Novels from moumoon's songs

Novels from moumoon's songs

moumoonの曲から、物語を連想。

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 普段と変わらぬ朝の静寂の中、山村真司は中学生のころから続けてきた週末早朝トレーニングを黙々とこなしていた。巷ではランニングブームと聞くが、真司以外にランナーは人っ子ひとりいない。この街はテレビの世界とは切り離されているかのようだ。

 さて、真司がいつもこなすトレーニングの内容はこうだ。

 6時45分に起床し、30分で朝食と着替えを済ませる。5分間のストレッチで身体を充分にほぐすと、30分間のジョギングをこなす。そのあとは、親友であるサッカーボールと公園で戯れる。

 トレーニングに出る度、真司はそれに対する憂鬱を感じない。清々しい気分に入り浸って、「俺って、なんて規則正しい生活を送っているんだ!」と自身を褒め称える。さすがに雨の日は、「めんどくせ」とどこにでもいる男の子の心情を持つが、そんな時はウォークマンで「真司だけの世界」に入ることにする。映画「ロッキー」のテーマ曲が、真司の心の火を灯してくれるからだ。

 ちなみに今朝は快晴だから、その必要はなかった。ただ視界に入る道を、黙々と走り続ける。体内で熱が生産され、汗が頭部と背中から滴る。足の指は道路をしっかり掴み、力強く蹴り押すその様は陸上選手のそれと遜色ない。上半身で気にしていることは、背中を、とくに左右の肩甲骨の間を押されている感覚を持つこと。これは、真司が有名なサッカー指導者が監修したサッカー指導のDVDのCMを見て、一番印象に残ったシーンだった。

 だが、この日の真司は集中を欠いていた。

 もう、こんなことをする必要はないじゃないか。

 いったい、このトレーニングは何に活かされたのか。

 足を止める理由はいくらでも見つかった。

 それでも真司は足を止めることはなかった。単に、家に帰ってシャワーを早く浴びたかったからだった。

 さわやかな口笛の音色から始まるイントロが耳元から流れると、中山希はパッと目覚めて上半身を起し、すぐさま枕元にあるスマートフォンを凝視した。ボタンを押すと、画面ではミッキーマウスが両腕で時刻を表している。分針である、白い手袋をした右手は「6」を真っすぐに指している。あれ、時針を表す左手が見当たらない。あ、右手に少し隠れてた。

「え、約束の時間までまだまだじゃん。あ~、二度寝しちゃいそう」

 腰を支点にして、希の身体は仰向けからうつ伏せに体勢を変え、右頬から顔は枕に沈んだ。すると希は枕の中で目を閉じて、二度寝の態勢に入る。スマートフォンのアラーム設定は確か、八時から一分刻みでアラームが三回連続で鳴るように設定にしている・・・はずだ。

 フィフティフィフティの確率。設定しているか、していないか。それの確認をしようか、しないか。そんなことの決断を渋っている間に、希の身体は布団の温もりに包み込まれて、意識はだんだんと遠のいていく。


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