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動力覚醒ノウハロイド

エリートサラリーマン藤川涼は、ふとした出会いをきっかけに非常にヤバい改造人間・ノウハロイドとなり、複雑な戦いへと巻き込まれていく。
物語と解説を通して、脳の仕組みと成功法則・現代社会の裏側・科学技術の最前線などを比喩的に描いていきたいと思っています。

もしかしたら俺は、子供の頃から漠然と抱えていた、しかしある意味人生最大の疑問を解決するチャンスを今、目の前にしているのかもしれない…

そんな思いから、いっそこの機会に博士にありったけの疑問をぶつけてみようと思った。

「人間の脳にはもっと莫大な潜在能力があるはずだということは昔から言われてきましたよね。通常の人間の脳ではその3%位しか使われていないとか…」

「うむ、まぁ3%などという数字には実は何の根拠もないのだが…『能力』という尺度で考えるなら、3%などといったレベルではない。そのぐらいは、脳のしくみを知ればすぐわかってくるだろう…」

「…ということは、もっと凄い潜在能力が…?」

誤解を恐れずに言えば、無限と言ってもいいだろう。なぜだと思う?」

「先程研究所内でお話頂いた『脳は神経細胞のネットワークでできている』ということと関係がありそうですね…ネットワークの組み合わせは無限に可能性があるから…といったところでしょうか?」

「うむ、ひとまず正解と言っていいだろう。だが問題は…」

「…問題は?」

「…なぜ人間はその潜在能力を引き出せないのかということなのだが…なぜだと思う?」

「それは…矢沢にもよく言われましたが、セルフイメージとか…」

「それもあるのだが…他にもある。何だと思うかね?」

「…あ、そう言えば『火事場のクソ力』というのがありますよね?矢沢もよく『やらなければいけない理由を作れ』と言いますが…」

「そうだよ。やらなきゃいけない理由のないヤツは成功できないと言ってもいいかもな」

何度言わせるんだといった調子で矢沢が付け加えた。

「その通りだ。まだ全てとは言えないが、基本的な部分はこれでクリアだ。人間が最も潜在能力を発揮するのは、極限状態に追い込まれた時なのだ」

「…ですよね。しかし…」

「…場合によってはパニックに陥ってしまうこともある、という疑問かね?」

「…そ、そうです!」

「人がパニックに陥った時というのは、実は本当の極限状態ではない場合が多い」

「…へぇえ、そうなんですか?」

「例えば、大規模な災害や事故の現場で人々がパニックに陥る状況というのは、助かる見込みがあるかどうかはっきりしない場合がほとんどだ。逆に本当に絶望的な状況に追い込まれると、人は却って冷静になるものなのだ」

「なるほど、そう言われてみれば…癌の宣告を受けた人もそんな感じですよね。本当かどうかわからない時は慌てふためくけれども、逃れ難い現実だと受け入れてしまえば却って冷静になる…」

「そう…ただ、パニックに陥った状態でも『火事場のクソ力』は発揮されることも多いのだが」

「あ…そうかもしれないですね。実際に見たことはありませんが、ヨボヨボのおばあちゃんが箪笥を担ぎ出したりとか…」

「…いずれにせよ、人間の脳が本当に極限状態に追い込まれる時というのは、まさに死ぬ間際なのだ。その瞬間を研究していた時こそ、かつて経験したことのないような多くの発見、そして出会いもあった…」

「なるほど…しかし、それが池上教授との出会いとか、トンデモ科学とか宗教的信仰とか、ノウハロイドの動作原理とか…どうやって結びつくんですか?」

「そうだね、話せば長くなるが…ところでビールは飲まないのかね…?」

「あっ、忘れてた!」

話に夢中になっていて気が抜けかけたビールを、喉にグイとねじ込むように飲んだ。

うっ…!

「ンまァアアアーーーいッ!これが池上スペシャルの威力ですか!!」

味覚が改善されると、いつものビールがここまで美味く感じられるとは。

まるで別世界だ。

大げさではなく、生まれ変わったような感覚とでも言うべきか。

だが、博士の話の続きはそれどころではない、まさしく次元が違っていた…