討してみよう。「プラウド・ボーイズ」、「オース・キーパーズ」そして「グロイパーズ」の指導者たちと一般のメンバーたちは、武装した抗議運動を含む、ノンストップ行事のために州議事堂と州知事庁舎の外側に集まった。エンリケ・タリオとスチュワート・ローズは、それぞれ「プラウド・ボーイズ」と「オース・キーパーズ」の混成部隊をじきじき率いた。
ジョーンズは、アトランタでの行事を11月16日に「インフォワーズ」で最初に発表した。彼の発表において、ジョーンズは、ロジャー・ストーンが参加するともったいぶり、視聴者に対して、選挙結果が認証されることを防ぐために「知事公舎を取り囲む」ように呼びかけた。フェンテスは、毎日昼の12時に議事堂で演説をすると宣伝を行った。アトランタの各地での激しい演説で、フェンテスは、選挙に関する嘘と威嚇と暴力について見て見ぬふりとうなずきを行うためのヒントを拡散させた。
11月18日に州議事堂の外側でジョーンズとフェンテスと並んで立ったアレキサンダーは、群衆に対して彼らと共に「議事堂を襲撃すること」を熱心に勧めた。3人の男たちは、群衆を州議事堂ビルの中に導いた。11月20日、ロジャー・ストーンは、ジョージア州議事堂の外で演説を行った。
アレキサンダーによって支えられた電話を通じて、ストーンは、選挙に関する嘘を主張し、「勝利か、そうでなければ、死を!」という挑発的なスローガンで集会を締めくくった。
その同じ日、フェンテスは、「よく考えてみよう。我々は州議事堂の前にいる。我々はたぶん、アプローチを間違えているかもしれない」と群衆に告げた。 数日前、州知事公館前の夜の集会で、再びジョーンズとフェンテスを隣にしたアレキサンダーは、群衆を煽りたてた。「我々はすべてに火を付けるだろう。」
群集は暴力的になることはなかったものの、ジョージア州アトランタでの「盗みを止めろ」の抗議運動は、重要な点において、1月6日を前もって示したものであった。「盗みを止めろ」の主催者達は、州議会議員たちを脅し、その週が終わるまでに同州でジョー・バイデン前副大統領の勝利を認証することが義務付けられていたジョージア州における選挙結果を覆すために、プラウド・ボーイズ」、「オース・キーパーズ」、「スリー・パーセンターズ」そして「グローパーズ」を含む彼らが集めた過激主義者たちを利用しようとした。彼らは、彼らの追随者たちに「議事堂を襲撃するように」要請した。第8章で論じるように、この過激派の同じ連合が、2021年1月6日にまさにそれを行ったのだ。
それ以外の「盗みを止めろ」の行事も、1月6日の出来事のための下地を作ることに役立った。ワシントンDCにおける2020年11月14日と12月12日の2回の集会は、極めて重要であった。アレキサンダーの「盗みを止めろ」は、これらのイベントに出席した唯一の抗議組織ではなかった。2回の集会は、「ミリオンMAGAマーチズ」と称され、他の集会の主催者たちも集められた。これらの抗議集会のひとつは、「ジェリコの行進」の祈りの集会と呼ばれた。それにもかかわらず、アトランタに現れたこれと同じ類の参加者はまた、ワシントンにおいてトランプ支持者を煽りたてた。
例えば、12月12日の「ジェリコ行進」中に、スチュワート・ローズは、トランプ大統領に対して権力に留まるための死に物狂いの賭けの一部として「反乱法(the Insurrection Act )」の発動を呼び掛けた。ローズの構想では、他の連中がトランプ大統領を大統領職から排除しようとしているとき、彼が大統領のために民兵たちを率いることになるはずであった。トランプ大統領が「反乱法」を発動しなかった場合には、彼らは、「かなり死に物狂いとなった、大量の流血を伴う戦争を遂行することを余儀なくされるだろう」と群衆に警告した。アレックス・ジョーンズもまた、「ジェリコ行進」のイベントで扇動的なスピーチを行い、「あと38日で誰がホワイトハウスの主になるのか、私にはわからない。しかしながら、これについては確かだ。ジョー・バイデンはグローバリスト(訳注:地球全体を一つの共同体とみなして、世界の一体化を進めるという思想の持主)であり、ジョー・バイデンは、何らかの形で排除されるだろう!」と宣言した。
群衆が12月12日にワシントンに集まった際、トランプ大統領は連邦最高裁判所に対して選挙不正という彼の嘘の主張について審問を行うよう公然とロビー活動を行った。トランプ大統領は、その日一日中、ツイッターで最高裁判所を激しく非難した。「盗みを止めろ」運動連合は熱心にそれを支援した。
「ジェリコ行進」のイベントが終了した後、ジョーンズ、彼の「インフォワーズ」の共同ホストのオーエン・シュロイヤーそしてアリ・アレキサンダーは最高裁判所に対するデモ行進を主導した。最高裁判所に着いた後、群衆は、「盗みを止めろ」、「1776年」、「アメリカ革命!」そして「戦いはまさに始まった!!」などのスローガンを叫んだ。
トランプ大統領は、彼が個人的に彼らの使命を承認したことを確実にワシントンにいる抗議者に知らせるようにした。11月の集会中に、トランプ大統領は、彼の大統領一行の車列から群衆に手を振った。
その後、12月12日の朝、トランプ大統領は、ツイートした。「素晴らしい!「盗みを止めろ」に関して、数千人の人々が整列している。これについて私は知らなかった。しかし、私は彼らに会うだろう!メーク・アメリカ・グレート・アゲイン(#MAGA)! 」その日の後刻に、トランプ大統領は、彼の大統領専用ヘリ「マリーン・ワン」で抗議隊の上空を飛行した。
トランプ大統領が1週間後に、1月6日にワシントンで「ワイルドな」抗議が行われるだろうとツイートしたとき、「盗みを止めろ」連合は、すぐに動員を始めた。ジョーンズは、「インフォワーズ」のウエブサイトに彼らがトランプ大統領の共和国を守れという要求にこたえるつもりがあるかと問う記事を掲載した。その翌日、12月20日、ジョーンズは、彼の「インフォワーズ」の番組の多くを大統領の声明に費やした。ジョーンズは、1千万人のアメリカ国民が1月6日にワシントンDCに集まるなら、連邦議会は彼らの言うことを聞かなければならないだろうと、彼の視聴者に何度か告げた。「大統領があなたを呼んでいる。彼はあなたの助けを必要としている。我々はあなたの助けが必要だ。我々はそこに1千万人が必要だ。我々は、戒厳令を必要としており、外国人の警察国家がこの国を奪取することを防がなければならない。」というようなことを告げ、このアイデアを彼の話の中で繰り返した。ジョーンズは、付け加えた。「それは文字通り我々の手中にある。文字通り、我々次第だ。」
「インフォワーズ」のその他の指導者も、同様に「ワイルドな」抗議を促した。12月後半、マット・ブラッケンが、連邦議事堂を襲撃することが必要かもしれないと「インフォワーズ」の視聴者に告げた。「我々は、数百万人のアメリカ国民がワシントンに行き、全域を占拠し、必要ならば連邦議事堂を襲撃することによってのみ救われることになるだろう」と、ブラッケンは告げた。「わかっていると思うが、我々は交戦規則を知っている。十分な人数があれば、どのような種類のフェンスや壁も破ることができる。」
極右過激派は、まさにそれを行うことを計画したのだ。
(「6.2 「プラウド・ボーイズ」:「君たちは連邦議事堂を襲撃したいと思っている」に続く」