小説家・緒方圭 短編小説集

小説家・緒方圭 短編小説集

小説家の緒方圭です。

本を出すには及ばない。しかし、読者の方に読んで頂きたい。
そんな小説をブログに記します。


<事務所より>
・小説の一部は有料です。
・当ブログおよび購入した小説の著作権は全て緒方圭に属します。無断での転売、転載はできません。

Amebaでブログを始めよう!
最初は無料で小説を書き上げていこうと思ったのですが、事務所からの圧力があってなかなかブログの更新ができません。



事務所も私も、小説を売るということが仕事ではあるんですが、私は売りたいのではなく、読んでもらいたいだけなんです。


その結果として、読者の方が楽しめるだけのものが書ければいいと思っているのです。


ただ、現実にはほとんどの小説がビジネスからは切り離せなくなっています。


私としては、もっとあるがままに小説を読んでいただきたいのですが、その狭間で迷っています。


読者の方には申し訳ないですが、できる限りの作品を作りたいと思っております。


ご迷惑おかけします。


緒方
第10節以降は、執筆料(315円)で個別に展開します。続きをお求めの方はメッセージ下さい。
廃水管の前には、男が立っていた。先日、小屋の中で酒を振る舞ってくれた男だ。





この男、殺されたはずだったが。





驚く誉を目の前にして、男は口を開いた。

「ここで何している!」





誉は答えた。「殺人鬼に追い掛けられているんだ。早く逃げないとあんたも殺されるぞ!」







男は、さも誉のその台詞を期待していたかのような表情をしながら話した。

「殺人鬼に追われてびびっているような奴が、死のうとするな。お前は数日前、橋の上で死のうとしていた。俺が声をかけた時だ。そのお前が今ここで殺人鬼なるものに追われて逃げてきた。死ぬのが怖いなら、何故逃げる?」





熱い口調に誉は一瞬ひるみはしたが、自分の頭の中を見透かされているような悔しさから反論した。





「別に死が怖いわけではない。ただ、自分で選ぶ死と、他者に強要される死では意味が違う。俺は今まで人生うまくいかなかった。俺自身、思い通りに動かすことができなかった。最後の瞬間すら自分の意志で決められないなんて、そんなのもっての外だ。」





男の熱い口調はさらに凄みを増した。

「あの日お前は死のうとしていた。死という目的を達するのに、お前は自分の意志でないと嫌という。言わばわがままだ。死んでしまえば無に帰る。きっかけはどっちであろうが、目的は達成される。お前のその選択肢には差異がない。言いたいのはそれだ。いずれ無に帰るのに、必死に生きてやがる。どうせ結果は同じだ。それなのに必死に生きて頑張ろうとしやがる。どんなに頑張ろうと結果は変わらない。それほどに、意味のない世の中にお前は何かを期待しているのか?期待している奴が死のうとするな。お前には可能性がある。お前が希望を持っていることをお前自身が言っている。」



誉は反論する力を失った。そのかわりに一つの疑問が沸いてきた…。
人がやっと通れそうなほどの大きさがある廃水管が、誉を呼んでいるかのように口を開けていた。





誉は確信した。廃水管の先は必ず地上に繋がる道があると。



迷っている時間はない。廃水管に隠れることは、後ろからくるであろう追っ手の目を欺く為にも不可欠な行動に思えた。



近づいてみると、それはまるで生き物の口のように黒く不気味な雰囲気が感じられる。



それどころか、口の中で何やらうごめく何かがありそうだ。誉は多少のとまどいを感じたが、意を決して口の中にその一歩を踏み出した。





すると、全く予期していなかったことが起こり、誉は廃水管の前で仰向けに倒れてしまった。





一体何が起こったのだ。一歩踏み入れた瞬間に、何かに弾き飛ばされるような感覚があったことは感じられたが。





あまりにも突然な出来事の為に、数秒間動くことができなかったが、それよりも驚くべきことが誉の前で起こったのだった…

目の前の男の奥に人影を感じた。

木の後ろからこちらを覗き込み、その手には鎌のような凶器が握られているように見える。





「おい、あいつじゃないか」



誉は叫んだ。



その声とともに、鎌の男は木の陰に隠れた。





目の前の男は誉にターゲットを絞っているようだった。ただの脅しと思っているのか、振り向きもせずまったく聞く耳をもっていなかった。





すると鎌の男はずるずると確かにこちらに近づいている。



誉は脱兎の如く逃げ出した。恐怖を感じてうまく足が回らない。



男をかわして小屋を抜け出し、梯子に向かった。

何とか梯子までたどり着くと、何者かに破壊されて地上に上がれなくなっていた。



すると後ろから男の叫び声が響いた。

振り返ると小屋にいた男が後ろから鎌を持った男に襲われていた。





ますます恐怖を感じた誉は、男たちとは逆方向に走り出した。

無我夢中で走り通した。どれだけ時間が経ったであろう。振り返るとそこには男たちはいなくなっていた。





さて、どうする。

まず地上に上がらないことにはいつ襲われるかわからない。そして何よりこの惨劇を地上の人に伝えなければ、殺人鬼を野放しにすることになりかねない。



だが、梯子らしきものはもう無かった。





辺りはもう薄暗い。夜が暮れてしまったら、地上に上がる術を捜すのにさらに苦労するだろう。




それにしても不思議なことが一つある。




なぜこれほど走ってきたにも関わらず、電車とすれ違うことは一度もなかった。


線路に目をやると、とても電車が走れるような状態とは思えないほど、


雑草が生い茂げっている。ここは廃線なのか?





危機感が増してくる。


早いところこの線路際から抜け出さないと。






ふと線路脇に目をやると、あるものを見つけた。