(前置き)

この記事で取り扱っている「イマージョン学習」:毎日長時間の洋画やYouTube視聴で言語を習得するというやり方

immersion[どっぷりつかる]という意味から言語に身を置く学習法

 

みなさんこんにちは。今回は外国出身力士の言語学習から学ぶイマージョン学習について考察したいと思います。

 

さて、大相撲の話ではありますが1年納めの場所、九州場所ではウクライナ人の安青錦が初優勝を達成し、大関に昇進しました。そこで話題になったことのひとつに、彼の日本語能力の高さがあります。

もともと外国人力士は日本語のうまさに定評があり、それに関する本も出版されたことがあるほどです。安青錦の場合は入門して2年足らずで幕内に昇進し、史上4位のはやさで大関に昇進しました。

安青錦は大相撲に正式に入門する前は関西大学相撲部でキャプテンを務める日本人の友達の家に世話になっており、その期間は関大の練習に混ぜてもらっていたのですが、本人談によると大相撲に入ってから覚えた部分が大きいそうです。

新大関 安青錦 (現状は四股名と部屋の住所は書けると話す)

引用元: 日本相撲協会ホームページ

 

安青錦のような外国人力士が日本語を覚えるとき、ほとんどの場合は相撲部屋に入ってから周囲の人の会話を聞いて覚えるそうです。つまり彼らは基本的にイマージョン法で日本語を学習していると言えるでしょう。彼らは関取に昇進するとインタビュー、メディア露出など日本語で対応する場面が増えますが、本当に上手に喋ることができ、気の利いたジョークを飛ばしたり慣用句を使ったりするのもお手のものです。日常会話においては彼らはスペシャリストで、早口やくだけた表現でもほとんど完全に理解できます。まさに外国語学習者がイマージョン学習に求める成果を得ています。

 

しかし、外国人力士の多くに共通する特徴があります。それは言語の4技能(リーディング、ライティング、リスニング、スピーキング)の間での能力差です。平たく言うと、リスニングとスピーキングは完璧なのにリーディングとライティングはほぼできない人が多いです。特に留学を経ずに入門した力士では自分の四股名しか書けないレベルだという人もおり、トーク能力とのギャップがあります。(当たり前ですが普通に勉強して読み書きができる人もいます)

 

この4技能の能力差が顕著な人物が、ジョージア出身の元小結 臥牙丸(ががまる)です。臥牙丸氏はおしゃべり好きで愛嬌があることで愛された力士です。彼は力士時代は書類のサインに四股名を書いてやり過ごしていたそうですが、最近子供が生まれたことをきっかけに本名でサインできるよう練習したことを明かしています。

 

引用元:YouTube「ガガちゃんねる」

 
 

https://youtu.be/4WvZgvDYAX0?si=_ZEhgmzAvhf8xOIN

 

20年日本にいた上で最近までカタカナの本名も書けなかった臥牙丸ですが日本語のスピーキング・リスニング能力は極めて高く、年末はダウンタウンのガキ使やM-1グランプリを観るのが楽しみだと話しています。

 

引用元:YouTube「ガガちゃんねる」 

 

 

一般の外国語学習者の悩みはふつう「文章なら読めるけど、聞こえないし喋れない」というものです。しかし外国人力士にとっては、喋れるけど書けないし読めないという、全く逆の状態になっています。

 

テレビ番組などのエンタメはある意味で言語学習の最難関ともいえるでしょう。特にお笑いは言語だけでなく文化まで理解していなければ楽しめないからです。英語が分からない日本人が字幕でアメリカのコメディ番組を観ることはできますが、何が面白いのかわからないというシーンはどうしてもあります。

アメリカ人にとってはおかしいことでも日本人には普通だったり、そもそも現実離れしすぎたジョークでピンと来なかったりするからです。コメディとは文化や社会常識を共有した上での身内ノリで、知識や感覚を共有していなければ意味不明になってしまう部分があります。

 

このように高度な内容を理解できるにもかかわらず文字はひらがなでも難しいといったアンバランスな能力になってしまう原因の1つには、まず会話が最低限できないと相撲の指導を受けられないという事情もあるでしょう。しかし当たり前の話ですが、本当の意味で耳だけの学習で勉強すると能力が偏ってしまうということです。

 

 

力士から学ぶ工夫

現在流行のイマージョン学習では海外ドラマを長時間視聴することが主流ですが、本来のイマージョンは映像がすべてではありません。イマージョンとは学習したい言語にどっぷり浸かるという発想なので、学習時間を増やしたり日常生活の言語を置き換えたりすることが重要です。音声・映像学習に加えて意識的に洋書や単語帳を読んだり、ブログや日記を書いたりすることで座学や読み書きも含めて強化することができるでしょう。

生活の場面で困らない自信があればスマホの言語設定を変えることなどもイマージョンの一環です。

力士の強み・弱みからイマージョン学習の工夫できる点を把握し、学習につなげていきましょう!