ここまで、タイプアヘッド、ビューで長い内容を見やすくするツールチップを扱ってきました。
「使いやすい」=「操作の手間が少ない」
「使いにくい」=「操作の手間がかかる」
操作の手間が少なければ、アプリケーションは使いやすいという考え方です。
しかし、「使いやすさ」にはいろんな面があります。
今回は、使いやすさについて、次の2点を再確認しておきたいと思います。
アプリーショングループとしての使いやすさと、ユーザが求める使いやすさはひとつではないという点です。
1. アプリーショングループとしての使いやすさ
個々のアプリケーションは、個別にユーザに使用評価されるだけでなく、同じグループに入るアプリケーションの一つとしても評価されます。
利用者が何を同じグループと捉えるかは、一概に決められません。部門別のアプリケーション、経理系、総務系など業務別のグループなどにとどまらず、ブラウザで動くアプリケーション、ノーツのアプリケーションもあります。
ユーザがグループのアプリケーションを使う中で、いろんな操作をします。個別アプリケーションを開く、メニュー・初期画面を確認する、メニューでビューを移動する、次のページに移動する、前のページに戻る、ビューから文書を開く、文書を見る、文書を閉じる、文書を新規に作成する、ヘルプを見る、個々の入力項目に入力する、数字を半角または全角で入力する、ユーザ名を選択入力する、入力した内容が間違っていたときの警告メッセージ、文書が正常に保存されたときに返ってくるメッセージなどを経験します。
この経験がアプリケーション利用においてその操作性への期待をうみます。共通性・類似性があることがアプリケーショングループを作り、グループとして捉えることがユーザにも使いやすさを生みます。新規のアプリケーションを追加するときは、それがどのアプリケーショングループのひとつに加えられるべきか、あるいは、新しい別のアプリケーショングループの最初のひとつなのかを考えなければなりません。
ただし、基盤技術・要素技術が変化する中で、より優れた機能性、パフォーマンス、保守性、開発生産性を求めて、標準は変化するものです。よくできた既存のアプリケーショングループもその構成メンバーが徐々にいれかわる中で、必要なときは変化を選択し、アプリケーショングループとして使いやすさを向上していくべきです。
往々にして、システム担当者、開発者がそれぞれ、よりよいと考える操作性、画面構成を開発中のアプリケーションに求めることになりがちですが、実際のユーザの使っているアプリケーション群、そこから生まれる期待への配慮が重要なことを再度、確認しておくべきでと思います。
2. ユーザによる「使いやすさ」の違い
アプリケーションのユーザには、使用頻度が低くアプリケーションの操作・内容に慣れていない人(またはアプリケーショーンを使い始めた人)と、使用頻度が高く操作・内容に習熟している人が必ずいます。両者が求める「使いやすさ」は同じではありません。
前者、使用頻度の低い人達は、業務の必要に迫られて使い慣れないものを使うわけですから、個々のアプリケーションに業務として間違いなく使える操作性・機能を求めます。
・メニュー/アウトラインのラベルはわかりやすく、それを選択した時の動きの説明もほしい
・ビューの列名も省略せず示してほしい、列は重要なものだけでもよい
・フォームが縦長になりスクロールが必要になってもよいから、項目の説明、入力する上での注意事項・記入例がほしい、入力チェックも項目ごとにやってほしい・・・・・・など
後者、使用頻度の高い人達は、使い方をすでに知っている(つもり)ですから、簡潔な項目名、素早く情報の確認、文書作成ができることを求めます。
・メニュー/アウトラインのラベルは区別ができる限り短くして、他の情報表示領域が大きくあってほしい
・ビューの列名は短くてよく、ビューの列数を多くすることでビューレベルで多くの情報を得たい
・フォームはコンパクトにして、視点、マウスの動きを最小にしてほしい、できればキーボードだけで入力したい、冗長な説明はいらない、入力チェックはまとめて一回でよい・・・・・・など
アプリケーションごとに、メインのユーザとなる人達をどちらかに想定して、それをターゲットに開発するという方法が多くとられていることと思います。
例えば、営業担当者が日々使う営業報告などのアプリケーションであれば、習熟した人達がユーザの中心なので、習熟者のニーズに合うようなアプリケーションを作成提供することが多いと思います。
画面には必要な情報・入力項目がコンパクトに配置され、必要最小限の操作でアプリケーションが使えるように配慮されます。最初はユーザ説明会で使い方を学んでもらい、あとはマニュアルで随時確認してもらうというようなことが多いのではないでしょうか。
しかし、これで実際に上手く使われているのか検証してみる必要があるのではないでしょうか。習熟している人はアプリケーションを業務に使いこなしているとは限りません。一度見たマニュアルが読み返されることは少ないでしょう。多数用意されたビューも多くが使われず、情報の参照が偏っていたり、重要な営業情報が気づきにくかったりということも少なくないのではないでしょうか。遅れてマニュアルを渡されアプリケーションを使い始めるユーザは、見よう見まねで変な使い方をしていることがあるかもしれません。
両方のユーザのニ-ズを満たすようにアプリケーションを作成提供することが当然望ましいわけです。マニュアルまで戻らなくても、ボタンひとつで初心者向け注意書きを多く含むフォーム表示にかわったり、マウスをボタンやフィールドの上に置けば説明が再確認できるようなアプリケーションこそ使いやすいでしょう。
タイプアヘッドに戻ると、ユーザ名の選択入力に使用するのであれば、それを標準化するつもりで導入すべきでしょう。使い方は、最初はその入力項目の上に、使い方を常に明記する、利用が広まった後は、例えばフォーム中の「詳細説明を表示する」というようなボタンをクリックしたら、各入力項目の説明がすべて表示されるというような方法があります。
ビューのツールチップも列の多いビューで活用する、それとは別に長いテキストをそのまま複数行で表示するようなビューも初心者向けに用意するというようなことができます。
タイプアヘッドやビューでのツールチップも一部の人だけに歓迎されたり、開発サイドの自己満足で終わったりすることのないようにしなければなりません。