えー、始めに書いておきますが今回は夢オチです。

2023年初夢ならぬ初悪夢です。ド悪夢です。いやあ早いね!幸先いいね!(?)

多分呻き声くらい上げてたんじゃないかな!知らんけど。

えー、想像力豊かな人は読まないことをお勧めしておきます。グロ方向です。

こんな日記読む人がいるのかどうかも知らんけど。

何度も書いてるけど実際の人身事故って見たことないから。。。

 

 

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駅のホームへ向かっていた。

地下にあるらしいそれへ向かって、長い長い階段を降りていく。

随分幅広の階段で、さぞかし利用客が多いんだろうと想像できる。実際、その幅広の階段が埋まるくらい人で溢れていた。けれども、今日はちょっと事情が異なるらしい。

どうやらトラブルで電車が動いていないようだ。

駅構内のアナウンスがそれを伝えている。

 

困ったな。電車はいつ動くのだろう。目的地はたった一駅先なのだ。

階段で足止めされている人々を掻き分けてどうにか進んでいくと、不思議と人混みがぱったりと途絶えた。ホームも電車を待っている人達が列を成しているけれど、これまでの人混みよりかは随分空間に余裕がある。

ホームへ辿り着いた所で、ようやくそれに気が付いた。

避けているのだ、と。

 

 

ああ、これは、人身事故か。

 

 

ホームには電車が停まっている。車内にもかなりの人がいるようだ。

事故の直後なのだろうか。ホームにはあちこちに血や人体の一部と思しきものが散らばっていた。

なにこれ、

なんだこれ、

ぞくり、と悪寒が背筋を走る。

 

一人分じゃないだろ、どう見ても。

列を作っている人達は皆青褪めた顔をして、一言も話さない。

混乱は一旦収束した後なのだろうか。誰一人として泣き叫んだりしていない。

駅員達があちらこちらで動いているのは、きっと肉片を回収しているのだろう。

 

電車を一駅だけ動かします、と列車の最後尾に立っていた駅員がアナウンスした。

一駅。一駅行けば、待ち合わせの場所へ行ける。

ホームに立っていた何人かが列車へ乗り込んでいく。

それに続いて怖々列車に乗ろうとした時、アナウンスした駅員の顔を見ると、血の跡のようなものが首筋から頬にかけてべったりと付いていた。

まるで、下方向からの血飛沫を浴びたかのような。

 

列車に足を踏み入れてまず目に入ったものは、もう間違えようがない、人の頭だ。

うつ伏せの状態で後頭部しか見えないが、赤黒い肉の中に脊椎が通っていたであろう穴だけがぽっかりと開いていて、首の途中から下は何も無い。頭だけが床に転がっている。

それを、まるで満員列車の中で汚物だけは避けるように、乗客は皆距離を置いて立っている。

こちらの頭はほぼ完全の状態だが、その向こうの床に落ちている顔は半分以下だ。

左目とその上くらいしか残っていない。あとは肉片のようなもの。

目を閉じていたのが幸いだった。

 

この列車はこの区間でかなり揺れることを知っていたので、何処かに掴まらないと、と近くの手摺りや吊り革を探してみたけれど、

どれもこれも血や肉片がこびり付いているのだ。

あまつさえ、手が握ったままのものもある。手首だけが吊り革にぶら下がっている、手摺りを小指を除いた4つの指だけが握っている、などなど。

 

なんだ?どうして車内にまでこんなに死体の欠片が飛び散らかっているのだろう??

車内外で集団自殺かなんかでもあったのだろうか???

もう頭の中はこの異様な空間にパニック寸前だ。

とにかく見るな、吐くな、と自身に言い聞かせて、そろそろと座席シートの端を掴んだ。なるべく触れないように、と思ったけれど、シートも血や肉片がこびり付いているし、それが乾いてパリパリになっているのがまた気持ちが悪かった。

仕方がない。電車の揺れでよろけて、うっかりあの頭の方へ転んでしまったりなんてしたら、もう限界を超えそうだ。

 

自分では見えないが真っ青な顔をしていたのだろう、近くの座席に座っている人が気遣わしげな視線を向けてきたので、大丈夫だと軽く手を挙げた。

この人にも血を被った跡がある……。

列車が動き始めてからしばらくして、車体が大きく揺れた。ぐっと強くシートを掴む。

血や肉片ごと握っているのだ、いい気分なんてしない。

車内には人もそれなりに乗っているし、皆が死体を避けて密集しているから、揺れる度に近くの乗客とぶつかるわけで、そうすると服のあちこちに血やら肉片やらが付く。

背中のリュックにも付いているんじゃないだろうか。

 

一つ隣の駅に着いて、やっと解放された、と安堵する。

さっきの座席に座っていた人はまだ乗っていくらしい。降りる際に一言礼を言ってからホームへと降りた。よかった、とりあえず目的地には着いた。

手を洗いたい、何よりもまず先にそれが頭に浮かんだ。

他の一緒に降りてきた人達も当然考えることは同じなようで、駅構内の手洗い場にはあっという間に長い列ができた。幸い、早い内に手を洗うことができたものの、自分の手から排水口に流れていく他人の血を見るなんてのは精神的によろしくない、と実感した。

 

あの異質な空間から逃れたかった。

どうにか気分転換にならないかと、駅構内の商業施設をぶらりと歩く。

ポップな色とりどりの飴がプールのように溢れるチュッパチャプスの店。

容器を模ったネオンが目を惹くシードルのお洒落なバー。

カラフルなパッケージがずらりと並ぶのはキットカット・ショコラトリーだろう。

更に奥の方はブティックのようで、そちらはあまり興味が湧かなかった。

 

ここで買い物でもできれば少しは気が紛れたのかもしれない。

いや、できただろう。自分の心のコントロール法については熟知しているつもりだ。

少なくとも、一時でもあの光景を忘れることができたはずだ。

ただ残念なことに、まだどの店も開いていなかった。

 

とにかくどこか落ち着ける場所へ行きたい、と狭い階段を登って、2階にあるマックの隅っこの客席へ腰を下ろした。

その隣の席には黒人の少年が座っていて、こちらをジロリと横目で見てきた。

何も注文する気も起きずに、ただ座っていた。

 

 

…だめだ、落ち着かない。

どうにか気を落ち着けようとしたが、頭の中に列車の光景ばかりが浮かんでくる。身体がカタカタと震えているのが分かる。けれども止められない。

そのうち、待ち合わせていた仲間の一人がやってきて、自分の異常に気が付いたらしくどうした、と声を掛けてきた。今日は皆でちょっとした山登りへ行く予定だった。

 

ごめん、今日は行けそうにない。

山登りが無理なら、近場でちょっと遊ぶのでもいいよ。

うん、…でも、それもできそうに…ない。

そうか、それなら仕方ないな。一体どうしたっていうんだ?

 

その時、自分の着ている服の袖に、赤いものが付いているのが見えた。

血だと思ったが、なんだか微妙に違う。ケチャップのような感じだ。ただの血じゃない、それが判った時に、ぞっとした。ひっ、と引き攣った情けない声が自分の口から漏れた。

擦り下ろされてほぼ液状化した肉と血が混じったもの。

 

あ、パニックを起こすな、これ。

爆発寸前の頭のどこかで、冷静な自分がそう認識した。限界を超えた。

ざわざわと身体中の神経が騒ぎ出そうとしている。狂った電気信号が脳内にばら撒かれる、制御を失ってしまう。そう思ったその時に、

隣から自分の腕を掴まれた。

 

 

 

そちらを振り向く。

少年がいた筈の席には、幼い子供を腕に抱いたふくよかな女性が座っていて、

その子供が、小さな手で自分の腕を掴んでいた。

 

その子があまりに無邪気な笑顔を向けてきたものだから、

導火線の火はきれいさっぱり消えてしまったのだ。