「ああ、やっと見つけてくれましたね」
「どうして?」
「わかりません。でも、なぜだかとても安心できたのです」
「あなたが二人を殺したのですね」
「きっとそうなるのでしょうね。ええ、そうなりますね。けど、」
「けど?」
「そうなのかしら。殺したことになるのでしょうか。いえ、きっとそうなのです。最初に見たのは、あれはおそらく、女性の形をした黒い影でした。ええ、あれは幻かなにかだったのでしょうね。その影がすっとその廊下を横切って、ちょうどそこから落ちたのです。あっという間も無かった。次は彼女でした。彼女はひどく混乱していて、パニックのような状態でした。私は泣きながら暴れる彼女を宥めようとしたのです。彼女は首を振り、彼女の腕を掴んだ私の手を必死で振り払おうとしながら、もう嫌だ、もう嫌だ、と何度も繰り返し泣き叫んでいました。つらかったのでしょうね。見ている私もつらかった。そのうちに揉み合いのようになって、ついに彼女は柵を乗り越えて、落ちてしまった。ええ、私が殺したのです」
「それで、もう一人は」
「彼女も落ちましたわ。泣いていたもう一人と全く同じところから。私が引き留めなかったのがいけなかったのです。きっとあの時引き留めていたら、彼女は思い留まったかもしれないのに。ええ、私が殺したも同然ですわ」
「理由を訊かせてもらえますか?ああ、彼女達が醜いからですか」
「そんなこと考えたこともありませんわ。彼女達はとても美しい女性です」
「しかし三人が亡くなっているんですよ。三人とも女性だ」
「あら、それはおかしいわ。一人は男性でしたでしょう」
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ずっと後ろめたさがあったからかもしれない。
それが髪を引くようについて回るものだから、最初に安堵がやってきたのだろう。
ようやく見つけてくれた、と。
目が合った時にそう感じた。
あの二人が落ちた後にそっとあの場所を離れた時、何食わぬ顔ですれ違った瞬間からこの身に纏った背徳が、雪のように溶けて消えた。
ああ、罪の告白とは、
これほどまでに心を軽くするものか。
「あなたが犯人なのですね」
「ええ、そうです。ありがとう、私を見つけてくださって」