Dental Materials Science

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歯科材料について四方山話


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口腔内に装着された金属による局所的反応としては、金属の溶出が起こり、金属イオンが蛋白質の-S-や-SH-と結合することによって歯肉や口腔粘膜の炎症を引き起こすことが考えられる。また、研削、研磨によって生成した金属の削片が歯肉組織中に混入して着色を生じる場合もある。
細胞を用いたin vitroの実験において、イオン種によってその濃度は異なるものの金属イオンが高濃度に存在すると細胞の代謝は抑制される。すなわち、局所的には溶出した金属イオンによって組織が影響を受けると考えられる。
それは、金属イオンの種類、濃度および曝露時間によって異なる。まず溶出した金属イオンの種類と量が問題になるし、曝露時間が長くなると低濃度で細胞への影響が認められることになる。すなわち、長期に口腔内に装着された金属修復物から持続的に溶出する場合が考えられる。

さらに、クラウンと歯肉組織との間隙で金属イオンの溶出が起こると、その部分へ高濃度に長期に蓄積されることになる。実際に隣接した歯肉組織中にクラウンやアマルガムの組成元素の存在が確認されたり、局部床義歯を装着した患者の舌やその他の粘膜においてコバルトと ニッケルが 検出されたりしている。

細胞への影響についてもイオンの種類、濃度および曝露時間が関係しており、このような観点に立った口腔内での金属の腐食については、まだ明確ではなく今後の課題として 残されている。

歯科材料と技術・機器の開発
長谷川二郎 編集 シーエムシー出版 2006より引用