4, 写真のはなしとカメラのはなし


神奈川県立近代美術館で行われているAlec Sothの展覧会に行ってきた。


Alec Sothはいわゆるエディトリアルの分野で活躍する写真家で、日本の美術館での個展は初である。私がこの写真家の写真と出会ったのは、Sleeping By the Mississippiからだ。Sothの初の写真集で、今なお高い評価を受けている。ミシシッピ川に沿ってロードトリップに出かけ、アメリカ写真史の流れを確実に汲みながらも、その独自性を保つ、もしくは、かなり特異、異質なものとして作品を生み出す。そんな作家である。Sothが言うに、彼の写真は詩を書くようなものであると言う。ただのドキュメンタリーでもなく、ある程度編集された表現の中に、ただ夢物語だけではない現実が確かに存在している。


夢物語を写真に写すことは意外と簡単だ。ただ、夢物語と現実とが共に存在する作品を撮ることはかなりの努力がいる。新作である、A Pound of Picturesでは写真集の中に、拾ってきたスナップ写真(もしくは複製)がいくつか小さなプリントのまま挟まっている。まるで夢を見るかのような作品をめくっていくと、いきなり現実に引き戻されたかのような不思議な感覚に陥る写真集である。まるで夜中に夢を見ている真っ只中に、いきなり何かのせいで起こされたような、そんな感覚に似ているかもしれない。しかし、決して暴力的ではなく、むしろそれが心地よい。


初めてプリントを直に見ることができてよかったと思う。しかも葉山海岸という、写真に縁のある場所で。


次は何を撮ろうか。


nothin_to_nothing