眼下いちめんをシリコンの花盛り
薄らめく
青闇の底を埋めて 制動する
肋膜のスタビライズ
静やかに息を平〔ひら〕め
乗せる
淡紫色の庭球毬〔テニスボール〕の
ぼやけ点く蛍火をころめかし
迷宮の坂をrolligするもの
隆起する岩丘の裾に光る水
広がる 忘却の海づらの篝火
スライディングする獣の眼
条〔すじ〕を引き
曲がりながら逃げ すりぬけよ
走狗せよ 疾駆/病う赤い風
煽り上げ 傾くバイクの尾灯に
血液が燃えている。
* * *
みずうみは底翳〔そこひ〕をまんまんに湛え
溢れる黒眩光を揺らがせて
浸りくる暗渠にずぶり
鈍めき沈下する夜景
蒼白く充血し
ひりり沸き立つ水の網膜/
さざなみを手繰るサルベージの
重い手ごたえのなかへと
疲労のようにもういちど沈む夕陽
/落星/眼球は鉛をぎっしり詰め沈殿を意志するとき
黒い不知火が水下の都市を燃し消す
煮凝〔にこごり〕のように
水のうわべの無数のつぶれ目から
朱血がにじみ出す
虹霓〔こうげい〕
見出すとき天に向かって白く
みずちのすべらかな肌が鞘走り
輝きいで 橋掛けするといつのまにか
正午の白い虹彩が天頂に 刮 と見開く
そびえたつ真昼の塔に灯り出る聖火
/精液の潤び汚れた光に
痛みの斑のように
なお見えぬ同体のオブジェが
白けたスクリーンの象牙の肌下に鬱血を疼かせて
その埋没/みうしないのしるしを炙りだしている。
* * *
白濁する空がまどかに渦巻き
取り戻そうとするわたしの
見失われた眼の時刻を
あなたは荒々しく把持しようと螺旋する。
死んだ子供をもういちど分娩しようと
醜くよじれる大気の軋み
よぎる歪みのような母の顔をレリーフし、
しりり角膜を裂いて亀裂が走る。
のろまな今をもだえ、
軟体動物のように透明に藻掻きながら、
時間の腹部を劈〔さ〕き、
見えぬ腸〔わた〕を引きずり出そうとして
愚かなあなたの暴力が
あなたの肩の筋肉ケーブルをプツンプツン切ってゆく。
あなたは壊れる、
醜悪な玩具類の狂いにまみれて、
あなたはあなたの足許にガラガラと斃れる。
わたしはあなたのまうえに荼毘を燃える。
燃え上がる、
コバルト炎の蓮華を咲き出で、
熾〔さか〕る。
蘇らない、あなたは、蘇ってはいけない。
それでも、あなたは執拗な姦夫の摩擦熱に猛って、
わたしの閉ざされた瞼を抉じ開けようとする
鄙〔いや〕しい妖気のぶんばかりは
生き残り/いきどおって、
次の今の間に受けられている、
生暖かい溜め息のように。
薄らめく
青闇の底を埋めて 制動する
肋膜のスタビライズ
静やかに息を平〔ひら〕め
乗せる
淡紫色の庭球毬〔テニスボール〕の
ぼやけ点く蛍火をころめかし
迷宮の坂をrolligするもの
隆起する岩丘の裾に光る水
広がる 忘却の海づらの篝火
スライディングする獣の眼
条〔すじ〕を引き
曲がりながら逃げ すりぬけよ
走狗せよ 疾駆/病う赤い風
煽り上げ 傾くバイクの尾灯に
血液が燃えている。
* * *
みずうみは底翳〔そこひ〕をまんまんに湛え
溢れる黒眩光を揺らがせて
浸りくる暗渠にずぶり
鈍めき沈下する夜景
蒼白く充血し
ひりり沸き立つ水の網膜/
さざなみを手繰るサルベージの
重い手ごたえのなかへと
疲労のようにもういちど沈む夕陽
/落星/眼球は鉛をぎっしり詰め沈殿を意志するとき
黒い不知火が水下の都市を燃し消す
煮凝〔にこごり〕のように
水のうわべの無数のつぶれ目から
朱血がにじみ出す
虹霓〔こうげい〕
見出すとき天に向かって白く
みずちのすべらかな肌が鞘走り
輝きいで 橋掛けするといつのまにか
正午の白い虹彩が天頂に 刮 と見開く
そびえたつ真昼の塔に灯り出る聖火
/精液の潤び汚れた光に
痛みの斑のように
なお見えぬ同体のオブジェが
白けたスクリーンの象牙の肌下に鬱血を疼かせて
その埋没/みうしないのしるしを炙りだしている。
* * *
白濁する空がまどかに渦巻き
取り戻そうとするわたしの
見失われた眼の時刻を
あなたは荒々しく把持しようと螺旋する。
死んだ子供をもういちど分娩しようと
醜くよじれる大気の軋み
よぎる歪みのような母の顔をレリーフし、
しりり角膜を裂いて亀裂が走る。
のろまな今をもだえ、
軟体動物のように透明に藻掻きながら、
時間の腹部を劈〔さ〕き、
見えぬ腸〔わた〕を引きずり出そうとして
愚かなあなたの暴力が
あなたの肩の筋肉ケーブルをプツンプツン切ってゆく。
あなたは壊れる、
醜悪な玩具類の狂いにまみれて、
あなたはあなたの足許にガラガラと斃れる。
わたしはあなたのまうえに荼毘を燃える。
燃え上がる、
コバルト炎の蓮華を咲き出で、
熾〔さか〕る。
蘇らない、あなたは、蘇ってはいけない。
それでも、あなたは執拗な姦夫の摩擦熱に猛って、
わたしの閉ざされた瞼を抉じ開けようとする
鄙〔いや〕しい妖気のぶんばかりは
生き残り/いきどおって、
次の今の間に受けられている、
生暖かい溜め息のように。