雨が降り始めた瞬間、彼はうそをついた。

「俺、雨に当たったら溶けるんだよね」


「じゃあ、急がなきゃね」と笑った。

ピンクのコートのポケットから、彼女はスマホを取り出して俺に向けた。


「溶けるところ、写しとこ」

彼女は下卑た笑いを浮かべて、スマホを構えた。


俺の心配よりバズりかよ。

そもそも女の気を引くために、こんな子供でも信じない嘘をついてる俺が情けない。


情けなくて、雨が滲み始めたスニーカーを見る。

「冗談だよ。溶けない」


拳を握り、顔を上げると――

ピンクのコートとスマホだけが、路上で雨に打たれていた。



※執筆練習用短編