高校生活にもすぐなじみ、友達も出来はじめた。

成績も悪くはなく、このままいけば上位にいられるだろう。


学校が休みの日には、よく中学の同級生と遊んだりもした。


毎日の生活は忙しくて楽しくて、元彼女のこともだんだんと記憶の片隅から消えていった。



俺は、チャットにいく機会は減ったが、鈴李とは毎日のようにメールを続けていた。


鈴李に、クリスマスに遊びに行こうと誘われた。

彼女がいれば断っていたが、特に用もなかったので、誘いに乗った。



鈴李以外にも、ブログやSkypeで知り合った同年代の友達と仲良くなったりもした。





こうやって、高校生活は充実しながらめまぐるしく過ぎて行った。

- - - - - - -




地球温暖化のせいか、秋になっても太陽は強く指していた。


この頃、学校行事がたくさんあって忙しかった。


遅くに学校から帰ってくるとすぐ眠ってしまい、パソコンを開く頻度も減っていた。

そのせいか、鈴李からのメールも、あまり届かなくなっていた。


春には毎日のように来ていたメールも、秋には1週間に1通来るかどうかになっていた。



ー鈴李も受験生だから、忙しいのだろうー


メールに費やす時間の分、俺も勉強にあてればいい。



俺は、勉強の時間が増えた。

クラスでも学年でも上の方のランクをキープしていた。


だんだんと、鈴李との距離も遠くなっていった。

春休みあたりから、鈴李とほぼ毎日メールをするようになった。


2人であまり行かなくなったチャットに久しぶりにいってみると、相変わらずの常連メンバーに冷やかされたりもした。


それでも俺は特に気にすることもなく、その日あったことや相手のことなど、鈴李とメールを続けていた。


- - - - - -


引きずってる、とでもいうのだろうか。


いまだに1日に何回か「元」彼女のことを思い出してしまう。



ふと思い立って、彼女のブログを見てみた。


すると、もうすでに新しい彼氏ができていたようだ。




しばらくブログを見ていると、我が目を疑った。




「元」彼女に新しい彼氏ができたのは、俺と別れる前だったのだ。




俺の頭の中は、?で埋め尽くされた…



だが、新しい環境に合わせるのでいっぱいだった俺は、しばらくするとそんなことも忘れていた。

春休み


結局俺は、そこそこの公立高校を受験し、合格した。


彼女も、公立の高校に合格したようだった。


- - - - - - -


春休みは、鈴李と連絡を取っていることが多くなった。


コミュニティサイトのアバターとチャットのサービスでも、よく合流して遊んだ。


4月から3年になる鈴李に志望校を聞くと、俺よりレベルが高いところへ行くという。


がんばれよ、と一言勇気付けて、違う話題に戻った。




鈴李と仲が良くなってきたとき、彼女から1通のメールが届いた。

そこにはただ一言



別れよう



と、書いてあった。


俺は、いままで別れるなんて考えたこともない。



最初こそ好きという感情は小さかったものの、付き合っていくうちに愛おしく思えてきた彼女。

俺にくっついてばかりだった彼女が、なんで…。



返信で理由を聞くと、


「高校に受かったし、これからは別々の道を歩もう」


俺はなす術もなく、さよなら、とだけ一言添えて返信をした。




桜が舞う春だった

落ちた。


落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた……



ある程度の覚悟はしていたけれど、改めて不合格という事実を知るのは辛かった。


学校が終わると、結果はどうだった?と聞いて来るクラスメイトそっちのけで帰宅した。


家に帰ってメールをチェックすると2通、彼女と鈴李からだった。


どちらからの内容も、合否を問うものだった。



彼女への返信をするためにキーボ
ードを打つ手が、かすかに震えていた。


ごめん、俺、落ちた…
公立がんばるから。
またお互いがんばろうな。



鈴李にはどっちつかずで曖昧な返事を送った。



彼女は俺を受け入れ、優しい返事をくれた。

鈴李は察したようで、違う話題をふってきた。



公立まで、あと2週間。

この頃、鈴李との連絡手段はミニメールから個人的なメールに変わっていた。


鈴李からはたまに恋愛の話をされるが、俺には無縁な話だ。


ネカノがいるなんて言ったら、興ざめされるに違いない。


だから俺は、嘘をついていた。
好きな人も彼女もいない、と。聞かれるたびにそう答えていた。




一方、彼女も同い年で受験勉強が忙しく、なかなか連絡を取っていなかった。


しかも最近、コミュニティサイトのチャットで、他の人とよくいるのを見かける。



…どうやらそれは、男のようだった。

いよいよ入試前日


彼女との電話やメールも断ち、今日は勉強だけ。


正直、俺は受からないんじゃないかと思う方が大きかった


内申だって足りなかったし、過去問を解いてみると国語が壊滅的。

ひたすら勉強することで自分を落ち着けることしかできなかった。



自分はできる。できる。できる…


いつもより早めに布団に入って、明日に備えた。


- - - - -




入試が終わった。
終わった。終わった…






1週間後の結果を待つのみだ…
俺は、地元で有名な私立高校を受験するために、毎日勉強していた。


パソコン好きを活かすような工業系の高校だ。いつしかそこを目指すようになり、何回かオープンキャンパスに行ったりもした。


自分のために志望したのは確かだが、他人に出身校を言って驚かれたい。そういった単純な理由もあった。


ーとにかく俺は、あの高校に行くんだー


彼女から応援されつつ、俺は勉強をがんばった。



しかし、いつも模試の判定はDだった。

たまに調子が良いとCがついたが、それより上がることもなかった。



入試までの日は刻々と迫って来ていた。
チャットの常連メンバーに、自然と鈴李も加わっていった。


鈴李は、よく土日にくるようだ。
あまり特別に気にかけることはなかったが、鈴李がチャットにいた時は楽しく会話した。


初めて知り合ったときにブログを教えられたため、たまにコメントもしていた。


俺の受験勉強も追い込みにかかろうとしていた冬、鈴李とブログのミニメールを通じて連絡を取るようになった。


どちらかがチャットに来ない日が続いたりすると、心配になってミニメールを送ったりした。




その頃、俺は彼女が出来た。


といってもコミュニティSNSで知り合い、一方的にアタックされて付き合いはじめた。いわゆる「ネカノ」だ。


あまり好きという感情もないまま付き合っていたが、それなりに楽しかった。




こうやってネットに充実感を感じながら、冬は過ぎようとしていた。


騙された。


あいつは、俺が騙されているのを笑いながら見ていたのだ。
あいつを信じていた俺が馬鹿馬鹿しい。


あんなに好きだったのに。
あんなに楽しかったのに。



なぜ俺は、騙されたんだろう。
一体俺は、いつから騙されていたんだろう…


- - - - - -



あいつとは2年前の秋、あるチャットサイトで出会った。


当時中学2年だった俺は、毎日のようにそのサイトでチャットをしていた。


小学6年でパソコンに興味をもち、インターネットで様々なサイトを訪問するのが日課になった。気づけば数少ない趣味のひとつになっていた。


俺は、そのサイトの地域別の部屋でチャットをすることが多かった。

―ハンドルネーム以外は何も教えてくれない男や、受験勉強に追われている高校生―
同じ地域に住んでいるとはいえ、様々な人がいるものだ。

このサイトは10代の学生がたくさんいたから、チャットの常連とも話が合った。年齢の近い人たちと窓越しの会話をするのは楽しかった。



ある日、いつものように常連のメンバーでチャットをしていると、鈴李が入室してきた。
<れい>と読むそうだ。今でいうキラキラネームというのだろう。不思議な読み方だ…などと考えていると、鈴李は俺に話しかけてきた。


どうやら、鈴李は俺より1歳年下で、住んでいる場所も近いようだ。



その日のチャットはいつにも増して盛り上がった。親から注意されてパソコンを閉じ、翌日の学校の準備をして寝た。
気づけば時計は午前0時を回っていた。



これを機会に鈴李は時々このサイトに来るようになった。


これが、俺とあいつの出会いだった。