【1】必然性は、思考が〈他に何も〉を必要性に迫られて不可能性の〈ありえない〉から抽き出したときに誕生する。
 思考はこのときはじめて不可能性をわがものとして把握している。
 必要性とは我有化された不可能性であり、思考の最初の財産である。それは不可能性から剥奪された分け前としてある。
 不可能性はこのときはじめて思考の内的根拠として意識される。

【2】〈他に何も〉(without anything else)は、しかしまだ〈without nothing〉ではない。無および否定の観念は、〈他に何も〉における未だ不定の何か(anything)に覆われ、呪縛されたままである。

【3】不定性は否定性に先立つ。

【4】〈他に何も不可能である〉(必然性)の〈他に何も〉は、〈不可能である〉の直接的な主語ではない。
 直接的な主語である不可能性自体は主語となることを禁断されている。