更新STOPしててすいません。

こんかいはちょっと短いですが、読んでもらえるとありがたいです。



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 その日は閉園になるまで遊びつくし、彼らはもうくたくただった。
ホテルにチェックインし、それぞれシャワーなどを浴び終え寝ようとすると、体は疲れているが
意外とそうでもなく、みなベットに乗ったりしてくだらない話で盛り上がっていた。
 もともと1家族の予約分だったので部屋は1つしかとっていなく、ベットは2つ、ギリギリ寝そべることが出来る
ソファーが一つだった。床はフローリングで寝るには冷えすぎていた。
「あー、どうしようか。5人でしょー、誰が床で寝る?」
「え、一人は床で寝ることに決まってるの?俺ムリ!冷えると腹壊すんだよー。」
「あたしもムリ!固い床じゃ体が痛くなっちゃうもん。ね、チナもそうでしょ?なんせお嬢様なんだから、
いつもふかふかのベット!床でなんて寝られないわよね~、フフ!」
「やめてよフミ、お嬢様なんかじゃないってばー。」
みな口々に床で寝るのを拒否していた。それは、女3、男2というかなり微妙な状況だったからだ。
すると、シュイは黙って聞いていたが急に口を開いた。
「俺も床で寝るのはイヤだけど、クルがいいならならおれクルとベットで寝るよ?
チナとフミでもう一つのベット、シルはソファー。」
それを聞いてシュイとクル以外はみなびっくりしたのか、数秒の「間」が空いた。
「クルさん大丈夫?無理しなくていいんだよ、もし嫌だったらあたしとフミとで3人で寝ればいいんだから!」
チナは少し焦ったような顔をしながらクルにそういった。
 クルは落ち着いた顔をして、
「大丈夫です。私もシュイが良いのなら、彼と寝ます。」
「まー、2人がいいならいいんじゃない?シルはそれでいいのよね?つまりソファーで。」
「ああ、まあソファーならな。でもなー・・ク~ルちゃん、俺と一緒に寝ようか?」
「嫌だシルってば、下心丸見えよ!サイテー!」
クルは少し焦りながらも笑ってすごしていた。
「気をつけなよクルちゃん、いくらあんな顔したシュイでもな、男は狼になるんだぞ~!」
シルは狼男の真似をしながらクルにジリジリ近づいていった。
「そんなのお前だけだこのエロガッパ!」
チナはそう言いながらシルに突進してタックルを喰らわしていた。
 これは珍しいことではなく、2人はいつもそうしてプロレスの技の掛け合いなどをしていた。
まるで子供のライオン同士が激しくじゃれあっているかのように。
その2人をチナは仕方がないなという表情をしながらも、少し戸惑った感じだった。
「明日は朝からまた遊園地行くんでしょ?だったらホラ、早く寝ようよ。」
 チナは冷静を装ってフミたちをとめた。
「それもそうだね、もう寝よう。」
 5人はそれぞれの寝床に入って電気を消した。
「ウフフ、こーゆうのってなんか懐かしいわね。修学旅行みたい!」
 フミは無邪気な子供のように落ち着かなかった。当然、みなもすぐ寝れるはずがなく結局AM3時近くまで
『怖い話大会』が行われていた。

 次の日の早朝、チナは誰よりも早く目が覚めた。というよりも、恐らく一睡もしていなかったのだろう。
チナはフミを起こさぬようにそっと上半身を起こし、横のベットを見つめた。
そこにはシュイとクルが眠っていた。互いに逆の方向を向いて寝ていたが、その背中は相手にゆだねるようだった。
 時計を見ると6時18分をさしていた。チナはまた眠れないまま時を過ごした。

 その日も一日身体がくたびれるほど遊び、同じホテルの同じ部屋にもどってきた。
 睡眠不足・遊びすぎがたたったのか、ほとんど全員が疲労困憊という状態だった。
 チナとシルはソファーでコクコクと頭を支えきれず、どうやら睡魔が襲っているようだった。
その中でもチナは一人ベットに座り視線を落としていた。決して眠いというわけでなく、何かを考えているようだった。
 シュイはホテル内の売店に行って菓子を調達してくるといって部屋を出た。実はシュイは意外と甘党なのだ。
シュイが部屋のドアを閉めると、チナは何かを思い切ったかのように立つと、クルのほうへと向かった。
「あ、あのクルさん・・・ちょっと散歩しない?」
「え・・あ、はい。」
 チナはそう言うと、薄い上着を着て部屋をで、オープンテラスの方へ向かった。クルも後についた。
 テラスには誰もいなく、ただ月光のみが照明となっていた。夏だというのにすこしひんやりしていた。
 チナはテラスの柵にもたれると、遠くまで見える夜景を望んでいた。
クルはどうすればいいのかよく分からず、とりあえずチナの横に着いた。
「ず、ずばり聞いてもいいかなあ・・。」
「はい。」
「クルさんって・・・・シュ、シュイの事・・・・す・・き?」
「・・!?」
「ごめんね急にこんなこと聞いて・・。」
「いえ・・、ちょっとビックリしただけです。えっと、シュイの事・・。」
 クルは今一度記憶をさかのぼり、シュイとの関係がどんなものだったかを思い出した。
そして、ひとつの疑問が思い浮かんだ。
「好き」という言葉はもちろん、意味もわかっているつもりである。
しかし、その「好き」が自分とシュイの関係に当てはまるかといわれると、簡単にうなずくことは出来ないのだ。
「本当にごめんなさいこんなこと聞いて、無理に答えなくていいからね。」
「私、シュイの事好きかもしれません。」
 それを聞いた瞬間のチナの顔は色々な感情が入り混じり複雑な顔をした。
「そ、そっか。そうだよね、シュイカッコイイもんね、それに優しいしね・・・。」
 その言葉はクルというよりもチナ自身に言い聞かせているように聞こえた。
「でも本当に好きかわかりません、自分でもよく・・わからないのです。」
「女の子の気持ちは複雑だもんね。と、とにかく頑張ってね、応援するよ!」
 その時クルはもしやと思った。しかしチナに聞くことが出来ず旅行は終わった。

ヤバイ・・・追いつかなくなってきました;でもまあ頑張って書きますので~('A`)


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 その日、大学の講義を全て終え、クルとシュイは途中寄り道をすると言うので3人とは別に帰る事にした。
 シュイは、バックの中にすっぽりと入っていた小型のノートパソコンを開くと、
なにやら複雑なデータを見ていた。クルにはそれが一体何であるかはまったく想像がつかず、ただシュイと
同じテンポで送れないように歩いていた。
 そして、シュイは急にパソコンを閉じるとまたバックにしまい、近くの本屋で女性向けのファッション雑誌数冊を買い、
近くの公園のベンチに二人は座った。
 「さあクル、君の好きなのはどのタイプかな?」
 シュイは先ほど買った数冊のファッション雑誌をクルの前に並べて見せた。
それもタイプの違う雑誌ばかりで、しかしクルにはどれも大差のないようなものに見えた。
それでもとりあえず選ばなければならないのだから、自分の好みの服装をしたモデルを指差した。
「コレが何か?」
「実はね、君が僕の家に来たときに持ってきた洋服やら何やらが入ったトランスケース、事故のときに大破しちゃってね。
中身のものも全部まとめて捨ててしまったんだ。
だから君の服や化粧品その他諸々買出しに行かないと、明日着る服も無いんでね・・。
それに実はその服、僕のなんだ。」
 クルはこの服がシュイのものであると聞くと、少し恥ずかしいような気持ちになった。
しかも、昨日は事故のせいかシュイの前で普通に全裸でいたことなどを思い出すと、顔が熱くなってくるのを感じた。
 「でも、シュイさんにそんな迷惑をかけられません。憶えてないので、私の家の住所さえ教えていただければ私は帰ります。」
 クルは申し訳なさそうに下を向きながらそう言った。
といっても本心は先ほどの記憶から、恥ずかしすぎてシュイと目が合わせられないのだ。
それに気づかないシュイは、少し神妙な顔をした。
「実は・・。事故当時は事故の事だけでショックを受けていただろうと思って、言わなかったんだ。記憶も喪失している状態で、
僕が言っても聞かないとも思ったしね。君自身が思い出してくれる方が1番いいと思ったんだけど・・仕方ない。」
 クルは、なにやらシュイの声のトーンが変わったことに少し焦りを感じていた。
何か恐ろしい事実が伝えられるのではないか・・そういった考えが一気に脳内をめぐる。
 その予想は的中してしまった。
 「君が僕の家にた理由は、観光でもない、勉強でもない。身寄りがいなくなったからだよ。」
「・・・いなくなった・・・?」
 クルにはまったく覚えのないことで、身寄り、つまり自分の両親や兄弟などがいたと言う事は今まで気にもしていなかったことだった。
しかし考えてみれば、自分に家族がいるということは一般的に普通であって、考えていないなんておかしいことなのかとクルには思えた。
「私・・家族の事も覚えていません・・。居たという事さへ忘れていました。」
 クルは悲しい気持ちになった。もし、自分に家族がいて自分の記憶が戻ったとき、
一瞬でも彼らの事を忘れてしまったかと思うと、悲しくて仕方がないのだ。
「忘れてしまうことなんて、仕方がないことだよ。君のせいじゃない、事故のせいだ。
それより、話を続けるよ、大丈夫かい?」
 クルは静かに下を向きながらも頷いた。
そして、シュイは全ての事実をクルに告げた。クルには両親と、弟がいたこと。両親が旅行に出かけた先、
彼らが乗っていた飛行機が墜落したこと、弟は誤って近所の公園の池に転落し、クルが助けた甲斐もなくこの世を去ってしまったことを。
「本当に大丈夫?顔色が悪いみたいだけど・・。」
「ええ。多分大丈夫です。それよりも、そんなに私の記憶のヒントをもらったにもかかわらず、
家族の事を思い出すことが出来ません。自分自身の事さえ・・・。」
「人の記憶という物は意外と単純なんだ。ちょっとしたことで多くの事を思い出したかと思えば、
99%のヒントを得ても残りの1%を自力で思い出すことが出来ないこともある。」
 クルはまだ納得できないものの、とりあえず時間が解決してくれることを祈った。

 2人はクルが好みの服が売っていそうな店で数十着を買い、デパートなどで生活必需品を買い揃えた。
 結局家に着いたのは夜の11時過ぎて、2人ともヘトヘトだった。
夕飯は済ましてあったので、シャワーを浴びて寝ることにした。
 クルはシャワーを浴び終えると、今日買ってもらった可愛らしいパジャマをうれしそうに着ていた。
白地にパステルカラーのドット柄で、唯一クル自身が自ら選んだ“服”だった。
 シュイの家は1人暮らしには十分すぎる広さだった。全体的に彩度が低く、落ち着いた感じだった。
クルはシュイに自分のベットで寝るよう言った。あの、クルが気絶していたときに寝かされていたあのベットだ。
クルがシュイの寝ることができるスペースを開けていると、シュイはタオルケットをクローゼットから引きずり出し、
自分はリビングのソファーで寝るといって部屋を出た。
 クルは数十秒天井を見つめ、静かに目を閉じると落ちるように眠りに着いた。

 翌日、クルはまたシュイの大学に付き添った。
クルはフミたちの間に少しずつではあるが打ち解けるようになってきた。


 次の週、3日間の連休の1日目。
シュイは目覚ましの音で4時半に目を覚ました。
ソファーでの寝起きは初めは体がなじまず首が痛くなったりすることがあったものの、1週間経てばもう慣れたものだった。
 シュイはクルを起こすと、2人とも身支度を整え家を出た。
 いつもとは違う駅に向かう電車に乗り込んだ。2駅ほど行って降り、10分程度歩いた。
まだ朝日は出ていない。薄暗い道を二人は何も話さず歩いている。
クルは一度起きてしまうと夜になるまで眠たくなることは無かったが、シュイはその逆でいつでも眠そうな顔をしていた。
その時も半分寝ぼけたように何度もあくびを繰り返していた。
 更に5分ほど歩くととある家の前でシュイは止まり、インターホンを押した。
 その家は、広い庭に3階建てのとてつもない大きさの館だった。
その館の重々しい扉が開くと、中から誰かが出てきた。2つのボストンバックを重そうにしょいながら出てきたのはチナだった。
「お早うチナ。」
「お早うシュイ、クル。ちょっと来るのが早いんじゃない?あと20分もあるわよ。」
「そっか、俺いつも遅れるからさ、今日は早く行かないとなーって。」
「シュイは極端なのよ、フフフ。」
チナは重そうな荷物を門の横に置くと、シュイたちの荷物もそこに置くように言った。
「後20分外で待つのは寒いから、家の中で待ってましょうシルたちが来るのを・・。」
「そうだな。じゃあクル、ここに荷物置いといて。」
「ハイ。」
 2人はチナについて家の中に入っていった。
広い客間にはアンティークな暖炉が静かにパチパチ音を立てながら部屋の中を優しく暖めていた。
「今お茶だすわね。」
そういうとチナはリビングの方に消えた。
シュイはその間眠たそうにソファーにもたれかかっていた。そしてクルは静かに部屋を眺めていた。
その部屋にはいろいろな珍しい置物などが置いてあり、クルは興味津々と言う目でそれらを眺めていた。
するとクルは妖精をかたどったガラスの置物に目をとめた。暖炉のオレンジ色の光が一定でない輝きをその妖精に与えていた。
 クルは無心にそっと手を出しそのガラスに触れようとした。
するとシュイは軽くソファーを叩いた。
クルはくるりと振り向き、手を引っ込めた。その行為の意義、つまりその物に触れてはいけないということを理解したのだ。
 カチャカチャと音を立て、上品なティーカップに紅茶を注いだおぼんを持ちながらチナが戻ってきた。
「はい、どーぞ。クルさんは確か紅茶がすきなのよね。お砂糖は自分で入れてね。
それとー、これがシュイのコーヒー。」
「アリガトウ。」
「有難う。」
チナは紅茶を口に注ぎながらあることに気づいた。
「クルさん・・口の横についてる白っぽい物、もしかして歯磨き粉?」
「あ、ホントだ。」
「ウフフ、クルって少しヌケてて可愛いわね。」
チナとシュイが笑うと、クルは恥ずかしい気持ちになった。そして口の横を服の袖でふき取ろうとした。
しかし意外と歯磨き粉が付いているところは口より遠く、なかなかふき取ることが出来なかった。
それを見かねたシュイはクルの顔をこちらに向けさせ、軽くこすってふき取った。
「もー、ドジなんだから。」
「うう、ちゃんと拭いたつもりだったんですが・・。」
クルの少し悔しそうな顔にシュイも微笑んでいた。
それを見ていたチナは、少し神妙な面持ちで静かに見つめていた。そこには複雑な気持ちが入り混じっているようだった。

 20分はあっという間で、外で車が止まる音がした。
3人は家の外に出ると荷物を持って車に乗り込んだ。
「お早う。」
みないっせいに朝の挨拶を交わすと、まだ朝も早いということでほとんどの人が眠っていた。
「チキショー、運転手は辛いよなぁ。」
シルは文句を言いながら車を運転していた。この5人の中で運転免許を持っているのはシルだけだった。
 助手席にはクルが座っていた。他3名はみな眠るということで、後ろで背もたれを倒して寝ていた。
「眠くなったら言って下さい。シュイから眠気覚ましのガムを預かってますから。」
「おう、アリガトな。シュイの野郎もたまには気がきくじゃねーか。」
「そうですか?シュイはいつも優しいと思いますが・・。」
「ハハハ、あいつ女の子には優しいのか!」

それから2時間ほど高速に乗り、ようやく目的の遊園地に到着した。
 シュイたち3人はそれまで1度も起きることがなかった。
そして、シルは3粒クルからガムをもらった。
 祝日だったせいか、開園する前からチケット売り場に長蛇の列だった。
シュイたちは寝起きでまだ脳が回転していないのか、ボケーと立って開園するのを待っていた。
 ようやく売り場のゲートが開くと、みな我先にとチケットを買って入場していた。
その人の波に流されながらもシュイたちは何とか入ることが出来た。
その頃になってようやく目が覚めたのか、フミが徐々にテンションが上がり一人で大騒ぎしていた。
 その遊園地には数々のギネス級絶叫アトラクションがあり、世界的にも有名な場所だった。
「ねーみんな!やっぱここに来たらあれは乗らないと!」
チナはそういいながらとあるアトラクションを指差した。
それはその遊園地の中でも特別な存在だった。つまり、もっとも「絶叫」するものだった。
 それを聞いた瞬間シルはそのアトラクションを見上げながら
「お、俺パス・・・。」
「なーに言ってるのシル!は~ん、もしかして・・シルってばこうゆう乗り物・・ダメなんでしょお~?」
フミはニヤニヤしながらシルをつついた。
「え、シルがこういうの一番喜びそうだったけど・・意外だね~。」
「うんうん、同感。」
 シルは顔を赤めながらも反論したが、結局シルのその日のあだ名は「チキン野郎」もしくは「チキン」となってしまった。
 

少々遅れましたが、小説連載始めさせて頂きます。

自分は文才という物はこれっぽっちもないので、変な日本語や誤字脱字はもう日常茶飯事です。

一応此処にのせているものはチェック済みですが・・。

それと、「章分け」のようなものもしておりません;

ただズラズラと書いているだけですので、覚悟してください。一応のせるごとに大わけのようにはしてありますが、アバウトですので・・;それでは長々と書いてしまいましたが、本編はじまります。


/////////////////////a faulty human.../////////////////////



時代は未来。
すさんだ空気が世界を覆い、科学が世界を操る時代。

人間のかたちをした魂を持たないいきものが“感情”という未知数を未だ得ていない時代。


 まだ朝日が完全に昇っていない早朝、一人のにんげんが目を覚ました。
いや、覚ましたというよりは起動した、といった方がきっと正しいだろう。
そこに居たのはそのにんげんを生み出したシュイと、その起動したにんげんだけで、
シュイはポンとコンピュータのキーを押した。
 すると、起動はしたものの動かなかったにんげんの身体が言うことを聞くようになった。
シュイは少し笑みを浮かべながらそのにんげんに問いた。
「おはよう、気分はどうだい?」
「・・・おはよう、気分は・・・わかりません。」
 平坦で、少し低めの女性の声だった。
「まあ、起きたばかりではまだ分からないか。」
 その女性のかたちをしたにんげんは、上半身を起こすと、見える範囲で自分の姿を見回した。
足、腹、胸、腕・・・。
 しばらくすると、少し寒気が襲ってきた。皮膚がぼつぼつとあわ立っている。いわゆる鳥肌だ。
それに気づいたシュイは、その場を去り別の部屋に行ってしまった。
そして洋服と思われるものを持ってやって来た。
「ごめんごめん、気づかなかったよ。さあ、これを着て。」
 彼女は受け取った服を着ようとベットから降りたが、服の着方がわからず少し悩み、
形などからそれをどう着用するかは理解した。
男の前で裸体をさらしても何も感じていないような対応にシュイは少し苦笑いした。
「こりゃー改良の余地、アリだなあ。」

 とりあえず、シュイはインスタントのコーヒーを、座る女性の目の前に差し出した。
記憶というのか、もともと知っているのかはよく分からないが、女性はコーヒーを息で冷ましながら飲んでいた。
「美味しいかい?」
「えっと・・苦いです。」
「ハハ、コーヒーは口に合わないか。ところで、君の名前は?」
 あまりに突拍子のない質問に、少し間を空けたがその女性は黙ったままで答えようとしなかった。
いや、答えられないのだ。
「私の名前は・・・名前は・・・・。」
 がんばって思い出そうとしている女性を前に、シュイはフゥとため息をつくと、
「そうだなー、確か君の名前は・・・『クル』だ。」
「クル・・・クルですか?私の名前はクルですか?」
 固有名詞には少し遠いようなその単語に、クルは驚いていた。
「クルですか・・。どうして私は自分の名前が分からなかったのでしょう・・。クルですか・・。」
 何度もその名前に疑問を抱きつつも、どうして自分の名前が分からなかったのかが分からなかった。

 それを察したのか、シュイは心配げに言った。
「あの時の事故が原因なのかな・・?」
「事故?誰が事故をしたのですか?」
「やっぱり、このことも憶えてないか。君は昨日僕の家を訪ねようとして、来る途中事故にあったんだよ。
ちょうど僕の家の前でね。外傷はほとんどなかったから大丈夫だろうと思って家に運んだんだ。
疲れてたみたいで家についてスグに寝ちゃったんだけど。」
「私があなたを訪れようと?すいません・・あなたは誰ですか?」
「僕はシュイ、君のいとこだよ。」
「そうでしたか、すいません。全然・・何も憶えていません・・・。」
「多分軽く頭を打ったんじゃないかな、一時的な記憶の喪失だと思うよ。
そのうちなにもかも思い出すさ。そうでなければ病院に行けばいい。」
 クルが下を向いて色々と思い出そうとしている間に、シュイは台所に向かい朝食の準備をしていた。
シュイはクルがコーヒーが苦手なのを思い出し、紅茶に多めの砂糖を入れ、食パンにバターとイチゴジャムを
のせたものをクルに差し出した。
シュイは紅茶が苦手なので、いつも飲むインスタントのコーヒーを用意した。
 「いただきます。」
 クルは、先ほどのコーヒーが頭に残っていたのか、少し顔を強張せながら紅茶を口にした。
「紅茶はどう、口に合うかな?」
「はい、とっても美味しいです。」
 シュイは初めて見るクルの笑顔が嬉しかった。

「・・・何が面白いのですか?」
 知らず知らずのうちにシュイも笑顔になっていたらしい。
「いやあ、別になんでもないよ・・。さーて、俺は今日学校なんだ。
どうしようかな、君もついて来るかい?」
「学校・・。私は学校の生徒でもありませんが・・?」
「まあいいじゃないか、遊びに行く気持ちでさ。僕が講義を受けてるときは校内のカフェか
中庭で本でも読んでればいい。とにかく、目立った行動をとらなければ何をしててもいい。」
「はい・・、わかりました。」


 シュイとクルはシュイの通う大学へ向かった。
大学の敷地内はまるで新しい街の様だった。
シュイはいつものように建物の中に入っていくが、初めての場所なのでクルはどうも落ち着きがなかった。
 すると、後ろから誰かが駆け寄ってくる音がした。
「シューイーー!シュイってばー!」
 シュイが後ろを振り向くと、そこにいたのはシュイの友達、フミ、チナ、シルだった。
「もー、シュイって耳遠いんじゃないの?」
 フミはそう言いながらシュイの腕を軽くパンチした。
フミは明るく活発的で性別かかわらずだれからも好かれるようなタイプであった。
「シュイ、お前この頃ボーっとして、本当にジイサンみたいだぞ。」
「そうねぇ、確かにいつも上の空って感じよね。」
 シルはシュイの頭を軽く小突くようにして叩いた。シルはお調子者で、あまり真面目な様には見えないが、
実は意外と努力家で誰よりもアツい男だった。
そして、一番真面目でおとなしいタイプなのがチナだった。
 皆がシュイの事を年寄り呼ばわりするので、シュイも仕方がないような顔をした。
「おー俺ももう歳かねぇ。」
「え・・・、シュイさんはいくつなんですか?」
 シュイも含めそこにいたフミたちは少し唖然としながらクルを見つめた。
この冗談が通じない人間をはじめてみたからだ。
「あら・・シュイ、このこ誰?」
 フミは少しびっくりした顔でシュイにたずねた。シュイも少し焦りながらも自分のいとこであると
言い、クルを紹介した。
「そう、クルさんよろしくね。私フミ、21歳よ。そしてこっちがチナ、でこのウドの大木みたいな男がシル。
みんな同い年で、みんな幼馴染なのよ。」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
一通り挨拶が済むと、始業を知らせるベルが鳴った。
「あ、大変、講義に遅れちゃう!」
 シュイは早口になりながらもチナにクルの事を任せたいといった。
4人のうちチナだけはまだ講義の時間ではなかったからだ。
「う、うん。別にいいけど・・。」
 チナがそういうと、先に行った2人に追いつくかのようにシュイも駆けていった。
「それじゃあクルさん、どうしましょうか?」
「私はシュイさんにカフェか中庭にいるように言われました。」
「そう、じゃあカフェでおちゃしましょう。」

 2人は敷地内にあるカフェに行くことにした。
とりあえず飲み物を頼み、見せの外にある円テーブルに着いた。
「えっとぉ、私は大野木 知名です。チナって呼んでね。さっきも言ったとおり、シュイ達とは
幼馴染で、大学まで同じところに通ってるの。フフ、付き合いもここまで長いと本当の兄弟みたいなのよね・・。
それで、あなたの名前はクルさん・・よね?珍しい名前だからびっくりしたわ。」
「はい、私もびっくりしました。」
「・・?クルさんも?」
「はい。私は私の名前をシュイさんに初めて教わったのです。
あ、でも初めて教わったというのは少し違って、実は・・・・。」
 クルは今自分が記憶喪失であることを告げた。
「本当に!?それは大変な目に・・。」
「いえ、怪我もなかったですし、記憶もそのうち戻ると思います。」
「早く戻るといいですね。」
 それっきり会話が途絶えてしまった。
朝のキャンパス。行きかう人も多く、雑音は多いものの、その沈黙はあきらかに異様な雰囲気だった。
 2人ともあまり自分から身を明かすタイプではないので、どうしても会話が続かないのだ。
すると、チナがあることを思い出した。
「そうだ、私昨日これ貰ったの。」
 そういってバックから取り出したものは何かのチケットであった。
「この遊園地、とっても面白いらしいの!本当は私の姉の家族で行く予定だったのだけど、
急用ができて行けなくなったからって。遊園地内のホテルにも泊まれるの!
ちょうど来週は連休があるから、みんなで行こうかなって思って・・。クルさんもどう?」
「え、えっと・・シュイさんと相談してみないと分かりません。」
「そうよね、急にごめんなさい・・。」
「いえ、こちらこそ・・。」
 また2人の間には気まずい沈黙が漂ってしまった。
 すると天の助けの如く、シュイが現われた。
「やあ、教授が今朝倒れて病院に運ばれたもんで、講義は自習だったよ。
面倒だから抜けてきた。フミとシルは残ってるけどね。」
「そう、じゃあ2人が終わるまで待ってましょうよ。」
 チナは少し安どの表情を浮かべていた。そして、先ほどの遊園地の件をシュイに尋ねてみた。
「どうかしら、クルさんも一緒に。」
「クルが良ければ俺も賛成だよ。」
「でも・・私が行ったらお邪魔じゃないでしょうか。やっぱり4人で行った方が・・。」
「何いってるの、楽しむなら大勢の方が良いに決まってるじゃないか!」
「そうそう、ね?クルさんも一緒に行きましょうよ。」
「え、あ・・じゃあ・・・行かせて頂きます。」
 クルは少し戸惑いながらもうなづいた。

この度このブログで小説を(多分)連載させていただくことになりました、鷲田 竜胆(ワシダ リンドウ)です。

本業は絵描きですが、趣味の一つとして小説もチマチマ書いております。

今回は、まだ完結はしていないものの長引きそうな予感のする「a faulty human」という話を連載して行こうと思います。意味は「不完全な人間」・・です多分。

未来の世界でヒトと機械の恋愛を描いたもののはずです。

文書きとしてはかなりの初心者なので、人様に読んでいただけるほど上等なものは書けませんが、

暇つぶし程度にでも読んでいただければ万々歳です。