特別なことは何もなかった。
誰かに触れられたわけでもないし、
期待していたことが叶わなかったわけでもない。
それなのに、
電気を消して横になったあと、
身体のどこかが静かに起きている感じがして
なかなか眠れなかった。
欲しいのは、
行為そのものじゃない気がする。
ただ
「ちゃんと女として存在している」
その感覚を、確かめたかっただけ。
鏡を見る時間が減って、
触れることも減って、
いつの間にか
自分のことを後回しにするのが当たり前になっていた。
でも、
何も起きなかった夜ほど
そういう気持ちは正直になる。
触れられる前に、
自分で自分を雑に扱わないこと。
それだけで、
少し呼吸が深くなる夜もある。
誰にも見せないままでもいい。
誰にも知られなくてもいい。
それでも、
女でいる感覚を
完全に手放してしまうのは、
まだ早い気がしている。