絢子は、夜眠る前に少しづつ、
自分の身の上に起きた事を、
話し始めた。
宏はただ、聴いていてくれた。
眠くなる前のひと時に、
途切れ途切れに語る、絢子の半生が、
子守唄のように、二人を包んだ。
悲惨すぎて、思い出す事が辛かった事も、
絢子の中で、一つの物語に変わっていった。
宏に出会うまでの物語に。
そんな夜を幾つも過ごすうちに、
いつの間にか、絢子は、
汚れているという感覚から
解放されていった。
新しい朝を迎える度に、
新しい自分に出会えた。
宏が約束してくれていたプレゼントに、
絢子は、
真っ新な白いワンピースを選んだ。
着古した服を脱ぎ捨てて、
新しい服に袖を通すように、
瑞々しく変わってゆく絢子を前に、
叔父と姪の作り話は、もう似合わなくて、
肩を寄せあうように、寄り添う、
二人の姿があった。
二人は、
ごく普通の恋人同士になっていった。