水平思考パズルという単語を一目見てもピンとくる人は少ないのではないかと思います。日本で有名なものと言えば「ウミガメのスープ」ですが、これも話の一つとして知っている人が多数でしょう。



 水平思考パズルは他にも、シチュエーションパズル・Yes/Noパズルとも言われています。出題者と解答者(何人でもよい)に分かれて行うゲーム(便宜上、ゲームと呼んでいます)であり、出題の問いを解答者が正解すればクリアになります。一つ簡単な例題を出してみます。


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 Q.警官の目の前で、トラックの運転手が一方通行の道路を逆走していた。しかし、警官は彼を止めようとしなかった。それは何故?
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 これだけでも、勘の良い人ならちょっと考えれば分かると思います。しかし、ここからがこのゲームの面白いところで、解答者は出題者に質問が出来ます。ただし、YesかNoで答えられるものに限ります。例題に質問をするならば、


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 Q.警官は非番だった?
      A.No.勤務中です。
 Q.警官はトラック運転手を見ていた?
      A.Yes.目の前で見ていました。
 Q.警官は盲目だった?
      A.
No.彼の眼は正常です。
 Q.トラックの運転手はスピードを出していたから警官が捕まえられなかった?
      A.No.スピードは関係ありません。警官は止めようとすらしていません。
 Q.逆走が法律違反ではない国だった?
      A.No.  

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 このように質問を重ねることで、答えを導き出すのがこのゲームの進め方です(答えは記事の一番下にでも...)。例題のような簡単な問題なら質問せずに答えが出ることもありますが、問題文だけ読んだら全く意味が分からない問題ももちろん存在します。


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 Q.ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました。
     しかし、彼はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました。
   「すみません。これは本当にウミガメのスープ」ですか?」 
   「はい・・・ ウミガメのスープに間違いございません。」
   男は勘定を済ませ、帰宅した後、自殺をしました。
   何故でしょう?

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 これが、冒頭に書いた「ウミガメのスープ」の問題です。これだけ読んで分かる人はエスパーかサイキッカーであると断言出来ます。答えを知っている人からしたら、まさかこの問いからあの答えになるとは思えないでしょう。まだ、推理に必要な情報は全て出ていないのです。

 その必要な情報を引き出す質問を考え、得た情報から重要な要素を選別し、最終的な答えに到達することが、解答者の役割であり楽しみ方です。それに対し出題者は、問題文から答えまでの一つの物語の把握を完璧にし、質問に対していかに的確でフェアに解答出来るか、これに頭を使うことが出題者の楽しみといえるでしょう。


 出題する問題は自分で考えても良いですし、下の「ポール・スローンのウミガメのスープ」という本に出題するのに適切な問題が沢山あります。出題して、はい、終わり。というわけでは無いので、人とやってみると意外と楽しめるのではないかと思います。

 また、一人でやるならDSのゲームも出ているのでそちらをオススメします。ゲームとはいえ、水平思考パズルの楽しみである、答えを導くためのプロセスを感じられるので、水平思考パズルの楽しさを感じるには十二分に役割を果たしてくれるでしょう。


ポール・スローンのウミガメのスープ/エクスナレッジ
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スローンとマクヘールの謎の物語/レベルファイブ
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少々長くなってきてしまったのでここで一つ区切りたいと思います。次回も水平思考パズル、というより水平思考について書き綴りたいと思っております。次回はもう少しミステリーと繋げたいです...。




(例題の答え:トラックの運転手は徒歩で歩いていたから。
答えを聞くと馬鹿らしく思えてしまいますが、とある固定概念から抜け出せないと解答は困難でしょう。「ウミガメのスープ」の答えは有名な為、割愛します。どうしても知りたい方はネットで検索、本を買う、ゲームを買う、色々あるので是非!(コメントで質問あれば付き合います(笑))

「アクロイド殺人事件」  感 想



あらすじはこちら

 
オススメ度  ★★★★☆

 ポワロ氏はもちろん助手役のジェイムズ医師、その姉キャロライン、それぞれキャラが立っており、彼らの掛け合いは見ていて面白い。また、地方にありがち(と思われる)な閉塞感もいい味を出している。「叙述トリック」を有名にした作品だが、前情報無しで読んだほうが楽しめることは間違いない。



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 クリスティ2作目、翻訳本が苦手なのもあって読了まで時間はかかりましたが、古き良きミステリーを感じられ楽しめました。叙述トリックの元祖というだけあって、構想は至ってシンプルで、叙述トリックだということを知っていると目につく部分が見えてしまったのが、少し残念でした。


アガサ・クリスティ著/中村能三訳「アクロイド殺人事件」


 資産家アクロイド氏が刺殺された書斎から消えた一通の手紙。それは前日に謎の自殺を遂げたファラーズ夫人からのものだった。複雑な人間関係、散りばめられた小さな謎、隠し事をしている関係者達。私立探偵ポワロにより明らかになっていく謎の中で、最後に残った驚くべき真相とは...。


感想はこちら



アクロイド殺人事件 (新潮文庫)/新潮社
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 クリスティはこれで2作目。翻訳本は苦手でも、ミステリーとして完成しているため楽しく読めました。次はオリエント急行殺人事件を読む予定です(但しトリックは知っている)。



 洋書の翻訳本は、人生で数えるほどしか読んだ事がありません。ハリーポッター(途中まで)、ダレンシャン(全て)等の児童書と、「そして誰もいなくなった」位しか覚えておりません。



 その少ない読書経験だけですが、はっきり感じたことがあります。それは、『ミステリー小説は翻訳には向いていない』ということです。


 それは何故か。一般的な文学作品とミステリー(推理)小説とで違う点として、一つの情報の重要性が高いことだと思っております。事件が起きるとその描写・状況の説明が地の文であらわされます。それは推理の材料として欠かせない情報となりえます。さらに、推理の材料は会話文の中にも沢山散りばめられて、さらにその中にフェイクもあるのが、ミステリーの常だと思いますが、これが厄介なのです。


 ところで、和訳といえば一つ有名な逸話があります。夏目漱石は「 I love you. 」を「月が綺麗ですね」と訳した、というものです。日本人の感性に響くような翻訳らしいです。(かなり端折っている為、詳しくはググっていただけると...。)一般的な文学作品でも、翻訳者毎に翻訳の幅があり、翻訳元には無い魅力を引き出すことはよくある事でしょう。

       
 これをミステリーに当てはめてみましょう。前述の通り、ミステリーは重要度の高い会話文・地の文が多く、フェイクも散りばめられています。そこの翻訳に遊びを持たせることは、ミステリーとして致命的な欠陥を生むことに成りえるでしょう。他にも細々とした齟齬を生む可能性があり、翻訳者もかなり頭を抱えていることには想像に難くありません。

      
 そういった制約の中で翻訳された本には、どうしても違和感を感じてしまうのです。自分が不慣れなこともあると思いますが、文章理解に少々時間がかかってしまい、どうも読書のテンポが悪くなってしまいます。また、直訳の文を読んでいる様な気分になり、少々味気なく感じてしまいます。


 以上が『ミステリー小説は翻訳には向いていない』と感じた理由です。今までの翻訳本の読書量からして、少ない根拠から書き上げたので、余り客観的に見れていないかもしれないですが、同じような思いをしている人はいるのではないかと思います。




 といったところで、本日はここまでです。(個人的に外国の方の名前を覚えられないのもキツイです...。)
「仮面山荘殺人事件」  感 想



あらすじはこちら

面 白 さ  ★★★★☆

 娯楽小説よりのミステリーだと思う。強盗の侵入、殺人の発生等、物語がスピーディーに進んでいき、何も考えずただ読み進めても面白い作品。終盤までそれは保たれている為、急に落とされる真相には、驚かされるだろう。


読みやすさ ★★★★★

 パニックモノとしてもミステリーとしても良く出来ている。その2つの要素が、いい塩梅で絡み合っており、だれることなく読み進められるだろう。また、流石東野圭吾というべきか、文体は軽く読みやすい。


衝 撃 度 ★★★★☆

 強盗の侵入、殺人事件、さらにもう一つのある問題を、全て纏めてまるっと解決(?)する方法には脱帽した。少々突飛なモノかもしれないが、そこに至るまでのプロセスが素晴らしいので余り気にならないか。


オススメ度  ★★★★☆

  東野圭吾のネームバリューも相まって人には薦めやすい作品。サクッと読めて、スパっと騙される。かといって、謎・トリックは軽くなく、読了後は少し考えさせられる。主人公の行く末についてだが...。


仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)/講談社
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 読了後の余韻が素晴らしい、良いオチだったと思います。東野圭吾もまた読んでいきたい作者になりました。読みたい本が増えていく...。


 「アクロイド殺し」読書中。