〈他のようではありえない〉
(ouk endechetai allos echein/me endechetai allos)
必然性(αναγκη)をアリストテレスはそのような言い方で表現した。

論理的な様相として必然性は不可能性と反対でいわば表裏一体をなしている。
あることが不可能であるとは、たんにそれが偽であるだけではなくて
必然的に偽であることを意味している。
その反対(逆)は従って必然的に真であることになる。

必然性はある種の強制力(βιαιον/violentum)のように働いて
これより他にはありえないところのものを選び取らせようとする。

必然性はある種の不可能性(αδυναμια/impossibilité)、
他のようであることの不可能性、
他者からの排除の不可抗力=強制力を通して
〈それなくしてはありえないそれ〉
(hou aneu/sine qua non, conditio sine qua non)を、
つまり必須条件・不可欠条件であるところのものを選び取らせる。

その追いつめ追いこめる窮迫のおそるべき力の圧迫は存在を掻爬する。
その掻爬が徹底すれば全ては無に帰する。
しかし、無の手前に最後のものが与えられるならば、
それによってこの恐るべき過越の暴風から逃れ去ることはできる。

例外であること、全てから引き離されていること。
基体からの全面的な追放であるようなex-ceptionとして
理性(ヌース )の誕生をみることはできないものか。

すなわち、必然性の殺戮する力から
個体の個体化を考えてゆくことはできないものか。