思考主体の定位は、heterogenous なもの、異種混成的で不均質なものである。
 われわれは単にそこに思考主体の根本的な heterogeneity (異性性または異質性、雑種性、異成分)を認めるだけでなく、その内的な自然発生=世代交番(heterogenesis)をも認めねばならない。
 世代交番とは生物学用語で、「一つの生物において生殖法をを異にする世代が交代して現れること」を意味する。
 思考主体は、その内的な世代交代の秘史を己れの内に抱え込みつつ、それ自身を一つの世代として生み出すダイナミズムによって誕生する。
 また、思考主体の heteromorphism (異形態性ないし昆虫的完全変態)のプロセスをもわれわれは認める。
 卵から幼虫、幼虫から蛹、そして蛹から蝶が抜け出てくるように、主体はこの定位の内的運動である世代交番のなかで、その都度ことなる異形の姿へと錬金術的変換を遂げる。思考主体は完全変態的である。最終形態の美しい蝶となる以前の幼虫の姿はそれとは似ても似つかない異様なグロテスクなものである。しかし、われわれは昆虫学者のようにそこに連続性を認める。しかしそれは決して実体の不変性や同一性を認めるのではない。