では子供は何のために生まれて来たというのだ。
 かぎりもなく愚かな侮蔑するべき大人の玩具にされるためなのか。
 美しい幼年時代の幻想に呪縛されて真の人生を剥奪され、
 愛の犠牲となって死ぬためにだけ生まれてきたというのか。

 恩という濡衣を着せられ、
 生まれてすみませんという愚劣極まりない原罪の十字架を背負わされ、
 お偉いお父様お母様の設定した嘲りの暗い道を通り、
 彼らの指し示した輝かしい苦悩のゴルゴダの丘で
 純潔なまま孤独に魂が命が無力に死んでゆくのがサクセスだというのか。

 では子供は何のために死んでゆくというのだ。
 その死が何を贖うというのだ。
 子供の屍骸を美しいと思うのは親だけだ。
 救われるのは親だけであって、
 子供は親の身代わりになって死んでいっただけではないか。
 何故親は子供の身代わりに死んでやらなかったのか。
 親の恩や期待や命令や愛こそが
 その子供が喜びもなく背負わされた重圧なのだ。

 〈社会〉だの〈現実〉だの〈おまえの将来〉だのと
 かがやかしい期待に満ちたひどい嘘をつくな。
 自分が人生を放棄したからといって、
 子供からそれを巻き上げるな。
 大人が空虚で不幸な人非人でしかありえない社会で、
 子供に大人になることを強制するな。

 そういう大人たちは怠惰で、
 邪悪で腐敗した〈社会〉や〈現実〉を変えようと少しも戦いもしない癖に、
 自分たちよりももっと無力な子供たちを
 もっと苛酷な〈社会〉や〈現実〉にけなげに立ち向かわせて喜んでいる。

 自分がろくに適応もできていない(当たり前だ)社会に、
 子供を適応させようとし、
 自分は無知で無教養で文化の片鱗も解することのできない白痴のくせに、
 子供にだけはと偽善的な嘘をついて
 より無知無学無教養になるに決まっている
 似非学問だらけの高学歴を目指させ、
 自分はへつらうだけで少しも尊敬などしていない
 憎悪すべき〈お偉方〉に子供をならせようとして、
 やれ官庁だマスコミだ大企業だと忙しいばかりで堕落した
 ひどい顔のロクデナシだらけのカネの地獄に行くことを強制する。

 こういう親は子供の将来を考えているつもりで、
 実は自分が永遠に呪縛して組伏しておける
 子供という〈忠実な奴隷〉を道具にして、
 自分に屈辱を与えた世界に復讐したいだけなのだ。

 自分が命令することも支配することもできない王国の権威を
 子供を手段にして奪取させ、
 愛の美名のもとに限りもなく軽蔑しているわが子ごと
 その薄汚い土足で踏みにじりたいだけなのだ。冷笑したいだけなのだ。

 子供を偽善的な黒魔術の道具に貶めながら、
 自分自身の美辞麗句に愚かにも目がくらんで
 何を本当はやってしまっているのかが
 分からなくなってしまっているのである。
 
 ほんとうに子供の将来を考えるなら、
 子供の尻を叩いたり、叱ったり、宥めたりすかしたりして
 その子の意志と知性と生命を支配的に侮蔑し、
 自分の人生を破壊した社会や現実や権力者に媚びへつらって
 新たなそしてもっと空しく不幸な奴隷の兵隊を
 差し出すのを直ちにやめるべきである。

 あなたが幸せに生きていない社会に子供が幸せに生きてゆける訳がない。
 そういう陰湿で卑劣で偽善的で侮蔑的で野蛮な
 管理と統制と抑圧と呪縛の体制に対して、
 あなたがなすべきことは体制に加担して
 新たな絶望的犠牲者をあなた自身の手で作り出すことではないし、
 また手を拱いて次世代に期待をかけ
 自分だけはお人よしの善人づらを浮かべて
 楽隠居の忍従を決め込み
 空疎な声援を送るだけで
 子供たちの恨みをかわそうとすることでもない。

 あなた自身が次世代のために、
 子供のために喜んで犠牲になって血を流して戦うことである。
 それはあなた自身のまだ終わっていない人生を救うことでもあるはずだ。

 子供にツケを回すことなく、あなたの代で禍根を断ち切れ。
 革命せよ。さもなければあなたにも子供にも人生は戻ってこない。
 あなた自身を革命せよ。
 それを邪魔するものは何者であろうと殺してしまえ。
 全世界を敵に回してでも革命の英雄になってみせろ。

 あなたを冷笑し侮蔑した揚げ句、あなたの欲深な足元を見透かして、
 血肉を分けたわが子まで冷笑と侮蔑の生贄に捧げよと残忍に命令し、
 その手によって口によって眼差しによって、
 あなたが本当は一番愛さなければならないはずの
 麗しい小さな偶像を辱めよと脅迫し唆した
 邪悪な神とその使徒どもの王国を許すな。

 〈現実〉を破壊せよ。
 〈社会〉を破壊せよ。

 人間を侮蔑するような世界との戦いにおいて、
 一瞬でも世界に支援するような卑怯な真似を唆す
 いかなる自己欺瞞も自己憐憫も己れに許すな。

 親切づらして足を引っ張る偽善的な隣人どもに媚を売るな。
 〈良識〉が邪魔するならそんなものは捨てろ。
 〈理性〉が邪魔するなら暴勇を奮って
 おまえが勝手におぞましい〈狂気〉だと命名して
 おびえている次元の中心にとびこみ、
 偉大な狂人となって蘇ってこい。
 おまえが一度もみたこともない嘘っぱちの神の審判と金輪際けりをつけろ。
 嘘っぱちの〈悟り〉の仮面にとぼけたくだらぬ仏の顔のみにくさを恥じ、
 その安っぽい良心なんか捨てて、叛逆と殺戮のための武器をとれ。

 奇麗事をいう暇があったら、真剣に全宇宙を転覆することを思考せよ。
 一度も戦ったことなどないくせに、戦いを始める前から負けると決めて、
 その敗北妄想を証明するために憂鬱をかき集め、
 利いた風な口を引用して悦に入る
 卑劣な知ったかぶりのシニシズムに逃げるな。
 そんな知は生きることのためには何の役にもたたない。

 生きたければ、全身全霊をメギドの火に変えて、
 破壊的に革命的に生きて行け。
 あなたの存在を革命せよ。
 己れの知性と意志だけの力によって、
 あなたを駄目にしたすべてのものの呪縛を破棄せよ。

 革命なくして自由はなく、
 自由なくして幸福はない。
 すべてはあなた自身の問題なのだ。
 他人に代わりに生きてもらおうと思うな。

 自分の人生を創造せよ。美しい人生を創造せよ。
 いのちを愛し抜け、きらめきとなって駆け抜け、
 大宇宙をあなたの一歩から創造してみせよ。
 神のごとく生きてみせろ。
 誰かに救ってもらおうとせず、解放は自分で孤独に作り出せ。

 一度くらいは自分ひとりで本物の奇蹟をおこしてみろ。
 おまえの右手が神の手であるかどうか、
 宿った力の限界をその手自身で確かめてみろ。
 おまえの左手に魔力があるか、
 その手の眠りをさまし、意志をふるいおこして宇宙に向かってかざし、
 万物が麗しく変容するように、祈りのきらめきのうちに解放せよ。

 おまえの内に蘇る心を生きよ。心だけを生きよ。
 自由と幸福の場処が死のなかにしかないなら
 歓喜のなかに自殺してきらめいてみろ。
 さもなければ犬のようにうすよごれ
 かぎりもなく醜い屍骸となって全宇宙を呪って死ね。
 凶悪な現実にズタズタに引き裂かれ、襤褸布のように押し潰されて、
 みにくくみじめな虫ケラの真実を晒して死ね。
 
 それが真の人生の、現実の厳しさである。
 あなたはそれから逃げ続けているみにくい人間だ。
 しかし、子供達は今、その剥き出しの残忍な世界に、
 あなたなどよりもずっと弱いのに、懸命に立ち向かっているのだ。